goo blog サービス終了のお知らせ 

先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

<社説>体験型観光と北海道 地域を見つめ直す契機だ

2023-09-07 | アイヌ民族関連
北海道新聞2023年9月7日 05:00
 アウトドア活動や異文化と触れ合うなどの体験型観光、アドベンチャートラベルの国際イベントが来週道内で開かれる。国や道もバックアップする。
 コロナ禍の行動制限解除で外国人客が増える中、「量より質」重視の取り組みに注目が集まる。
 観光は北海道の基幹産業と言われて久しい。1990年には当時の横路孝弘知事が全国初となる「北海道観光宣言」を行った。国の観光立国表明の13年前である。
 かつては定番スポット巡りで「自然は一流、サービス三流」と揶揄(やゆ)された道内観光だが長期滞在型への模索が広がる。今回の開催を国際水準に高める好機にしたい。
 一方で観光客が押し寄せ悪影響が出る「オーバーツーリズム」や受け入れ先の人手不足も問題化する。住民生活との共存なくして持続可能な観光はない。行政や業界、地域全体で解決策を考えたい。
■等身大の対応が大切
 アドベンチャートラベルとは「アクティビティ、自然、異文化」のうち二つ以上の体験を、その地域でのみ味わえるものという。
 生き方に変化を与える旅として欧米富裕層を中心に盛んで、世界の市場規模は70兆円に及ぶ。
 今回道内で開かれるのは国際的な業界団体による「ワールドサミット」だ。オンラインではない現地開催はアジアで初となる。
 各国の旅行会社やガイドら800人近くが参加し、商談会のほか合計約50コースの自然、文化体験ツアーも今週から道内外で行う。
 日常から離れた豪華な旅にも思えるが、上川管内東川町のNPO法人代表でツアーも多く手掛ける荒井一洋さんは「地域が無理なく等身大で行うのが大切」と話す。
 荒井さんのツアーでは大雪山系のハイクやサイクリングなど特別な行程もあるが、食事や暮らしは「普段づかいのお裾分け」の方が参加者の体験価値が高いという。
 受け入れ地域の人も地元の自然や冬のスポーツ、アイヌ文化などを再認識し伝える契機となる。
 重要なのは旅行者と地域をつなぐガイドの存在だ。道は認定制度を作り今週初めて11人選んだが、ツアー数の多さでなく地域に根付くことに力点を置いてほしい。
・・・・・

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/905079/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

民族衣装や小物 アイヌ文様緻密 札幌で作品展

2023-09-07 | アイヌ民族関連
会員限定記事
北海道新聞2023年9月6日 22:01

アイヌ文様刺しゅうが施されたタペストリーや民族衣装を前に、バッグなどの作品を持つ「フチヌ工房」の生徒たち
 札幌市内のアイヌ文様刺しゅう教室「フチヌ工房」に通う生徒たちの作品展が、同市豊平区のほほえみカフェ(豊平3の7)で開かれている。緻密なアイヌ文様が施された手縫いの民族衣装や小物など約50点が展示されている。
 ほほえみカフェは札幌聴覚障害者協会が運営する。作品展は同カフェがフチヌ工房に通う聴覚障害者の佐々木八代恵さん(68)に開催を持ちかけ、4回目。1日から教室の生徒7人の作品を展示している。
 ・・・・・
作品展は29日までの午前11時~午後4時(最終日は正午まで)。土、日、祝日は休み。(金子文太郎)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/905015/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古里学ぶ喜び、児童に伝え 喜茂別「歴史プロジェクトの会」 神社、特産品生産 現地に引率し講話

2023-09-07 | アイヌ民族関連
会員限定記事
北海道新聞2023年9月6日 18:20

きもべつ歴史プロジェクトの会のメンバーと喜茂別神社を訪れ、神社や地域の歴史を学ぶ喜茂別小の児童たち
 【喜茂別】郷土史を学ぶ町民団体「きもべつ歴史プロジェクトの会」が、喜茂別小(55人、木村明彦校長)の児童たちに地域社会や産業の歩みを伝える活動に力を注いでいる。同会の資料調査に基づく講話や現地学習を進めており、斉藤久会長(72)らメンバーは「子供たちに歴史の学びを通じて古里を好きになってほしい」と張り切っている。
 同会は2009年に発足し、現会員は約20人。町内の史跡の調査やガイドブック作製に取り組んできた。町内の文化祭を通じて同校と接点ができ、20年から旧国鉄胆振線やアイヌ民族の暮らしなど町内の歴史を伝える活動を続けている。
 本年度は4年生の希望に応え、総合的な学習の時間に町特産のアスパラガス生産に関わる講話や工場見学などを行った後、8月後半は町内の神社をテーマに選定。22日に斉藤会長らが同校で講話を行い、31日は同会メンバー5人と児童8人が3カ所の神社を巡った。
・・・・
(須藤真哉)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/904762/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

