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吉田美月喜「実在された方を演じるのは初めて」知里幸恵さんモデルにアイヌ民族描いた映画に主演

2023-09-03 | アイヌ民族関連
日刊スポーツ9/2(土) 17:04配信

映画「カムイのうた」トークイベントに登壇した、左から菅原浩志監督、吉田美月喜、島田歌穂、木原仁美氏(撮影・村上幸将)
 アイヌ民族の間で歌い継がれてきたユーカラに日本語訳を付けた「アイヌ神謡集」を完成させた、知里幸恵さんをモデルに描いた映画「カムイのうた」(菅原浩志監督、11月23日に北海道で先行公開)トークイベントが2日、東京ビッグサイトで開催中のGOOD LIFEフェア 2023で開催された。
【写真】楽器ムックリを弾く吉田美月喜
 主演の吉田美月喜(20)は、アイヌの血を引くというだけで希望する進学を阻まれたテルを演じた。「アイヌ神謡集」を完成させた1922年(大11)に19歳の若さで亡くなった、幸恵さんがモデルの役で「自分自身が映画を準備するまで、アイヌの文化を知らない部分があり、一から学んで考えた」と今年1、2月に北海道東川町を中心に行った撮影前からアイヌ民族の歴史、文化を学んだと振り返った。
 吉田自身、実在の人物や実在の人物をモデルにした役を演じるのは初めてだった。「実在された方を演じる経験が初めて。しかも、自分の知らない文化を学びながら、ちゃんと説得力ある作品にしなくてはいけないというプレッシャーがあった。アイヌ文化を理解し、しっかり伝えていくんだ。想像の中で、きっとこうだったとイメージした」と思いを語った。そして「映画を撮らせていただいた時は、ちょうど19歳で幸恵さんが亡くなったのと同い年。19歳で、どう思っていたんだろうと、しっかり考えながら演じました」と、同世代として幸恵さんの気持ちを推し量って演じたと説明した。
 アイヌ文化を学び、強く感じたことについて聞かれると「1番、驚いたのが、床にお茶をこぼしてしまった時『床の神様が喉が渇いた』というセリフ」と即答した。「小さい頃に『お米の一粒に神様がいる』とは聞いたことがあるけれど、ものの中に神があって生かされているという、アイヌの考え方は素晴らしいと思った」と、アイヌ民族の考え方に感銘を受けたと強調した。
 テルの叔母、イヌイェマツを演じた島田歌穂(59)は、夫の作曲家・島健氏(73)が作曲した主題歌「カムイのうた」のほか、ユーカラも歌唱する。吉田の話を聞き「全てのものに神が宿っているという考えは素晴らしい。アイヌの歴史は知らなかった。学ばせていただいた。負けずに文化を守っていく生き方に感銘を受けました」と語った。
 イベントの中で、吉田がアイヌ民族の楽器ムックリを生演奏し、島田がユーカラ「小鳥の耳飾り」を生で歌唱した。吉田は「撮影が始まる前から教えていただいて、家でも練習した。撮影を終わっても家でやるんですけど、やればやるほど知らない音が出る。ちゃんと表現できたか分からないんですけど、主に撮影させて頂いた、東川町をイメージしました」と笑みを浮かべた。島田は「小鳥の耳飾り」について「かなり切ないお話(のユーカラ)です。全国の民謡を歌わせていただいたんですけど、やっぱり、今までに聴いたことがない…初めて聴く。でも、何か懐かしい感じのする、何て特別な音楽だろうと感じました」と語った。
 1988年(昭63)の映画「ぼくらの七日間戦争」で知られる、菅原浩志監督(68)が、メガホンをとり、脚本も書き下ろした。先住民として北海道で独自の生活、文化を築きながら、和人(大和民族)が入って来たことで奪われ、生活の糧であった狩猟、サケ漁が禁止され、住んでいた土地も奪われ、アイヌ語が禁止されるなど、アイヌ民族は差別を受けた。同監督は、その事実を踏まえ「北海道の地名は、アイヌ語。アイヌ民族が、どれだけ北海道中に住み、全部知って、地名に意味を込めていたか。和人が入って、その名前の上に全部、漢字を書いていって、アイヌの文化、歴史が書き直されてしまった」と訴えた。
 さらに「見た目だけじゃなくて本質が一体何か、その裏の本当の意味は何だということを、我々は見ていかなくちゃいけない、それを、アイヌ民族たちが教えてくれた」と強調。「我々も、わずか11年前には『安心。安全、未来のエネルギー』と大きな看板を掲げていた原発が爆発しているわけです。我々が思っていたことが実際は、そうではないということを、考えなければいけない時代がが今。その、きっかけになるのがアイヌ民族であり、文化です」と訴えた。
 この日は、知里幸恵さんの、めいの娘で知里幸恵記念館の艦長を務める木原仁美さんも登壇。「19歳で亡くなった人に、おかしいんですけど血縁としては大叔母さんです。(1923年発行の)『アイヌ神謡集』出版100年で注目されている時に、映画が出来て、さらに注目されると思う」と期待した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/99c51f5da1c699b6deb45d1c30c5319d577ebb42

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知里さんの思い考え演じた 映画「カムイのうた」 東京でトークショー 出演者ら ユカラ披露の一幕も

