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 米国で,政府の支援を受けて経営再建中の米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)による高額ボーナス支給がここのところ話題になっています。公的資金,つまり税金の投入を受けながら,幹部73人に1人当たり100万ドル(約9800万円)超が支給されたというのです(産経)。

 米国では世論が沸騰し,大統領も批判し,結局,公的資金で救済された企業幹部のボーナスに対し、税率90パーセントで特別付加税をかける法案が議会で可決されたようです。それもあってか,自主返還に応じる幹部も少なくないと報道されています。

 ボーナスの額や対抗手段など,どれをとっても米国的で,驚くばかりですが,このボーナスの支払額というのは,昨年10月の金融危機以前に決まっていたようで,AIG側は,支払う法的な義務があるという説明をしているようです。日本のボーナスとはちょっと違ったボーナス額の決定方式かもしれませんね。かの国の法律の詳しい内容はわからないのですが,法的な支払義務がある債務を支払わずに債務不履行の状態となれば,当然,強制執行を受けたり,場合によっては,裁判所に認められるかどうかは別にして,破産等の申立てをされることになるのではないでしょうか。そうすると,AIGが新たな信用不安状態となり,他の債権者も同様の手段をとることが多くなり,公的な資金による救済にもかかわらず,結局倒産になると思われます。この負の連鎖を開始させないために,巨額だけど支払ったというのでしょうか。

 実は,実質破綻に陥った企業に公的な資金を投入する場合,経営者の報酬や労働者の労働条件をどうするのかという難しい問題があります。特に,既に支払義務が生じている債権については,公的資金で返済がなされるわけですから,経営責任等があるのにそれでよいのか,国民感情として許されるのかという問題です。実は,日本でも,かつての金融破綻の時期に問題になりました。一例は,他のHP(http://www.nikkeibp.co.jp/archives/101/101909.html)に出ています。もちろん,ご一読いただければ,問題の出方や規模,程度は,日米で同じではありませんし,労使どちらの債権かという重要な違いがあるでしょうが,この問題は,決してかの国だけの問題だけではないように思います。(瑞祥)


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