日本裁判官ネットワークブログ
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 また春がやってきて,転勤の時期となりました。元の職場に残る者は,3月には去る人との別れを惜しみ,4月には,新しく来た人との出会いを楽しむことになります。元の職場から去る人は,家族で引っ越しだと大変です。裁判官の場合は,転勤の範囲が日本全国になりますから,早くから引っ越しの準備に追われることにな
ります。転勤など慣れっこになれば,楽しいものだという裁判官もおられますが,任地が遠くになればなるほど,故郷を思う人も多いことでしょう。特に,遠くの任地が長くなればなるほどです。
 「日めくり万葉集」(NHK教育)では,1月30日に,山上憶良の次の歌を紹介しました。 ,

「 天ざかる 鄙に五年(いつとせ) 住まひつつ 都のてぶり 忘らえにけり」

 訳(NHK):(天ざかる)田舎に五年も住み続けて都のふるまいをすっかり忘れてしまいました。
 昔から,転勤は,故郷を偲ばせるものがあります。日本の転勤制度の歴史を遡ると,その大本(おおもと)は,実は中国にあるのだと思いますが,中国でも,故郷を思う詩は多いようです。

 杜甫の「絶句其二」は,次のようなものです。

「江碧鳥逾白 山青花欲然 今春看又過 何日是帰年」

 江は碧にして鳥はいよいよ白く 山青くして花然えんと欲す
 今春看すみす又過ぐ 何れの日か是れ帰年ならん(石川忠久氏の書き下し文)
 これは,有名な漢詩で,中国の錦江(現在の江西省あたりを流れています。)周辺の春を謳いながら,最後に,「いつ故郷に帰れるのだろうか」と詠じるものです。そういえば,中国では,詩人の多くは役人で,全国を転勤し,故郷を思うことが多かったのではないでしょうか。(瑞祥)

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