2023-09-03 | アイヌ民族関連
会員限定記事
北海道新聞2023年9月2日 22:23

アイヌ民族のユカラ「小鳥の耳飾り」を披露する(右から)島田さん、吉田さん、菅原監督(玉田順一撮影)
 大正期のアイヌ文化伝承者、知里幸恵(1903~22年)の生涯を描く映画「カムイのうた」のトークショーが2日、東京・有明の東京ビッグサイトで行われ、主演俳優の吉田美月喜さんと、歌手で俳優の島田歌穂さん、菅原浩志監督=札幌市出身=らが出演した。吉田さんはアイヌ民族の伝統楽器ムックリ(口琴)の演奏を披露した。
 トークショーで吉田さんは「アイヌ文化を学びながら説得力のある作品にするのはプレッシャーもあった。19歳の知里さんがどう思ったか考えて演じた」と振り返った。作中でも演奏したムックリを「やればやるほど知らない音が出て奥深い」と語り、東川の自然を思い浮かべて独特な音色を会場に響かせた。
 ・・・・
(和泉優大)
※ユカラの「ラ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/902925/

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<旭川上川>知里幸恵の道 和泉優大

2023-09-03 | アイヌ民族関連
会員限定記事
北海道新聞2023年9月2日 09:22
 大正期のアイヌ文化伝承者、知里幸恵(1903~22年)がまとめた「アイヌ神謡集」の出版から100年を迎えた8月10日、彼女が通学した道のりをたどる催しが開かれた。取材するだけでなく、自分も最初から最後まで一緒に歩くことにした。
 彼女が通った旭川区立女子職業学校があった、旧市立北都中から、自宅が近くにあった市立北門中までの約6キロの道のりを歩き続ける。まだ着かないのかと、気が遠くなった。この日はうだるような暑さで、Tシャツは汗でびっしょりに。2時間ほど掛けて北門中にたどり着くと、すっかりへとへとになってしまった。
 実際に歩いてみると、言葉以上に大変だった。知里は暑い夏も極寒の冬も毎日、この距離を歩いた。同級生からは差別やいじめに遭い、長い通学路は心臓に負担を掛けた。やるせないが、命を懸けてカムイユカラ(神謡)を文字に残した彼女の思いの強さも感じた。私はそこまで懸命に生きているだろうか。
・・・・・
(和泉優大)
※「カムイユカラ」の「ラ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/902675/

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アイヌ語しってる? フンペ

2023-09-03 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2023/9/3 東京朝刊 有料記事 581文字

フンペ(クジラ)
 フンペはクジラの総称(そうしょう)です。アイヌとクジラの関(かか)わりはとても深(ふか)く、クジラにまつわる伝説(でんせつ)が数多(かずおお)くあり、それが地名(ちめい)となって残(のこ)っているところも北海道内(ほっかいどうない)各地(かくち)にあります。
 アイヌは漁(りょう)でクジラを得(え)ていたこともありました。ただ、ほとんどの場合(ばあい)は、岸(きし)に打(う)ちあがる寄(よ)りクジラから肉(にく)や油(あぶら)をいただき食料(しょくりょう)にしたり、背中(せなか)のけんやひげを漁具(ぎょぐ)などに使用(しよう)したりしました。また海沿(うみぞ)いの地域(ちいき)では、クジラに関(かん)する歌(うた)や踊(おど)りも伝承(でんしょう)されており、どれもアイヌに恵(めぐ)みをもたらす存在(そんざい)として、クジラに対(たい)する感謝(かんしゃ)の気持(きも)ちが表(あらわ)されています。
・・・・・・
https://mainichi.jp/articles/20230903/ddm/013/100/024000c

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アイヌ文化、高校新科目に 平取町、全国から生徒募集

2023-09-03 | アイヌ民族関連
室蘭民報2023/09/02 12:00道内
 平取高校(平取町)は2024年度、アイヌ民族の言葉や歴...
ここから先の閲覧は有料です。
https://www.muromin.jp/news.php?id=91886

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幕別・明野共同墓地でイチャルパ

2023-09-03 | アイヌ民族関連
十勝毎日新聞2023/09/02 14:21

 【幕別】幕別アイヌ協会(安東春江会長)は8月27日、町内2カ所の共同墓地で、先祖を供養する慰霊祭「イチャルパ」を行い、神々への祈りをささげた。
 2004年からアイヌ文化伝承の一環...
●この記事は会員限定です。
https://kachimai.jp/article/index.php?no=592738

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富良野で「ニングル」語るイベント 倉本聰さん原作のオペラ 来年2月・東京で公演 /北海道

2023-09-03 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2023/9/2 地方版 有料記事 655文字

オペラ「ニングル」のプレイベントで語る倉本聰さん(中央)や江原啓之さん(左から2人目)ら=北海道富良野市の富良野演劇工場で2023年8月22日
 脚本家、倉本聰さん(88)による物語『ニングル』(1985年・理論社)を原作とするオペラ「ニングル」の制作を記念するプレイベント「倉本聰~今、ニングルを語る」が8月22日、富良野市の富良野演劇工場であった。
 ニングルは、森で暮らす体長15センチほどの小さな人間。アイヌの伝承に由来するとされ、倉本さんの作品に森を守る妖精として登場する。倉本さんが環境破壊を警告する作品として執筆し、1993年に富良野塾で戯曲として初演。その後、全国で上演されたほか、ラジオ作品にもなっている。
 公益財団法人・日本オペラ振興会が、倉本さんにオペラ版の制作を提案。曲はNHKのドラマ「大地の子」などの渡辺俊幸さんが手がけた。ラジオドラマ「倉本聰・ニングル」を制作した吉田雄生さんが脚本をつくり、演出は数多くの作品に携わった岩田達宗さんが担当した。ニングルの「長」役でオペラ歌手の江原啓之さんが出演する。
 プレイベントで倉本さんは「ニングルを書いた40年ほど前の夏は今ほど暑くなかった。最近の山火事や洪水など、どうして自然は変わってしまったのか。小さい子どもたちを見ていると、将来が心配だ」と語った。江原さんは「ニングルは、ただのオペラでない。切実なメッセージが込められている」と応じた。
 オペラ「ニングル」は、2024年2月10~12日に「めぐろパーシモンホール」(東京都目黒区八雲1の1)で公演される。チケットは今年9月30日から発売開始。問い合わせは日本オペラ振興会チケットセンター(03・6721・0874)。【土屋信明】
https://mainichi.jp/articles/20230902/ddl/k01/040/022000c