<水曜討論>道内の体験観光 意義と課題は

2023-09-07 | アイヌ民族関連
会員限定記事
北海道新聞2023年9月6日 09:51
 体験型観光の国際イベント「アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)」が11~14日、道内で初めて開かれる。アドベンチャートラベル(AT)の市場規模は世界で70兆円に上るとされ、国内外から熱い視線が注がれている分野だ。各国から約800人の観光関係者が集まるアジア初開催のATWSを前に、サミット開催の意義やATの展望などについて、道内のガイドや専門家に聞いた。
■多様なツアー 地域で完結 阿寒湖周辺で観光ガイド歴約30年・高田茂さん
 阿寒摩周国立公園の中心部にある阿寒湖温泉(釧路市)を拠点に、国内外から訪れる観光客のガイドをしています。北海道は、アドベンチャートラベル(AT)の素材となる大自然や文化に恵まれていますが、ATが人気の欧米には、残念ながらあまり知られてはいません。
 2016年に阿寒のATを海外に広げようと、アラスカで開かれたアドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)に初めて参加しました。その時、欧米の旅行業関係者に「日本にATはないだろ」「何を売りに来たんだ」と口々に言われたものです。彼らが「日本」から連想したのは東京、京都、大阪、そして神社仏閣、芸者ガール、富士山でした。
 しかし、私が阿寒湖で釣った体長90センチのニジマスの写真を見せると彼らは「こんな大きなニジマスがいるのか」と驚き、ホテルの目の前にある湖で釣れると言うと、もっと驚きました。
 AT先進国のアラスカやカナダは広大です。市街地から体験観光のフィールドまで車や飛行機で片道2~3時間かかり、わずか2時間のトレッキングが1日がかりになることもあります。一方で道内は、温泉街の周辺に湖、森が密集し、釣り、トレッキング、カヌーと、1日で複数の体験ができる地域が多いのが特徴です。
 また、ATWSの主催団体の幹部が17年に阿寒湖温泉を視察した時に「道内は、日本文化とアイヌ文化が共存しているのも魅力」と言われ、異文化体験の面でも評価されました。道内のATが世界に知られれば、新たなフィールドとして注目される可能性は大きいのです。
 AT愛好者は、料金が高くても中身の濃いツアーを求め、気に入ると何度も訪れます。阿寒湖温泉のホテル内にあるATの拠点では、利用者の半数を訪日客が占め、過去5年間の利用者の45%がリピーターです。
 道内のATを普及させるには、ガイドの育成が急務です。今、道内のガイドはアルバイトとの兼業が多く、「バイトに追われてガイドができない」という状況に陥る人が少なくありません。要因の一つはガイド料の安さです。
 欧米のガイドは、会話が楽しく、盛り上げ上手。客の関心やニーズに合わせ、ツアーの内容を臨機応変にアレンジします。一方、日本は、自分の知識を一方的に語るガイドが多い。
 ガイドのレベルが上がれば、料金を上げても顧客はつきます。各自治体や観光関係機関は、ガイド研修を積極的に開き、レベル向上を支援してほしい。道は本年度、ATに対応したガイド認定制度を創設し、私もルールづくりに携わりました。ATの受け皿拡大につなげたい。11日からのATWS道内開催はスタートライン。これから、どう動くかが大切です。
 私が理事を務める日本アドベンチャーツーリズム協議会(東京)は、全国各地を組み合わせたツアーを企画していく考えです。例えば、道内でのスキー体験と沖縄でのダイビングをセットにしたり、道内の山と長野の北アルプスを巡る登山ツアー、アイヌ文化体験と道外での巡礼を組み合わせたりできます。南北に長い日本ならではのATを売り込み、持続的な観光振興につなげたいです。(佐竹直子)
・・・・・
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/904512/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“土人”と呼ばれ差別に苦しむアイヌの女性を変えた一言とは? 民族の文化を後世に遺した実在の人物モデルに描く『カムイのうた』

