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 我が家では、正月の恒例行事として百人一首をする。子供が字を覚え、たどたどしいながらも札を読めるようになって以来、夫婦で対決してきたが、場に札が多くある前半は、「手が早い」私が優位にたつものの、終盤になって残り札が少なくなると、うたを覚えている家内の独壇場になってしまい、たいてい、逆転負けを喫する。競技の前日、にわか勉強で、せめて一枚札の「むすめふさほせ」だけでも、と懸命に暗記するけれども、思うように札が出てくれず、徒労に終わることが多い。 

 今年は、長男の配偶者が新たに参加することになったので、われわれ夫婦、娘夫婦及び息子夫婦の、夫婦対決となった。最初に、娘夫婦と息子夫婦が対戦したが、新嫁が百人一首が初めてのうえ、緊張で手が伸びず、一日の長がある娘夫婦が勝利した。続いて、われわれ夫婦と長女夫婦が雌雄を決することになったが、1回戦で夫婦ともども「読み手」を務めているうちに、少なからず思い出す札があり、それを頭にたたきこんだ成果が出て、われわれ高齢者夫婦が圧勝した。負けず嫌いの長女は、惨敗がかなりこたえたようで、配偶者と修行を積んだ上で再戦したい、と早くも雪辱に意欲的だ。

 先日のテレビで、小倉百人一首競技大会(毎年正月に近江神宮で行われる)で10連覇をはたした名人が登場して、その実力ぶりを披露していた。すべての札を最初の「出だし」で暗記していることはもちろん、読み手の発語を子音の段階で聴き取る能力、さらには、並べられているふだがどこにあるかを正確に把握する「空間(位置)認知力」等、すべてが超能力といってよい、その凄さにたまげてしまった。それと比較するのもおこがましいが、下手は下手なりに楽しめるのが百人一首の魅力である。

 こうした、ご愛敬にすぎない百人一首も、回を重ねていると、おのずと、好きなうたが何首かできてくる。「みちのくの」「しのぶれど」「恋すてふ」で始まる三首が私のベストスリーで、これらの札をとられるのは、勝負に負けるよりもくやしい。これらが自分の方の取り札にはいっている場合、なるべく、相手がとりにくい場所におくし、相手側にある場合には、さりげなく捜してそれだけは逃すまいとするのだが、相手もそのへんのことを百も承知なので、いつも熾烈な争奪戦になる。

 上記三首はいずれも恋のうただが、最近、これらにかわって、どうしても相手に取られたくない札ができた。清少納言の、つぎのうただ。
  夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ

 そのようになったいきさつは、ほかでもない、そのうたを本歌として、つぎのようなざれ歌をつくったからだ(「裁判官は訴える」47頁参照)。大阪家裁で遺産分割事件を担当していたときにつくったうたで、なかなか傑作だと自分では思っているのだが、どうだろうか。
   策こらし 遺産分捕り 図るとも 世に大阪の 家裁は許さじ 
                                (風船)

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