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『アマゾン先住民族から南研子へ 深い絆と感謝のアート展 Ⅱ 』 9月8日より開催

2023-09-03 | 先住民族関連
帰国したばかりの南研子が語る!アマゾンの森の現状をレポート
ART Is.TOKYO GALLERY2023年9月2日 14時04分
会期:2023年9月8日(金)~10月29日(日)※毎週金土日のみ会場:ART Is. TOKYO GALLERY
【東京都渋谷区代官山町3-13 代官山エーデルハイム103】
この度、ART Is. TOKYO GALLERYでは、アマゾン森林保護の為のチャリティイベントを開催します。
是非、貴媒体にて取り上げていただけますと幸いです。

 『アマゾン先住民族から南研子へ 深い絆と感謝のアート展 Ⅱ 』
会期:2023年9月8日(金)~10月29日(日)※毎週金土日のみ
会場:ART Is. TOKYO GALLERY 【東京都渋谷区代官山町3-13 代官山エーデルハイム103】

こちらの展覧会は、NPO法人 熱帯雨林保護団体代表の南研子氏による
アマゾン先住民族の作品販売に於けるチャリティイベントになります。
南氏は、30年以上前から”地球の酸素はアマゾンが守ってくれている、その森を絶対に絶やしてはならない”という真摯な思いから、アマゾンの森に入り先住民と寝食を共にし、彼らの望むことになるべく手を差し伸べようと、私財を投じて長年支援されてきました。いつか日本にアマゾンを知っていただけるような美術館を作ろうと、アマゾンの先住民族が手がける作品を大切に集め、保管してまいりましたが、昨今のコロナ禍で企業からの協賛金が減り、継続的な支援が難しくなってきたため、南氏の私蔵コレクションを展示販売するチャリティイベントを開催することとなりました。現在も山火事や開拓で東京ドーム28万個分の森が燃えておりますが、南氏は、アマゾンの先住民族が自然を活かして自立できるよう、養蜂事業支援などにも力を入れています。
今回は美術品と共に、活動の様子なども一同に展示させていただきます。多くの方にアマゾンの森の現状に想いを寄せて頂き、より多くの支援を集めるためには、メディアの方の支援が必要だと痛切に感じております。是非、興味を持っていただけますと嬉しいです。ギャラリー、南研子氏ともに、取材対応可能です。 どうぞよろしくお願い申し上げます。
【美しい希少なアートたち】
【南研子】
NPO法人 熱帯森林保護団体「Rainforest Foundation Japan」代表(環境哲学・現代社会思想・文化人類学・アマゾン熱帯雨林文化論)
1970年女子美術大学卒業。大学卒業後、NHKテレビ『ひょっこりひょうたん島』などの制作を担当。その他、舞台芸術やのコンサートのプロデュースも手がける。1989年、英国の歌手スティングがおこなったワールドキャンペーン・ツアー「アマゾンを守ろう」の支援スタッフをつとめ、その縁で、1989年5月に、熱帯森林保護団体Rainforest Foundation Japanを設立した。以後34回にわたり、毎回数ヶ月、アマゾンのジャングルで先住民と共に生活しながら、悠久の大地アマゾンをめぐる様々な支援活動(森林保全、医療支援、先住民文化記録事業など)を勢力的にすすめている。その画期的で献身的な活動については、朝日新聞、毎日新聞など各種報道機関にて激賞され広く喧伝されてきた。
著書に名著『アマゾン、インディオからの伝言』(ほんの木)のほか、大自然と人類への熱いメッセージを綴った『アマゾン、森の聖霊からの声』(ほんの木)がある。
【イベント】
 ①研子さんナオミさんトークショー 
”お帰りなさい!なんと4年ぶりのアマゾン!貴重なお土産話満載”<NPO法人 熱帯雨林保護団体 代表 南研子氏 ✕ 理事 松田ナオミ氏>2023年9月8日、10日、16日、29日、10月7日、20日、29日 ※各回14時~
( 定員各回20人 事前予約購入制 /チャリティー¥3,000 )
※ ご予約はこちらから→ https://www.art-is.net/store/ 
②熱量をシェアする 研子さん新刊出版記念トークショー 
”なぜ今ブラジルアマゾンを子どもたちに伝えたいのか?”<NPO法人 熱帯雨林保護団体 代表 南 研子氏 ✕ 担当編集者・山林 早良氏(合同出版)>9月9日、24日、10月15日 ※各回14時~
( 定員各回20人 事前予約制  /無料 )
※ ご予約はこちらから→ https://airrsv.net/Artis/calendar 
※熱帯森林保護団体(RFJ) ホームページ https://rainforestjp.com
※ART Is. TOKYO GALLERY WEBSITE https://www.art-is.net/
※ART Is. TOKYO GALLERY Instagram https://www.instagram.com/art.is.art.is/
是非、掲載を検討いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
ART Is. TOKYO GALLERY 一同
【お問い合わせ先】
担当:MICKEY info@art-is.net  
ART Is. TOKYO GALLERY
#103 3-13 Daikanyama-cho Shibuya-ku Tokyo 150-0034 Japan 
Tel: 03-3496-1739    www.art-is.net
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000110589.html