2023-09-07 | アイヌ民族関連
ムービーコレクション2023.09.06

(C)シネボイス
アイヌ民族に伝わる叙事詩ユーカラを19歳で日本語に翻訳した女性の物語
アイヌ民族の壮絶な歴史を描いた映画『カムイのうた』より、11月の北海道先行公開に先駆け、ポスタービジュアルと予告映像(30秒バージョン)を紹介する。
本作は、北海道の厳しくも豊かな自然と共存して生きてきたアイヌ民族で、その民族に伝わる叙事詩ユーカラを19歳の若さで見事な日本語に翻訳し、民族の文化を後世に残した実在の人物・知里幸恵をモデルとして描いた物語。北海道の先住民として独自の文化を築いてきたアイヌ民族は、和人(大和民族)によって差別と迫害の日々を余儀なくされている。同じ民族ではないという理由だけで──。
メガホンをとった菅原浩志監督は、四季折々の北海道の雄大な自然美と、自然と共存したアイヌ民族の歴史を描き、現代の自然と文化に警鐘を鳴らす。
アイヌの心には、カムイ(神)が宿る──。学業優秀なテルは女学校への進学を希望し、優秀な成績を残すが、アイヌというだけで結果は不合格となる。その後、大正6年(1917年)、アイヌとして初めて女子職業学校に入学したが、土人と呼ばれ理不尽な差別といじめを受ける。
ある日、アイヌ語研究の第一人者である兼田教授が、東京から列車を乗り継ぎ、テルの叔母イヌイェマツを訪ねてやって来る。アイヌの叙事詩であるユーカラを聞きにきたのだ。叔母のユーカラに熱心に耳を傾ける教授が言った。「アイヌ民族であることを誇りに思ってください。あなた方は世界に類をみない唯一無二の民族だ」。
教授の言葉に強く心を打たれたテルは、やがて教授の強い勧めでユーカラを文字で残すことに没頭していく。そしてアイヌ語を日本語に翻訳していく出来栄えの素晴らしさから、教授のいる東京で本格的に頑張ることに。同じアイヌの青年・一三四と叔母に見送られ東京へと向かうテルだったが、この時、再び北海道の地を踏むことが叶わない運命であることを知る由もなかった…。
今回紹介するポスターは、赤を基調にしたデザイン。アイヌ民族が「神=カムイ」とする北海道にしか生息しないシマフクロウを背景に配置し、インパクトのあるビジュアルとなっている。アイヌ民族は迫害と差別を強いられ、近世の歴史ではポスターのメインコピーにあるように「何も許されなかった」民族なのだ。
吉田美月喜、アイヌ民族の歴史を描く!顔に刺青を入れた島田歌穂の姿も/映画『カムイのうた』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=2VCeyJb7Vcc&t=1s
30秒バージョンの予告映像では、北海道の大自然とそれを見守るシマフクロウが冒頭に登場。そして、主演・吉田美月喜ら主要キャスト陣の名シーンが凝縮された映像が続く。
『カムイのうた』は11月23日より北海道にて先行公開。
https://www.moviecollection.jp/news/206935/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイヌ女性のドキュメンタリー、京都シネマで8日から 京都の男性が上映後押し「理解深めて」

2023-09-07 | アイヌ民族関連
京都新聞2023年9月6日 16:00堤冬樹
 アイヌ文化伝承者の宇梶静江さん(90)にカメラを向けたドキュメンタリー映画「大地よ アイヌとして生きる」(金大偉監督)が8日から、京都市下京区の京都シネマで公開される。北海道の大自然を背景に、語りや祈りを通してアイヌの暮らしと精神性に迫る作品。宇梶さんと交流のある市内の男性が製作会社に打診し、京都での上映を後押しした。男性は「アイヌは京都とも関係がある。理解を深めるきっかけにしてほしい」と話す…
続きを読むには会員登録やプランの利用申し込みが必要です。
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1103340

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ率いるEDGE OF FOREVERが10月発売の新作「RITUAL」からニュー・シングル ”Where Are You?” のMVを公開!

