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自分の生きる場所が世界の真ん中、ナイジェリア 偏見や差別に立ち向かい、自分の居場所を見つける少数者たち

2024-06-29 | 先住民族関連

ナショナルジオグラフィック2024.06.28

写真家ヤガゼ・エメジはこの写真で、同性婚禁止法などによって、社会的に排除され、本当の自分を隠さなければならない重圧にさらされる故国ナイジェリアの人々の姿を表現した。(PHOTOGRAPH BY YAGAZIE EMEZI)

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この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2024年7月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

性的少数者を含むナイジェリアの先住民たちの多くが、抑圧的な法律や不当な汚名をものともせず、本当の自分をさらけ出し、高らかに讃美する。

 作家のアクウェケ・エメジとファッションデザイナーのアデジュ・トンプソンが、自分らしい生き方について語る。

*  *  *

 壁と天井が深いコバルトブルーに塗られたアデジュ・トンプソンのスタジオは、ブロンズ彫刻や山積みの本、家族写真などで埋め尽くされていた。大きなテーブルでは、職人が羽根を使って、白い布にキャッサバ糊(のり)で線を描いていく。ヨルバ族の伝統的な染色技術を用いた「アディレ」と呼ばれる布を作っているのだ。白く残したいところに糊を置いて染めた布は、トンプソンの高級ブランド「ラゴス・スペース・プログラム」の服に仕立てられる。

 私(アクウェケ・エメジ)がニューヨークからナイジェリアのラゴスに戻るのは、2018年に執筆活動を始めて以来、久しぶりのことだ。作家でアーティスト、クィア(性的少数者)でもある自分が母国を去るという選択をしたことについて、自分は逃げたのだという思いが常につきまとってきた。ナイジェリアは、性的少数者の人々にとって安全な国ではない。だが、自らの意志あるいは何らかの事情で、母国にとどまっているクィアのクリエーターもいる。ラゴスでジェンダーレスな服を作るトンプソンもそんな一人で、自分たちを爪はじきにする母国の文化に根ざした作品を創っている。そんな彼に話を聞けるのは、またとない機会だ。

「私にとっての自由は芸術の枠内にとどまりません。資本主義的な基準や社会との同化を拒み、本物の自己表現をする生き方も自由の一部なのです」—アーロン・アハル

アーロン・アハルは、ハウサ族の社会では、女性のように振る舞う男性「ヤン・ダウドゥ」にも自己表現をする自由があることを意識しながら育った(ヤン・ダウドゥはゲイと同義で使われることも多い)。それは、クィアのイベントを主催するアハルにとって、ナイジェリア北部の先住民としての生き方や、ファッションを通じて自分をどう演出するかを考える際のよりどころになっている。(PHOTOGRAPH BY YAGAZIE EMEZI)

ヤガゼ・エメジはこの特集記事のために自分の居場所を見つけたナイジェリアの社会的少数者を撮影した。

ポートレートのキャプションは、ナイジェリア人ジャーナリストのネルソン・C・J(イボ)執筆。彼はラゴスを拠点に、ニューヨーク・タイムズ紙、ローリングストーン誌、タイム誌に寄稿している。

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 トンプソンの作品は、実験的で唯一無二。単に既製服を作って売るだけでなく、歴史に足跡を刻む活動と言えよう。そんなトンプソンは、これまで手がけた一連の作品が認められ、アフリカ人として初めて国際ウールマーク賞を手にした。新進気鋭のファッションデザイナーに贈られる名誉ある賞だ。

 彼のスタジオに入ると、重たいけれど楽しげな可能性でいっぱいのポケットの中にいるように感じた。私たちは真っ青なアディレで覆われたソファに腰かけ、語り合った。文化の進化について、そしてイボ族のアーティストとヨルバ族のデザイナーである私たちが、それぞれの民族を中心に据えて仕事をすることについて。

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https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/061800329/

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