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文化受け継ぎ生きる証し カナダ先住民の巨大な彫刻柱

2023-09-03 | 先住民族関連
毎日新聞 2023/9/3 東京朝刊 有料記事 1171文字

ハイダの巨大なトーテムポール(クリスチャン・ホワイト作)=筆者提供
 <みんぱく発>
 カナダの太平洋岸には雄大な海と森林地帯が広がっている。そこではハイダらの先住民族が豊かな水産・森林資源を利用して独特な文化を形成してきた。
 彼らがヨーロッパ人と初めて接触したのは1770年代であり、19世紀にはラッコの毛皮交易による経済的繁栄とその後の天然痘といった外来の伝染病による苦難を体験した。19世紀にヨーロッパからの入植者が増加し、1867年にカナダが建国されると、先住民に対して伝統的儀礼の禁止や寄宿学校での教育といった同化政策を実施した。このため、彼らの言語と伝統的文化は急激に衰退した。
 しかし、1951年のインディアン法改正により伝統的儀礼の実施が解禁となり、先住民族の伝統的文化の復興と創造的継承のための活動が始まった。それは、生きていくうえで重要な先住民族としてのアイデンティティーを強化することでもあった。トーテムポールと呼ばれる巨大な彫刻柱(以下、ポールと略称)や仮面、カヌーが再び制作されるようになり、結婚などの特別な時に開催される大饗宴(きょうえん)と財の贈与を伴うポトラッチ儀礼も復活した。この復興活動の中で重要な役割を果たしたのがポールの制作であった。
 現在、ハイダ・グワイやバンクーバー島の先住民族の村を訪ねると、見る者を圧倒する巨大なポールが立っている。ポールには祖先と特別な関わりがあるとされているワタリガラスやワシ、ビーバーのような生き物や、怪鳥サンダーバードやシシウトル(双頭のウミヘビ)のような架空の怪物、人間の姿などが伝統的な表現様式にのっとって彫られている。用途により、屋内の家柱、入り口の門柱、家族の歴史を記録する記念柱、墓地に立てる墓柱などに分類できる。現在、最も多く制作されているのは、自らの祖父母や祖先をたたえたり、学校や病院の新築を記念したり、博物館・美術館・個人コレクターに売ったりするための記念柱である。
 この20年間の変化も見逃せない。ポールを自然に朽ち果てさせるのではなく、寿命を延ばすためにニスを塗ったり、色を塗り直したりするようになった。また、かつてはポールの下部を土中に埋めていたが、地面にコンクリート製の土台を作り、その上に金属具で固定することも始まった。加えて、以前は村人が力を合わせてポールを立てていたが、現在では人力を借りずに重機で立てることもある。
 ポールの制作には変化がみられたものの、心を込めて彫ったポールは、先住民族の存在と文化のすばらしさを見た人びとに知らしめるとともに、先住民族自身のアイデンティティーを確認させる役割を果たしている。私はポールを見るたびに、彼らが伝統的文化を創造的に継承しながら先住民族として力強く生きていることを実感する。<国立民族学博物館教授・岸上伸啓>
 ※「みんぱく」は大阪にある国立民族学博物館の愛称です
https://mainichi.jp/articles/20230903/ddm/014/070/023000c

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トーテムポール、94年ぶり故郷へ カナダ先住民に返還―英博物館

2023-09-03 | 先住民族関連
時事通信2023年09月02日06時55分

カナダ先住民のトーテムポール=8月28日、英北部エディンバラ(スコットランド国立博物館提供)(AFP時事)
 【ロンドン時事】英北部エディンバラのスコットランド国立博物館に展示されている巨大なトーテムポールが、カナダの先住民ニスガ族に94年ぶりに返還されることになった。8月28日には搬出を前にした儀式が執り行われた。
スリランカに財宝返還 植民地時代に持ち去る―オランダ
 英メディアによると、トーテムポールは19世紀半ばに作られ、高さ約11メートル、重さ約1トン。ニスガ族の戦士の物語を伝えるもので、人や動物、家紋が彫られている。1929年にカナダ人類学者が「購入」し、スコットランドに運ばれたという。一方、ニスガ族側は盗まれたものだと主張。約1年の交渉の末、昨年12月に返還が合意された。
 ニスガ族代表団の一人は「このポールにはわれわれの祖先の魂が宿っている。約100年の時を経てついに、ニスガの地に安住させることができる」と述べた。今後、カナダ空軍が輸送し、同国西部のナス川流域まで運ばれる予定。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023090200210&g=int