2023-09-07 | 先住民族関連
Burrn.online2023.09.06

当代メロディック・ロック・シーンきってのソングライター/プロデューサー/キーボード奏者として活躍しているアレッサンドロ・デル・ヴェッキオ<vo,key>が率いるイタリアのEDGE OF FOREVERが、10月13日にリリースされるニュー・アルバム「RITUAL 」から新たな先行シングル”Where Are You?”のMVを公開した。
https://www.youtube.com/watch?v=iAXyGKy4ba0
Edge Of Forever - "Where Are You?" - Official Music Video
1年9ヵ月振り、6作目のアルバムとなる「RITUAL」は、カナダの先住民寄宿学校に通わされたナイティヴ・アメリカンの少年と少女の双子について描いた作品。2人は別々の学校に送られて離れ離れになり、もう彼らの部族は誰も残っていないのだから、その言語や文化は忘れるようにと命令される。しかし、2人はいつの日か逃げ出して再会できることを夢見ながら、自分達の言語や文化を維持し続けていた。やがて少年は学校から脱出することに成功し、人生をかけた旅に出る。そして、最後に死の床で妹に再会するのである。
今回のニュー・シングルについて、バンドはこうコメントしている。
「これは『RITUAL』のストーリーの始まりの部分で、ハイダ族の双子が引き離されて別々の寄宿学校に送られ、部族の文化や言語、ルーツを根絶させられそうになる。”Where Are You?”は妹を探す兄の絶望的な叫びであり、愛よりも支配、共感よりも所有、平和よりも戦争、といった考え方について語っている」
EDGE OF FOREVER「RITUAL」
2023年10月13日発売
<収録曲>
01. Where Are You?
02. Water Be My Path
03. Freeing My Will
04. The Last One
05. Love Is the Only Answer
06. Forever’s Unfolding
07. Ritual Pt. I
08. Ritual Pt. II Revert Destiny
09. Ritual Pt. III Taunting Souls
10. Ritual Pt. IV Baptized in Fire
11. Ritual Pt. V Ride the Wings of Hope
12. Ritual Pt. VI Cross My Eyes
13. Ritual Pt. VII Reconciliation
14. Love Is The Only Answer(alternative version)*
*日本盤ボーナス・トラック 
Line-up:
・Alessandro Del Vecchio - Vocals, keyboards
・Aldo Lonobile - Guitars
・Nik Mazzucconi - Bass
・Marco Di Salvia - Drums
※以下、メーカー・インフォメーションより。
メロディック・ロック界では名ソングライター、プロデューサー、エンジニアとしてファンにはお馴染み、
アレッサンドロ・デル・ヴェッキオを中心としたバンドEDGE OF FOREVERの、
前作から2年弱振りとなる最新スタジオ・アルバム。
●EDGE OF FOREVERの作品と言えば、ここ数作ではお馴染みとなったネイティヴ・アメリカンをコンセプトとした作風を展開しているが、本作でもそのコンセプトは受け継がれている。その本作「Ritual」では、間もなく忘れ去られる言語を話す最後の 2 人の先住民族の物語を取り扱っており、主人公は男の子と女の子の双子で、彼らは2つの異なる寄宿学校に送られて生き別れとなるところからスタートし、そこからお互いを探す過程を綴っている。
●この作品は単にネイティヴ・アメリカンをコンセプトとした作品と言うだけでなく、少数派を苦しめた問題などを取り扱い、更にそこから導き出される誇り、強さ、痛み、そして本当の意味で深くありのままの自分であることの究極の喜びと充実感を探求するというテーマに基づいた作品となっている。
●こうした上記の物語をバンドはドラマティックで緩急のあるメロディと楽曲構成で表現しており、特に作品後半は7章に分かれた長編組曲"リチュアル"を収録し本編を締めくくる。耳の肥えたメロディック・ロック・ファンにも十分納得してもらえるだけの濃い内容の作品となっている。
https://burrn.online/news/20230906_03.html

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自然市場タスクフォース、自然経済を促進する7つの提言を発表

