日本裁判官ネットワークブログ
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 今週は,裁判所も本格的に始動しましたが,司法関連では,新年早々大きなニュースがありました。
 まず第1は,参議院で,全会一致で薬害肝炎被害者救済法案が可決成立したことです。この関連は,昨年の10大ニュースの第2に挙げましたが,司法の場で争われてきた事案が,ついに法律の成立によって実質解決をみることになりました。その可決成立を宣言したのが,元裁判官の江田五月参議院議長というのも何とも感慨深いですね。救済法については,「前文で原告側が求めていた国の責任と謝罪に触れ、被害者には症状に応じ1200万~4000万円を支給する内容。」(毎日)であり,和解については,「法成立を受け、原告・弁護団と政府は15日、和解基本合意書を締結する。全国10裁判所で係争中のC型肝炎訴訟は、順次和解に向かう運びだ。」(毎日)とのことです。ただ,給付金の申請期限は,「法施行日から5年以内で、対象者の認定は裁判所が行う」(毎日)ことになっているようであり,司法の関与は続くようですが,国と原告側弁護団が、「今後、新たに提訴する人の投与事実の立証について、医師の記憶に基づく投薬証明でも、医師の証言が信用できると判断されれば、証拠として認めることなどで合意」(読売)との報道もされています。
 次に,福岡の3児死亡事故で,福岡地裁が,危険運転罪を適用せず,業務上過失致死傷罪等の成立を認め,その処断刑の最高刑であるである懲役7年6月を言い渡したことです。判決骨子としては,「被告は事故当時、酩酊(めいてい)状態とはいえず、アルコールの影響で正常な運転が困難な状況にあったとは認められない。被害者の車を事故直前まで発見できなかったのは、脇見が原因。危険運転致死傷罪は成立せず業務上過失致死傷と酒気帯び運転の罪に当たる。結果の重大性、悪質性などから業務上過失致死傷罪の併合罪の最高刑に当たる懲役7年6月の実刑で臨むのが相当」(西日本新聞)とのことです。世間の注目が高い事件ですので,今後も控訴審に場所を移して争われるでしょうね。
 さらに,ちょっと地味かもしれませんが,最高裁司法研修所の「裁判員制度の下における大型否認事件の審理の在り方」に関する研究報告書の全容が明らかになったとのニュースです。これは,昨年の10大ニュースの第1に挙げた動きにつながるものです。「取り調べの録音・録画(可視化)を「有力な選択肢」とし、公判中の主張変更などがなければ罪状否認の殺人事件なども審理回数は現行の3分の1以下に短縮できるとの見解を示している。」「公判前整理手続きで争点と証拠が的確に整理され『口頭主義』(法廷での証言や供述で判断する)にのっとった訴訟活動が必要。供述調書などを読み込まなければ判断できない証拠調べはしない」などと指摘されているようです(東京・共同)。刑事裁判改革についての重要文献になりそうです。早速読んでみたいものです。今後もこうした動きは続くでしょうね。

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コメント
 
 
 
原告は被害者なのでしょうか? (Med_Law)
2008-01-15 01:13:39
この原告たちは、本当に被害者なのでしょうか?

医療行為という自己の利益(治療効果)を得るために必要だった不確実性(リスク)を取った結果というだけの合併症と何が違うのでしょう?
交通事故で加害を受けた歩行者より、自傷した運転者に近い立場のはずです。

原告が感染したというのは、まだC型肝炎など同定できなかった予見できても回避不能だった時代のこと。過失がある訳でも、なんでもない
(担当医師を非難していないことからも明らか)

C型肝炎患者の救済を考えて広く救済する解決でも全くなく、極々一部の人の報償にとどまっている。(血友病などの患者の排斥からみても明らか)

政治決着という名を借りて、強引に有利な和解に持ち込んだだけに見えて仕方がない。

当該血液製剤(保険適応外)を使わなかったために医療側に敗訴を決定した医療訴訟を省みれば、行政責任だけでなく、司法責任も問われるべきではないのだろうか?

かわいそうな原告=被害者という構図は予断ではないのでしょうか?
 
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