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気候変動と先住民族テーマ 札幌の映画監督が解説

2023-09-03 | 先住民族関連
北海道新聞2023/09/02

「海外では先住権が当たり前に行使されている」と話す映画監督の影山あさ子さん
 札幌在住の映画監督影山あさ子さん(59)の講演会「気候変動とたたかう先住民」が2日、札幌市北区の札幌エルプラザ(北8西3)で開かれた。影山さんは海外の先住民族と先住権をテーマにした映画を制作中。撮影した映像を流しつつ、地球温暖化で貴重なサケの漁獲量が減っている北米の先住民族が、資源回復に挑んでいる姿を紹介した。
https://nordot.app/1070686947845537897?c=768367547562557440

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一度は“絶滅”した地球儀みたいな「飛べない鳥」、先住民の土地を約100年ぶりに駆け回る ニュージーランド

2023-09-03 | 先住民族関連
ハフポスト9/2(土) 8:20配信

ニュージーランド自然保護局のホームページ
一度は絶滅したと思われていた希少な鳥が、再び大地を駆け抜けた。
ニュージーランドのワイマオリ渓谷で8月23日、18羽の「タカへ」が放された。
【画像集】地球儀みたいな美しさ。かつて“絶滅”宣言が出た「飛べない鳥」のタカへ
タカへは体長約50センチの飛べない鳥で、山地に生息する。文献の史料が存在しない先史時代からそのままの姿形を留めているとされ、世界で最も希少な鳥の一種だ。
その姿は個性的で、正面からはほぼ完全な球形に見える。羽毛は青緑色で、くちばしと足は赤い。
英紙ガーディアンによると、タカへは1898年に正式に絶滅が宣言された。当時すでに減少傾向にあった個体数は、ヨーロッパからの入植者に連れられたヤギやネコなどの動物によって壊滅的な被害を受けた。その後、1948年に再び発見され、現在約500羽まで回復して個体数は増加傾向にある。
自然保護の活動家たちは、タカヘの天敵であるオコジョやフェレット、ネズミなどの個体数を抑制しようと、罠を仕掛けるなどの手立てを長年打ってきた。
ニュージーランド自然保護局(DOC)でタカへの保護活動を担当するデイドラ・ヴァーコー氏は、「タカヘの数が500羽に迫り、年約8%のペースで増加しているため、新たな住処が必要です。タカヘの個体数を増やすために何十年にもわたって努力してきた後、現在はより多くの野生群を確立することにはやりがいがありますが、課題も残されています」と語っている。
「新たな野生在来種の個体群を確立するには時間がかかり、成功が保証されているわけではありません。タカへの繁殖を望むのであれば、私たちは新しい場所を探索し、現在そして将来にわたって鳥を保護するためにできる限りのことを学ぶ必要があります」(ヴァーコー氏)
タカへがおよそ100年ぶりにワイマオリ渓谷に戻ってきたことは、土地を所有するニュージーランドの先住民族マオリのナイタフ(Ngāi Tahu)族にとっても大きな意味がある。タカへは古くから部族にとって神聖なものとして大切に扱われた鳥で、その羽毛をマントなどに織り込んでいた。
ナイタフ族のトゥマイ・キャシディ氏(Tūmai Cassidy)は、「私たちの土地で放鳥できることは、私たちの権利と土地を取り戻すために闘争した7世代にわたる先祖のことを思い出し、考えるだけでも意義深い」と胸の内を明かした。
放されたタカへたちが新しい住処に慣れたことが確認されれば、10月にさらに7羽、2024年の初めには最大で10羽のタカへのひなが新たに放される予定だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e080b1537d6d7d4371c98ec95c8ca8757709c8ff