2023-09-07 | 先住民族関連
Sustainable Brands2023.09.06
アマゾン協力条約機構の首脳会議が8月8-9日、ブラジル・ベレンで開かれ、Taskforce on Nature Markets(自然市場タスクフォース)が最終報告書「Making Nature Markets Work, Shaping a Global Nature Economy in the 21st Century(自然市場を機能させ、21世紀のグローバルな自然経済を形成する)」を公表した。報告書では、自然を経済に織り込むというかつてない転換によって、市場をどのようにして人と地球のために機能するものに変えていくかを示した7つの提言が紹介されている。(翻訳・編集=小松はるか)
過去5年間で、自然を活用した気候変動対策に210億ドル(約3兆724億円)が投じられた。“生物多様性”は、2022年12月に開かれた国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)以降、先進的な企業・政府の注目を集めるテーマとなっている。時を同じくして、企業がもたらす自然界へのインパクトを把握、測定し、対策を講じるのに役立つ多数の報告書やツール、フレームワークが登場してきている。
しかし、ネイチャーポジティブな国際金融の実現を促進するNatureFinance(ネイチャーファイナンス)のイニシアティブ「自然市場タスクフォース」(2022年4月に発足)が指摘しているように、自然を持続不可能な形で酷使する経済から転換するための扉は閉ざされようとしている。したがって、これまでのように非常に遅いペースで大転換を進めていては不十分だ。自然市場タスクフォースは、英国政府が2021年に発表した重要な報告書『生物多様性の経済学』(ダスグプタ・レビュー)の結論に賛同し、グリーンウォッシュを防ぐために市場と協力し、より強力な政治的支援のあるガバナンスの枠組みを発展させるよう継続的に求めている。
また自然市場タスクフォースによる報告書は、政策立案者をはじめ市場関係者、市民に向けて書かれており、野心的ながらも実践的な内容となっている。報告書の提言のなかには、食品の一次産品市場におけるトレーサビリティの促進、そして事業者に対して自然や気候変動に考慮するように求めるほか、炭素市場や新興の生物多様性クレジット市場において自然が豊かな国や先住民、地域コミュニティに公正な価格の支払いを保証することなどが含まれている。
ネイチャーファイナンスでマネージングディレクターを務めるジュリー・マッカーシー氏はこう指摘する。
「経済的な意思決定において、適切なガバナンスと共に、自然の価値に適切で矛盾のない価格を付けることはよりネイチャーポジティブな市場を促進することにつながるだろう。そして、自然を保全・回復するために数十億ドルの投資を呼び込み、自然を管理する最前線にいる先住民族や地域コミュニティにも公正に報いることになるだろう」
多様な生物が暮らす生態系が警戒すべき損失状況にあることのほかに、自然を無限で無料のものと捉えて経済的な対策を取らない不適切な管理は、気候危機を加速するだけではない。不平等を増加させ、財政的安定や食料安全保障を弱体化させる。
さらに自然市場タスクフォースは、自然は、気候変動と闘うためのクリーンエネルギーを用いたソリューションを提供するなどして役立ってきた一方で、テクノロジーによる恩恵を受けていないと指摘する。自然市場のトランスフォーメーション(変革)は、地方や地域、国際的な政策インセンティブや規制、新しいガバナンスの枠組みに依存しているのが現状だ。
欧州委員会の経済・社会インパクトグループの議長で「Taskforce on Nature Markets」のメンバーでもあるサンドリン・ディクソン氏は、「自然市場は経済システムの全面的な変革への懸け橋だ。私たちは、自然に価値を置くだけにとどまることはできない。真の変革には、低炭素で自然を活用した解決策によって変化に投資するだけではなく、同時に、現在の金融・経済システムを人や地球、そして発展に、真に寄与するものへと変えていくことが必要だ」と語る。
7つの提言 国際金融活動に自然・公平性に関する目標を取り入れるには
以下の7つの提言は、自然の危機に対する政府や市場によるいかなる解決策も、効果的な対策を考案・実行する上で、自然の管理者、とりわけ自然界の8割を管理する先住民や地域コミュニティの参加なくして成功しないだろうとの認識に立って行われている。
「Taskforce on Nature Markets」のメンバーであり、ブラジル・スルイ族首長のアウミール・ナラヤモガ氏は「先住民が自然市場を設計・管理するという権限のある立場に就くことは基本だ。自然なくして地上に生命は存在せず、持続可能な経済もまた存在しない」と話す。
7つの提言はベストプラクティスをもとに考案された。報告書は、緊急性と決断力を持って、世界規模で変化を加速するよう呼びかけている。
1.経済・金融構造を公正でグローバルな自然経済と整合させる。金融・通貨の政策や規制、貿易・投資ルールを公正でグローバルな自然経済を促進するための必須事項と整合させる。
2.中央銀行と監督当局の政策を整合させる。中央銀行には、金融機関・市場・システムによる取り組みと自然や環境に関する政府・国際政策の公約を整合させるよう求める。
3.公共財政と公正でグローバルな自然経済に必要な条件を整合させる。公共財政管理と生物多様性の国際的枠組みで具体化された自然に関する国際公約を整合させる。
4.食料の一次産品市場において、人や地球に関する説明責任が果たされるようにする。食料の世界貿易を促進する世界最大かつ最も影響力のある自然市場であるため、政策立案者や規制機関に対し、全体的なトレーサビリティ、もたらす影響について透明性を強化するよう義務付けることを求める。
5.自然を管理する人々の経済的利益の向上を確保する。合意した価格で、公平性・持続可能性の観点から整合性の高い生態系サービスを提供するために、豊かな自然を有する主権国家、先住民、地域コミュニティからなる連合をつくる。
6.自然に関連する犯罪(木材の違法伐採など)による悪影響に対処する。バリューチェーンにおいて自然に関する違法行為がないことを証明するために、投資家・金融機関のための要件を定めることで、違法行為の発生率・影響を減らす(自然に関する犯罪は違法な資金の流れの発生源の第3位に入る) 。
7.自然の状態を測定する方法を統一する。自然の総合的な状態を測定する世界共通の取り決めをつくるほか、グリーンウォッシュを回避し、説明責任を果たさせるために必要な基本データを公開して共有する。
私たちには今、企業や市場、経済が機能する方法を根本的に変えることが求められている。そうしたなか、自然市場タスクフォースによる7つの提言は、ポスト炭素経済への移行を支えるより公正でネイチャーポジティブな市場の実現を可能にするものだ。
https://www.sustainablebrands.jp/news/us/detail/1217102_1532.html

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界各地の多様な刺繍を体感 静岡県立美術館 「糸で描く物語」展

2023-09-07 | 先住民族関連
中日新聞2023年9月6日 16時30分 (9月6日 16時30分更新)

