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司法試験合格者数の問題

2007年11月09日 | Weblog
鳩山法務大臣に続き,政治家の中から司法試験合格者数の問題について,発言がありました。司法制度改革の柱をもう一度確認することが必要かもしれませんね。以下公明新聞からです。

法科大学院の理念崩すな

有能な法律家が司法を強くする

3000人巡る攻防

 司法制度改革によって決定している法曹(弁護士、裁判官、検察官)人口の拡大に関して、さまざまな議論が出ていることを受け、公明党の司法制度改革委員会(魚住裕一郎委員長=参院議員)と法務部会(大口善徳部会長=衆院議員)は先月(10月)31日と今月(11月)2日、新司法試験の実施状況と法科大学院の将来像について、関係省庁や大学教員からヒアリングを行い、意見を交換した。

 政府は2010年までに司法試験の合格者を年間3000人まで拡大することを閣議決定している。しかし、地方の弁護士会や、改革に反対の立場をとる法律家から、11年以降の合格者の減少を求める声が出たり、鳩山法相が、法曹特に弁護士人口の拡大について消極的な見解を表明したこともあって、改めて21世紀の法曹像について法律家の間で議論が活発になっている。司法制度改革を積極的に推進している公明党として、これは見過ごせない問題といえる。

 現在、日本の司法は改革の途上にある。司法制度改革(2001年12月から2004年11月)によって、新たな諸制度が導入されたが、改革の柱として新時代の法曹養成を担う法科大学院が創設(2004年4月開校)され、昨年(2006年)からは卒業者を対象にした新司法試験も始まっている。

 しかし、開設された法科大学院が74校に上り、入学定員の総数が約5800人になったことで、卒業生の7割から8割が新司法試験に合格するという当初の想定は崩れている。第1回新司法試験(2006年)は合格者約1000人で合格率48.3%。第2回(今年)は約1850人で40.3%にとどまり、学生からは「無理して入学するにはリスクが高すぎる」との声も出始めている。合格者数は10年までに3000人に増やされるが、入学者総数からすると合格率は50%程度以上には上がらない。

 こうした現状に対し、法科大学院の教員の中からは、11年以降のさらなる合格者増員または3000人維持の要求や、逆に自主的に入学定員を削減し約4000人から4500人程度にするなどの提案も出されている。こうした動きは始まったばかりの新しい法曹養成教育をなんとしても定着させ確立しようとの強い意思の表れであり、尊重されるべき見解だ。合格者数が減らされ各大学院が試験対策偏重の詰め込み教育に戻るようなことになれば、「理論と実務の架橋」「リーガルマインドを育てる教育」という理念は崩壊してしまう。公明党との意見交換でも、教員から「3000人が減らされると法科大学院は致命的な打撃を受ける」との発言もあった。

 法科大学院構想では、文科系理科系を問わず、また、社会人からも入学者を募り多様な人材を法曹界に糾合することで法律家全体のパワーアップを図り、その結果として、新たな司法ニーズが開拓さることが期待されていた。

古い法曹像から決別

 これまでの古い法曹像を前提に、従来の仕事を守ろうとする発想から法曹人口の拡大に反対を唱えることは、司法制度改革の理念に反する。経済のグローバル化が進む中、合意に基づく紛争解決の訓練を受けた法律家の需用は増えることはあっても減ることはない。隣国の中国、韓国も法律家の養成に本腰を入れている。司法制度改革の成否は法科大学院の成功にかかっていると言えよう。