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折り返し地点のSDGs 危機感深め、一歩でも前へ

2023-09-03 | 先住民族関連
毎日新聞 2023/9/3 東京朝刊 1677文字
 地球環境を守りながら、全ての人が豊かさを享受できる。そうした世界の実現を目指す国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の取り組みが停滞している。
 貧困の根絶、健康の増進、教育機会の確保、気候変動対策の推進、持続可能な経済成長など、17の目標を掲げる。2015年に採択され、今年はゴールの30年までの折り返し地点に当たる。
 だが、現状は厳しい。国連は今年6月、「達成の道筋から大きく外れている」と警鐘を鳴らす報告書をまとめた。生活や社会活動の基盤となる食、健康、環境分野の改善が著しく遅れ、低所得国が取り残される構図が強まった。
 逆風となっているのは、ウクライナ危機、異常気象の頻発、コロナ禍、世界経済の低迷などだ。危機に直面した各国が内向きな傾向を強めた結果、国際社会の分断が深まっている。
達成への逆風が強まる
 17の目標は、状況悪化に歯止めをかけ、望ましい世界を実現するための道しるべと言える。ただし、理想を掲げるだけでは人々を動かすことは容易ではない。
 これまでに明らかになった課題を検証し、新たな戦略を立てることが必要だ。
 社会や人々の行動を変えるカギの一つが経済活動だ。ビジネスが、結果として環境や社会にとってのプラスにつながるような仕組みを作らなければならない。
 日本の商人が大事にしてきた「三方よし」というモットーは、今のSDGsにつながる考え方だ。「買い手よし、売り手よし、世間よし」と、社会に貢献してこそ「良い商売」とされてきた。
 その精神を、定款に盛り込んでいるのがロート製薬だ。会社を「社会の公器」と位置付け、社会課題の解決を経営理念に掲げる。
 南米アマゾンでは、現地法人が先住民族を対象にした「白内障撲滅プロジェクト」を20年以上続け、眼科の医療サービスや手術用品を無償で提供している。
 新規事業は「社会のためになるのかどうか」が採用基準だ。食料自給率の向上と環境に配慮した農業振興を目指す農業法人や、目薬容器の廃プラスチックを活用し、サングラスを生産するベンチャーが生まれた。サングラスの売り上げの1割は、インドでの白内障手術の支援に充てる。
 「利益を、株主に加え、いかに社会へ還元するかという視点に立てば、企業ができることは多くある」。それが同社の訴えだ。
 現状を変える大きな力になる可能性を秘めているのが、若者の行動である。
 宮城県農業高(名取市)の生徒たちは数年前、海岸の清掃活動をしていた際、「カエルの卵」のようなごみが大量にあるのを見つけた。稲作用肥料の効果を長期間保つためのプラスチック製カプセルだった。
 生徒たちは、カプセルを使わない畑作用の肥料を転用し、稲作での実証実験に取り組んだ。収量は変わらず、食味コンテストで全国1位となるレベルの高い米が収穫できることが分かった。
社会変える若者の行動
 成果は各方面から注目され、全国農業協同組合連合会(JA全農)などが、30年までにカプセルをゼロにする方針を打ち出した。大人たちが無批判に続けてきた「常識」を、高校生が疑い、社会を変える流れを生んだ。
 電通の調査によると、日本でSDGsの具体的な内容まで知っている人は4割だったが、10代では男性は6割近く、女性は7割を超えていた。一方、国連の23年版SDGs達成度ランキングで、日本は前年の19位から21位へ下がった。
 先進的な取り組みを広げ、若者の関心の高さを政策に反映するのは、政治の役割だ。
 SDGsに詳しい蟹江憲史(のりちか)・慶応大教授は「現状のままでは、異常気象も経済格差も取り返しのつかないことになる。各国の本気度が問われている」と強調する。省庁横断的に政策を進める法的な基盤を整え、社会の方向性を示すことも必要だろう。
 「地球の限界」を回避するために、残された時間は少ない。大局的なかじ取りが求められる。
 今月には、国連でSDGsをテーマにしたサミットが開催される。何が不足していたのか。どの分野に集中的に力を注ぐべきか。国際社会は危機感を共有し、一歩ずつであっても前進を続けなければならない。
https://mainichi.jp/articles/20230903/ddm/005/070/118000c

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政府が185億円の支援を約束 女子W杯4強入りの豪州代表、国民の半数近くを熱狂の渦に巻き込んだ成功物語【コラム】