多彩な模様や技法の刺しゅうが施されたルーマニアの民俗衣装=静岡市駿河区の静岡県立美術館で
 伝統的な装飾や絵本の原画、高級ブランドのファッションなど、刺繡(ししゅう)を用いたさまざまな表現に着目した展覧会「糸で描く物語 刺繡と、絵と、ファッションと。」が、静岡県立美術館(静岡市駿河区)で開かれている。18日まで。
 世界各地に伝わる刺繡の技術。中・東欧では多様な民族や文化が混交した歴史を反映するかのように、地域や村ごとに独自の意匠が受け継がれてきた。ブラウスの襟元や袖に細かく縫い込まれた幾何学模様や、スカートの華やかな色彩はその代表例。ルーマニアのトランシルバニア地方の家庭では、花嫁の手先の器用さやセンスを表すものとして、刺繡で装飾を施した「嫁入り道具」の寝具が飾られたという。
 近現代に入り、刺繡が新たな芸術表現として花開いた地域もある。狩猟を生業としてきたカナダの先住民族イヌイットの人たちは定住が進んだ20世紀半ば以降、経済的自立のため版画や手芸に取り組んできた。色彩豊かな壁掛けには既製品の布に加えて動物の皮も使われ、厳しい自然の中で育まれた美意識と畏敬の念が浮かび上がる。
 会場ではこのほか、チェコや日本の作家が刺繡した絵本の原画、パリのオートクチュール(高級衣装店)の工房が手がけた衣服やサンプルも展示。担当する同館の貴家映子学芸員は「さまざまな刺繡の表現にあっても、どこかで共通する柔らかさや温かさを感じてもらえたらうれしい」と話す。(宮崎正嗣)
https://www.chunichi.co.jp/article/763739

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

呉外交部長が「李登輝紀念音楽会」に出席、李元総統が台湾外交で果たした功績に思いを馳せる

2023-09-07 | 先住民族関連
台湾トゥデイ 2023/09/06 |

外交部の呉釗燮部長(外相)は4日夜、台北市内の国家音楽庁(=ナショナル・コンサートホール)で開かれた財団法人李登輝基金会主催の『務実外交:2023年李登輝紀念音楽会』に出席した。務実外交とは日本語で「実務外交」と呼ばれるもの。外交関係の有無に関わらず、重要な国々と実質的な関係を構築するという李登輝元総統が実践した外交政策のこと。(外交部)
外交部の呉釗燮部長(外相)は4日夜、台北市内の国家音楽庁(=ナショナル・コンサートホール)で開かれた財団法人李登輝基金会が主催する『務実外交:2023年李登輝紀念音楽会』に出席した。務実外交とは日本語で「実務外交」と呼ばれるもの。外交関係の有無に関わらず、重要な国々と実質的な関係を構築するという李登輝元総統(1923~2020年)が実践した外交政策のことだ。呉釗燮部長は、他の省庁の首長や台湾に駐在する各国の外交官らと音楽に耳を傾け、李登輝元総統が台湾外交で果たした功績に思いを馳せた。
財団法人李登輝基金会は2021年より毎年のように「李登輝紀念音楽会」を開催し、李登輝元総統の生涯やその功績を振り返っている。李登輝元総統の生誕100年の節目の年に当たる今年、同基金会は李登輝元総統が実践した「実務外交」をテーマにした音楽会を企画。八角塔男声合唱団の心に訴える歌声、国史館が提供する貴重な映像、ニュースキャスターの陳雅琳さんの司会、それに台湾在住でパラグアイ出身のギターおよびハープ奏者Roberto Zayasさんが奏でる音楽などを通して、「実務外交」という新たな思考で外交の苦境を乗り越えようとした李登輝元総統の取り組みを振り返った。
音楽会の前半では、李登輝元総統が実際に訪れた国々の音楽、つまりシンガポール民謡の『Di Tanjung Katong』、エスワティニ出身の音楽家Bholojaの歌曲『Zero to Hero』、インドネシアの民謡『Cikala Le Pong Pong』、タイの民謡『Loy Krathong』、米コーネル大学の校歌『Far Above Cayuga's Waters』、パラグアイの民謡『Recuerdo-de-Ypacarai』、日本の東日本大震災復興支援ソング『花は咲く』など7か国の音楽とともに、外遊・出国にまつわる当時の出来事が紹介された。後半では北京語、台湾語、客家語、先住民族言語、新住民(東南アジア)言語の楽曲を通して、台湾の多様なエスニックグループの美と「音楽で友と交わり、文化で外交をする」という姿勢が示された。
https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=148,149,150,151,152&post=241522

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岸田政権はアイヌ関連推進でウポポイ等に17億円投入、事業の終了予定はなし

2023-09-07 | アイヌ民族関連
アセアンポータル2023年9月6日
岸田政権は、アイヌ関連施策の推進として、「民族共生象徴空間(ウポポイ)」などの運営を行う事業に、来年度は今年度より増額された17億円を投入する可能性が高いことが明らかになった。
文化庁が作成した、アイヌ関連施策の推進における、令和6年度の要求・要望額は17億円となり、前年度の予算額の16億円から増額となっている。アイヌ関連施策の推進では、【アイヌ文化振興等事業】と【国立アイヌ民族博物館の運営】が実施される。
【アイヌ文化振興等事業】には、2.28億円が投入される。この事業では、アイヌ施策推進法に基づき、アイヌ文化の振興等を図るため、指定法人(公益財団法人アイヌ民族文化財団)が実施する事業に対して補助を行うものとなる。補助率は、1/2となる。事業実施期間は、終了予定なしとなる。
【国立アイヌ民族博物館の運営】には、1,5億円が投入される。前年度は13億円であったため、増額されている。この事業では、アイヌ施策推進法に基づき、指定法人(公益財団法人アイヌ民族文化財団)に委託して、「国立アイヌ民族博物館」の運営を行うものとなる。具体的には、資料の保存修復、クリーニング、教育普及事業の拡充(遠隔授業、教員向け
研修の実施)、魅力的な展示会の実施、新たな生活様式に対応した情報発信(バーチャル博物館、多言語化)、広報活動、ナショナルセンターとしてアイヌ文化でつながる博物館のネットワーク強化・道外展の実施を実施する。事業実施期間は、終了予定なしとなる。
https://portal-worlds.com/news/asean/31936

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「北方領土を返す気はゼロ」プーチンが今夏日本にした忌々しい行為…権力者が入植し、支配誇示する常套手段