2023-09-03 | 先住民族関連
フットボールゾーン9/2(土) 8:30配信
豪州国民の記憶に刻まれた主砲の一撃 TV視聴者数はシドニー五輪の記録を更新

オーストラリア代表は史上最高の4位と躍進【写真:ロイター】
 オーストラリア・ニュージーランド共催の2023年FIFA女子ワールドカップ(W杯)は、オーストラリア代表「マティルダズ」が男女W杯を通して史上最高の4位と躍進し、興行的にも大成功を収めた。
 観客動員数は合計197万7824人(ニュージーランドを含む=米スポーツニュースサイト「The Sporting News」調べ)と、前々回のカナダ大会を上回って過去最高を記録。準決勝イングランド戦は、総人口の実に半数近くが視聴している。マティルダズが勝ち進むにつれ、普段はそれほどサッカーに関心のないライト層も巻き込み、愛国心に火を付けた。
 オーストラリアは開幕前日、エースFWのサム・カー(チェルシー)が練習中にふくらはぎを負傷し、初戦からまさかの欠場を強いられる不運に直面した。1勝1敗で迎えた7月31日のグループステージB組第3戦、オーストラリアは勝たなければ敗退という瀬戸際に追い込まれたが、東京五輪金メダルの強豪カナダを4-0で撃破し、開催国の意地を見せて決勝トーナメントに進出。エース抜きで崖っぷちからのグループステージ突破、そして待望の復帰という起死回生のドラマは国民を高揚させた。
 8月7日のラウンド16はデンマークを2-0で破り底堅くベスト8に進出したが、12日の準々決勝フランス戦は0-0のまま120分でも決着がつかない死闘となった。オーストラリアは息を呑む壮絶なPK戦を7-6で制し、男女を通してW杯初のベスト4進出を決めると、熱狂は最高潮に。シドニーの街角では、ナショナルカラーの金と緑のマフラーをまとった子どもたちが「Aussie, Aussie, Aussie! Oi, Oi, Oi!」(オーストラリアのスポーツ選手やチームを応援する掛け声)と連呼していた。
 そして16日、シドニーのスタジアム・オーストラリアで行われた準々決勝のイングランド戦。0-1のビハインドで迎えた後半18分、ついにカーが最大の見せ場を作る。オーストラリアが自陣でのボール奪取からカウンターを仕掛けると、シンプルにボールをカーの元へ。ドリブルでスピードに乗ったカーは、相手DFを前に置きながらも約20メートルの距離から右足一閃。豪快な一撃を突き刺すと、全豪を歓喜の渦に巻き込んだ。
 その後2点を奪われ決勝進出は逃したものの、テレビ視聴者数は公共放送「ABC」によると一時、1115万人と総人口(2670万人)の約42%に達した。これまで視聴者数が最も多かったのは、先住民出身の女子陸上選手、キャシー・フリーマンが金メダルを獲得した2000年シドニー五輪400メートル決勝だった。この記録を23年ぶりに塗り替えている。
 スタジアムを埋めた7万5784人、全豪各地のパブリック・ビューイングやパブの観客、そして1000万人以上のテレビ視聴者を加えると、国民の半数近くが観戦していたことになる。23年前のフリーマンや水泳男子イアン・ソープらの勇姿と同様、カーの強烈なゴラッソは多くのオーストラリア人の脳裏に焼き付いたことだろう。
代表主要メンバーの声が国を動かす 首相が女子スポーツ振興に185億円の支援約束
 カーは試合後の記者会見で「私たちは開幕前に『10年、20年と語り継がれるレガシー(遺産)を残そう』と話していた。それを達成することはできたと思う、フットボールを通して国を団結させることができた」と胸を張った。
 加えて、カーら主要選手が口を揃えたのは、意外にも現実的なマネーの話だった。「私たちに必要なのは資金だ」――。男子と比べて資金提供が格段に少ないとされる女子サッカーへの支援を求めたのだ。
 これに対し、アンソニー・アルバニージー首相は8月19日、2億豪ドル(約188億円)の国家予算を投じて女子スポーツの施設や設備の改善を支援する助成金プログラムを発表している。政権側が事前に用意していた可能性は否定できないが、構図としてはスター選手の「直訴」に国が応じた格好だ。
 オーストラリアでは、女子サッカーは子どもの競技人口こそ多いものの、プロリーグは地上波でほとんど放映されないなど観戦スポーツとしてはマイナーな存在。そのため開幕前の盛り上がりは今ひとつだった。
 開幕前のマーケティング施策がなかったわけではない。シドニーの地元ニューサウスウェールズ州政府は6月、代表的な建造物の1つ、シドニー・ハーバー・ブリッジを通行止めにして女子W杯を盛り上げるための広報イベントを開催。地上波の放映権を取得した民放「セブンネットワーク」は、シドニー湾のウォーターフロントに野外中継スタジオも特設した。
 蓋を開けて見ると大成功を収めた要因は何か? オーストラリアのサッカー事情に詳しいブリスベン在住のライター、タカ植松氏は「熱心なフットボールファンや元々多い草の根プレーヤーといった岩盤層だけではなく、その家族やオーストラリアに住む参加国の人々が大挙して会場を訪れ、盛り上がりが熟成された。それに呼応する形でマティルダズが勢いに乗ると、一般層の熱度も急上昇していった」と話す。
 草の根の熱い応援がマティルダズの活躍を促し、勝ち進んで多くの見せ場を作ったことが、最大のマーケティング効果を発揮したと言えそうだ。
 ただ、植松氏は一過性の人気で終わらせないことが大切だと指摘する。
「この盛り上がりを女子フットボール競技のさらなる普及と強化につなげられるかが問われる。オーストラリアの女子フットボールは元々、競技スポーツとしての人気が高い。W杯で大きな成果を上げたことが、観戦スポーツとしての人気向上につながることを期待したい」
 初栄冠の夢を4年後に持ち越したマティルダズだが、目先は2024年パリ五輪に照準を合わせる。五輪女子サッカー・アジア2次予選は10月26日、西オーストラリア州パースで行われるオーストラリア対イラン戦でスタートする。
[著者プロフィール]
守屋太郎(もりや・たろう)/1993年に渡豪。シドニーの日本語新聞社「日豪プレス」で記者、編集主幹として、同国の政治経済や2000年シドニー五輪などを取材。2007年より現地調査会社「グローバル・プロモーションズ・オーストラリア」でマーケティング・ディレクター。市場調査や日本企業支援を手がける傍ら、ジャーナリストとして活動中。
守屋太郎 / Taro Moriya
https://news.yahoo.co.jp/articles/d6092096ee4988643b52f77c89893a94369e6429

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アメリカ映画におけるハッピーエンドとは? “移民二世”が主人公の作品から読み解く

2023-09-03 | 先住民族関連
リアルサウンド2023.09.02 18:00
文=瀧川かおり、写真=『マイ・エレメント』©2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 1492年にコロンブスがアメリカ大陸に到達して以降、ヨーロッパからの入植をはじめ、アメリカには世界各国から多くの人が移り住んだ。現在アメリカに住む人々は、先住民の子孫を除いて全員が移民やその子孫だ。しかし、近年特に“移民”として扱われているのは、1960年代ごろから現在に至るまでにアメリカにやってきた人々だ。彼らの多くはそれ以前の移民と同じように、アメリカに根を張り、二世、三世と世代を重ねている。
 2023年のアニメーション作品には“移民”を主人公に据えたものが目立つ。ディズニー&ピクサー最新作『マイ・エレメント』は、「もしも火・水・風・土のエレメントが住む世界があったら?」というファンタジーの枠の中で、主人公である火の女性エンバーが移民二世として描かれている。世界中で人気を誇るゲームキャラクターを映画化した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の主人公であるマリオも、ニューヨーク・ブルックリンに居を構える移民という側面が強調されている。このほかにも、近年話題を集めた作品には、『私ときどきレッサーパンダ』(2022年)や『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年)など、移民や移民二世の物語が多いことに気がつくのではないだろうか。
 本稿では、なぜ彼らを描く映画が近年増えているのか、その理由と社会的な意義について考えていく。
「移民の国」アメリカ
 1776年に建国されたアメリカ合衆国には、1800年代になるとヨーロッパからの移民が押し寄せた。彼らの母国はイギリスをはじめ、ドイツ、イタリア、オーストリア、ハンガリー、ロシア、そしてスカンジナビアの国々など。彼らはそれぞれに同郷の者でネットワークを形成し、相互扶助の精神でコミュニティを作り上げていった。
 特にイタリア系はもともと団結意識が高く、多くの移民が流れ込んだニューヨークには、リトル・イタリーと呼ばれるイタリア人街もできた。その後、1960年代以降には南北アメリカ大陸、主にはメキシコからの移民が急増した。それと同時に、それまで横ばいだったアジアにルーツを持つ人々もアメリカにやってくる。国連の調査によると、2020年時点でアメリカの移民人口は約5063万人。アメリカの人口全体の15.30%に達するという。(※)
 移民二世を描いた映画作品が増えたのは、単純に移民やその二世、三世が増えたから、と考えることができるだろう。作り手にも受け手にも、そうしたバックグラウンドを持つ人々が増えたのだ。では、彼らが語る物語にはどんな特徴があるのだろうか。
「自分の物語」を語り始めた移民二世の監督たち
 先に上げた作品のうち、『マイ・エレメント』や『私ときどきレッサーパンダ』、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、監督自身が移民二世であり、自身の経験や親世代に思いを馳せて作られた作品だ。彼ら新しい世代の監督たちは、これらの作品をとおして“自分の物語”を語っている。
 『マイ・エレメント』の主人公エンバーは、移民としてエレメント・シティにやってきた両親が必死で築いてきたものを受け継ぎ、守るつもりでいた。しかし、水の青年ウェイドを介して外の世界を知り、自分に新たな可能性を見出していく。親の期待を一身に背負い、自分でもその期待に応えるべきと考えていた彼女だが、世界に触れたことでそれ以外の選択肢を手に入れる。しかし、やはり両親の苦労を知っているからこそ、簡単にその可能性に飛びつくことはできず、葛藤するのだ。
 本作のピーター・ソーン監督は、韓国系移民二世だ。彼はニューヨークで生まれたものの、韓国の伝統や言語、文化に取り囲まれた保守的な家庭に育ったという。エンバーの祖母の遺言が「火の男性と結婚しなさい」だったのと同じように、彼の祖母も「韓国人と結婚しなさい」と言ったそうだ。そのため、彼は当初イタリア人の血を引く妻との交際を秘密にしていたという。まさにエンバーとウェイドの関係そのものだ。ソーンは親世代との衝突を経て、彼らが自分たち子供世代のために払った犠牲を理解し、感謝するようになったと語る。同じようにエンバーも、自己を確立する過程で、両親から受け取ったものの意味を理解する。新しい世界に踏み出すことは、自分のルーツを否定することではない。それは、より良い未来を夢見て祖国をあとにした親世代の決断と同じだ。
 『私ときどきレッサーパンダ』では、主人公のバックグラウンドが監督とほぼ同じになっており、よりパーソナルな作品という印象を受ける。主人公であるメイリン・リーと監督のドミー・シーは、ともに中国系カナダ人。物語の舞台は2002年のトロントで、メイは13歳。1989年生まれのシーと同い年だ。同作のメイキングドキュメンタリー『レッサーパンダを抱きしめて』(2022年)で、2歳のときに両親とともに中国からカナダに移住した彼女は「プレッシャーのなかで育った」と語っている。彼女は「守るべき家族の伝統」があり、「祖国を捨てた家族の犠牲を無視できない」と感じつつ、「新しい国での親にはできなかった数々の経験」を楽しみたいと思っていたとも語っている。親からの期待と自分の望みに板挟みとなり、悩む子供、特に移民の子は多いのではないかと彼女は言う。同作のメイリンも、まさにこの葛藤のなかで、自分をコントロールできなくなると、巨大なレッサーパンダに変身してしまう。
 ピーター・ソーンもドミー・シーも、移民二世である自分自身の経験を下敷きに、楽しくも美しい家族の物語を作り上げた。彼らが語る“自分の物語”は、親子の葛藤という普遍的な物語でありながら、特に同じバックグラウンドを持つ観客にとって、より身近に感じられる物語になっているのだ。
移民の物語を語る意義とハッピーエンド
 近年、ハリウッドに代表されるエンターテインメント業界では、人種・性別・セクシュアリティなどにおいて、多様性が求められている。しかし、そういった難しい話は抜きにしても、「共感できる」「自分を投影できる」キャラクターがいるのは、物語を楽しむうえで大きな要素になるだろう。移民二世の物語も、移民が増えつづけるアメリカ社会において、より多くの人の共感を集めることができるものだ。ディズニーやピクサー、イルミネーションなどのアニメ作品は、子供を主な観客として想定していることから、これまで必要以上にキャラクターに民族性を与えてこなかった。しかし、『マイ・エレメント』や『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』など、移民やその二世を主人公とした作品が増えているのは、そうしたバックグラウンドを持つ子供たちが増え、彼らがより共感できるようにといった側面もあるだろう。これらの作品の監督が語る“自分の物語”は普遍性を持ち、多くの観客にとって“私の物語”になる。
 移民二世を主人公とした作品の多くは、親の期待からの解放と同時に、ありのままの自分を親に受け入れられ、子供も親を完全ではない1人の人間として捉えるというハッピーエンドを迎える場合が多い。親子間でお互いを独立した個人として尊重することは、なかなか難しい部分もあるだろう。しかしそんな自由で愛情深い関係を築くことが、多くの人にとってハッピーエンドとなるのだ。
参照
※ https://ecodb.net/country/US/migrant.html
https://realsound.jp/movie/2023/09/post-1419460.html

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