2023-09-07 | アイヌ民族関連
プレジデント9/7(木) 7:47
■今夏プーチンが日本に向けてやった忌々しい行為
 今年で78回目の終戦記念日を迎えたが、北方領土における「終戦」はまだ訪れていない。かの地を巡っては、このところきな臭い動きが見られる。今夏、ロシアは9月3日を「対日戦勝記念日」と一方的に宣言してきた。さらに、根室半島と歯舞群島の間にある貝殻島の灯台に、ロシア正教の十字架を設置した。北方領土の実効支配を強めるとともに、ウクライナ戦争で対立する日本を牽制する動きと見られる。そこには、「宗教」を使った植民地政策の、常套手段が隠されている。
 筆者は過去にビザなし交流団員として、北方領土を訪れている。2012年の択捉島を皮切りに、2013年には色丹島、2015年には択捉島と国後島を訪問している。ちなみに歯舞群島は、ビザなし交流の中には組み込まれていない。
 北海道根室半島の納沙布岬に設置されている望遠鏡を覗き込むと、手に取るような近さに北方領土を捉えることができる。岬からもっとも近い距離にある北方領土が、歯舞群島の貝殻島である。貝殻島は満潮時には水中に没する「低潮高地」にあたる。したがって全容を視認することは難しいが、そこには“ピサの斜塔”のような古い灯台が傾いて立っている。灯台は戦前の1937(昭和12)年に、わが国によって設置された。
 貝殻島は納沙布岬から、わずか3700メートルの距離にある。島と灯台とを結ぶ中間ラインより北側は、ロシアが支配する海域である。常に銃器を装備した国境警備隊が目を光らせている。
 毎年6月、貝殻島海域では、日露民間交渉に基づくコンブ漁が解禁される。今年のコンブ漁は、9月末まで実施される予定だ。歯舞群島海域で採れた昆布は、最高級の「歯舞コンブ」ブランドで、市場に出回る。肉厚で、おでんの具材などに使われる。
 4月に妥結した交渉では、204隻の船と3081トンのコンブ採取に対し、8254万円をロシア側に払うことで合意した。1隻当たり40万円程度の負担になる計算だ。
 このようにロシアにカネを払うことで、北方領士の一部海域で操業が可能になる。しかし、両国の領土紛争の最前線にあるこの海は安全とは言いがたく、過去にはロシア側の銃撃で命を落としたり、拿捕(だほ)されたりしている。
 「カニの甲羅の中に賄賂の札束を詰め込んで、警備隊に渡す習慣が、旧ソ連時代にはよくあった」
 根室のある有力者は、かつて筆者にこう明かしていた。ウクライナ戦争や、北方領土問題を抱えつつも、海の上では、なんとか経済活動が行えている。
■植民地支配で権力者は「宗教施設」を利用する
 だが、「陸上」ではそうはいかない。北方領土はわが国固有の領土だが、日本の無条件降伏後の1945(昭和20)年8月28日にソ連軍が択捉島に上陸。9月1日に国後島と色丹島、同月3日には歯舞群島に侵攻した。以来、返還交渉は一進一退を繰り返しながらも、現在まで膠着(こうちゃく)状態が続いている。そして、昨年ウクライナ戦争に突入したことで日本との関係性は戦後最悪の状態になり、今年のビザなし交流も中止になっている。
 ロシアのプーチン大統領は今夏、北方四島への侵攻を完了させた9月3日を「軍国主義日本に対する勝利と第2次大戦終結の日」と定める法案に署名し、成立させた。明らかに日本に対する牽制である。
 そして、貝殻島灯台でも、8月下旬から異変が起きている。貝殻島灯台は、元はコンクリートの灰色の地肌をみせていた。しかし、24日には作業員が乗ったボートが横付けされ、ペンキで白く塗られてしまった。続いて26日には、灯台上部にロシア正教の「八端十字架(8つの先端を有する十字架)」が、翌27日にはロシア国旗が掲げられた。
 この十字架をめぐっては、サハリンのロシア正教会が宗教画「イコン」とともにロシア軍に手渡したとの報道もある。
 貝殻島灯台は、わが国による保守点検ができないため、2014年からは消灯が続いていた。しかし、ここにきて再点灯されたことも確認されている。北方領土の南限である貝殻島灯台の「ロシア化」、つまり実効支配を国際的に見せつける目的がありそうだ。
 それは、ロシア正教のシンボル、八端十字架の設置から読み解くことができる。なぜなら、これまでの歴史を振り返れば、植民地支配において権力者は「宗教施設(や宗教用具)」を、うまく利用してきたからだ。
 かつて日本も、元はアイヌの地であった北海道や、中国大陸や南洋諸島においての植民地政策で「寺院」を利用してきた。植民地に寺院を建立していくことを「植民地開教」という。
 その嚆矢(こうし)は明治期の北海道開拓である。明治新政府が樹立すると、アイヌの土地の完全なる植民地化に舵を切る(同化政策)。
■日本もかつて宗教をすごい勢いで「前線」に進出させた
 蝦夷地は北海道と改称され、開拓使が設置された。開拓使初代長官の黒田清隆は北海道の開発に本腰を入れて乗り出していく。新政府は御雇い米国人ホーレス・ケプロンを顧問に据え、1872(明治4)年までにアイヌの土地を収用してしまった。
 北海道開拓が進むに従って、東北や北陸を中心とする内地から人々がムラ単位で入植。その際に、寺院や神社が一緒にくっついていった。
 宗教施設は、移民のコミュニティを強化する役割があり、故郷の象徴でもある。また寺院は、開拓中に死んでいったムラ人の弔いという重要な機能も担った。
 北海道進出には、浄土真宗教団が新政府の政策に協力する形で真っ先に手を挙げている。1869(明治2)年6月、東本願寺が北海道開拓を政府に申し出て、許可された。東本願寺はすぐさま、横浜から船で調査隊を派遣した。
 さらに浄土宗の増上寺が、1869(明治2)年9月に日高地方や色丹島などの開拓を認められ、入植を始めた。北海道はあまりにも広く、また新政府の予算も潤沢ではなかったため、地方の藩や有力寺院などに土地を分け与えて支配させたのだ。これを分領支配という。
 開拓した色丹島は、正式に増上寺の寺領として組み込まれた。だが、寺領であったのはわずか1年ほどであった。
 北海道開拓に続き、大陸への植民地化政策でも同様に、寺院が積極的に進出していく。その最初は、京都の東本願寺(真宗大谷派)だ。1876(明治9)年に、上海に別院を建立した。その後、北京などにも寺院が建立された。
 日清戦争以降、太平洋戦争まで、日本仏教界は政府と歩調を合わせるかごとく、シベリア、樺太、台湾、朝鮮半島、満州、中国、南洋諸島に進出する。
 たとえば、浄土真宗本願寺派(総本山・西本願寺)は終戦までに368の寺院を建てている。曹洞宗は255カ寺を開教した。日本仏教界での全体の開教数は不明だが、ゆうに1000カ寺は超えるとみられる。植民地政策に乗って、すさまじい勢いで宗教が「前線」に進出していったのである。
 宗教施設を設置することは、その地が主権の及ぶ場所であることを国際社会に主張するための既成事実となる。宗教は人間活動の基盤そのもの。寺や教会はコミュニティの核であり、占領した側の「定着」を意味するからだ。
 北方領土ではソ連侵攻後、日本人集落にあった寺が全て取り壊された。代わって最も立地環境のよい場所に、ロシア正教会の教会が建てられた。筆者も教会の内部を見学したが、そこには金などで装飾がなされた荘厳な空間が広がっていた。そして、時の鐘が集落にこだましていた。ロシアは日本に北方領土を返還する気など、さらさらないのだと、感じた次第だ。
 宗教の戦争利用は、いつの時代も世界各地で行われ続けていることではある。しかし、本来、宗教は人々の救済、恒久平和を目的とするものとはいえ、現実の権力と宗教との結びつきを見ると、虚しさが込み上げてくるのも正直なところである。
----------
鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)
浄土宗僧侶/ジャーナリスト
1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)近著に『仏教の大東亜戦争』(文春新書)、『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書)。浄土宗正覚寺住職、大正大学招聘教授、佛教大学・東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d96e7e870ed404beb9cbc796901b8fe61b59d3ea

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする