先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

白老の大須賀さん 伝統文化継承者に認定 アイヌ語教室主宰 9日から記念展

2024-03-09 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2024年3月8日 18:12

ウエペケレ(昔話)の翻訳本を手にする大須賀るえ子さん。企画展では、祖父宮本イカシマトクさんらの写真も並ぶ

 【白老】長年、町内でアイヌ語教室を主宰する大須賀るえ子さん(83)が、町指定無形民俗文化財の「伝統文化継承者」の認定を受けた。大須賀さんは「健康なうちはアイヌ語の物語のすばらしさを多くの人に伝えたい」と活動への思いを新たにしている。認定を記念した企画展が9日から、町内の仙台藩白老元陣屋資料館(陣屋町)で開かれる。

 大須賀さんは、白老村(現白老町)でクマ狩りの名人と呼ばれたアイヌ民族の宮本イカシマトクさんを祖父にもつ。苫小牧東高卒業後、民間企業をへて、22歳の時、町内で家族が営む民芸品店で働き始めた。1998年からは町内で「白老楽しく・やさしいアイヌ語教室」を主宰。会員とともに、「アイヌ神謡集」を書いた知里幸恵さんの伯母金成マツさんが残したウエペケレ(昔話)などの翻訳を続け、これまでに研究書を19冊刊行した。

・・・・・

 9日から仙台藩白老元陣屋資料館で開かれる企画展では、祖母宮本サキさんが残した着物のほか、金成マツさんによるウエペケレのノート原本4冊など約80点が並ぶ。月曜休館で31日まで。入館料は高校生以上300円、小中学生150円、町民は無料。初日の9日は午前10時半から大須賀さん自身による展示解説とカムイユカラ(神謡)の実演も行われる。問い合わせは同館、電話0144・85・2666へ。

☆ウエペケレのレとカムイユカラのラは小さい字

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/984988/


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<帯広十勝>早春の甘露 和田年正

2024-03-09 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2024年3月8日 11:47

 山菜にはまだ早いこの時季。自然の恵みで楽しみなのが樹液だ。

 アイヌ民族が「トペニ」(乳汁の木)と呼んだイタヤカエデ。本場のサトウカエデに比べると糖度は半分ほどだが、気温が氷点下とプラスを行き来するほんの一時期だけ、樹皮に穴を開けると、ほんのり甘みのある「甘露」が滴り落ちる。

 ・・・・・

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/984829/


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北海道博物館 学芸員ら一押し お宝収蔵品幅広く紹介

2024-03-09 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2024年3月8日 10:00

洋品店を営んでいたカメラ愛好家が撮影した8ミリフィルムとその映像

懐かしい札幌の映像 サケの模型など展示

【厚別区】北海道博物館(札幌市厚別町小野幌53)の特別展示室で、第21回企画テーマ展「森のちゃれんが宝箱―スタッフ一押しの収蔵資料や博物館活動を紹介する展覧会、いや、展乱会!?」が開かれています。学芸員と研究職員総勢32人がそれぞれコーナーを担当。展示チーフの池田貴夫学芸部長は「展示の仕方や内容など、一人一人の個性が出ています。博物館の活動とともに、スタッフの専門性についても知ってもらうきっかけになれば」と話します。

 蒸気機関車の安全を確かめる点検ハンマー、マキリ(小刀)で彫ったマキリ、道内の景勝地を描いた絵巻物、3千キロも海を旅して北海道に漂着した軽石―。展示品はバラエティーに富んでおり、プレートには通常は記載されない担当者の名前と一緒に、解説や選んだ理由などが明記されています。

 会場では、1930~50年代の札幌の風景を撮影した8ミリフィルムのデジタル映像を上映。にぎやかな雪まつりや師走の光景など、懐かしい映像が注目を集め、歴史研究グループの三浦泰之さんは「当時の人々の生き生きとした暮らしの様子が刻まれている」と話します。

 生活文化研究グループの尾曲香織さんは「これを見た職員たちが熱心に思い出を語った」という、狸小路の商店に飾られていたラジコン飛行機を展示。自然研究グループの水島未記さんはぬいぐるみの持つ可能性に注目しており、自身が監修した実物と同じ大きさ、重さのサケの布製レプリカを展示し、実際に重さを体感できるようにしています。

 調査研究のやり方、文献目録の作り方、博物館資料を虫から守る方法など普段私たちには見えない裏の仕事も解説。アイヌ民族文化研究センターの吉川佳見さんは、アイヌ語の音声資料の文字起こし作業を分かりやすく動画にまとめています。

・・・・・・

 4月7日までの午前9時半~午後4時半(入場は4時まで)。月曜休み。入場無料。3月20日午前11時と午後2時から「『すまい』を彩るタイル」と題したミュージアムトークを行います(無料、予約不要)。詳しくは電話011・898・0466へ。(谷織恵)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/984266/


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「アイヌへの差別扇動」と主張、女性アーティストが「人権侵犯」被害申立て「認められなくても一歩踏み出す」

2024-03-09 | アイヌ民族関連

弁護士ドットコム2024年03月08日 10時41分

マユンキキさん(2024年3月7日/弁護士ドットコム)

アイヌ民族への差別扇動にあたるような投稿がSNS上でされているとして、アイヌの伝統的な歌を歌う女性アーティストで、北海道在住のマユンキキさんが、人権侵犯の被害を法務局に申告した。マユンキキさんが3月7日、都内で記者会見を開いて明らかにした。

マユンキキさんは、投稿者が法務局による「任意の聴取」を受けなければ、「おそらく人権侵犯が認められることはないだろう」という見解を示した。それでも、人権侵犯の仕組みの問題を指摘するために声をあげたという。

●「ひどい罵りなくても、投稿がひどい差別を引き起こした」(マユンキキさん)

マユンキキさんによると、ことの発端は、衆院選などに立候補した元愛知県春日井市副市長の本間奈々さんの投稿だ。

本間さんは2023年11月、自身のXに、マユンキキさんの顔写真とともに「一般の人は刺青(タトゥー)を自費で彫ってますが、アイヌの場合は公費で補助しないとならないほど特殊な技術や材料が必要とされるのですか?」などと投稿した。

マユンキキさんは、この投稿をきっかけに、アイヌ民族への差別的な投稿が引用ポストなどで連なったと主張している。ほかにも、マユンキキさんの家族の名前なども明らかにした形で投稿が続いたという。

「とてもひどい言葉を使って罵っているわけではないが、影響を受けた方が、私の父や母など家族の写真をとてもひどい誹謗中傷とともにアップしていた」(マユンキキさん)

マユンキキさんは今年1月16日、本間さんのこのような投稿は「差別扇動」にあたるとして、札幌法務局に人権侵犯の被害を申告して、受理された。また、2月5日には札幌弁護士会に人権救済を申し立てた。

人権侵犯の被害については、札幌法務局から2月末に「調査することになった」と連絡があったという。

●「北海道で苦しむ人を減らしたい。認められなくても前例を作りたい」(マユンキキさん)

一方で、マユンキキさんは、法務局が人権侵犯を認めることはないだろうと考えている。

法務局は申立てを受理しても、相手方が任意の聞き取りに応じなければ、調査を実施しないのだという。

マユンキキさんを支援する佃克彦弁護士は「法務局として、相手方の言い分をきちんと聞き取れないと事実認定ができないので、相手方の協力がないと事実上、機能しない。制度自体が問題とも言える」と指摘した。

「『二次被害があります。それでもします?』と法務局の担当者から事前に言われています。そのシステムはおかしい」(マユンキキさん)

調査開始の連絡を最後に、マユンキキさんには、それ以降の情報は法務局から得られないという。とりわけ問題としているのは、相手方に任意の聴取がおこなわれたか、聴取に応じたかどうかもわからないことだ。わかるのは、人権侵犯が認定されたかどうかの結果だけだとしている。

相手方が聴取を拒否すれば、申立人の救済は実現されない。

自民党の杉田水脈衆院議員はアイヌ民族への差別的投稿をブログなどに投稿して、札幌法務局から昨年「人権侵犯」と認定された。この際、自身に対する聴取がなかったことを杉田氏が問題視。これを受けて、法務省が法務局に双方への聴取を厳格におこなうように通知したと報じられていた。

「実際に申立てをしたことによって、システムの問題もわかった。人権侵犯の認定が通ろうが、通らなかろうが、前例を一つ作りたい。誰かが立ち上がらないと。アイヌへの誹謗中傷は本当にひどいものがある。北海道で苦しむ人を少しでも減らしたい」

マユンキキさんによる動きについて、弁護士ドットコムニュースが見解を尋ねたところ、本間さんは3月8日、「法務局からの連絡は来ておりませんので仮の質問にはお答えできません」とメールで返答した。

https://www.bengo4.com/c_18/n_17307/


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アイヌの伝統を守り、新しい表現を探す 木彫り師の貝澤徹さん

2024-03-09 | アイヌ民族関連

時事通信2024年03月08日

 アイヌの伝統工芸が盛んな北海道平取町二風谷に生まれた貝澤徹さん。高校卒業後から木彫りの世界に進み、父親の店を受け継いだ。
 代表作の「アイデンティティ」シリーズは、アイヌとして日本人として、現代をどう生きるかを仲間に問い掛けた作品だ。アイヌの伝統技法や文様を用いた独創的な作品は国内外で評価されている。
 「同じ彫り師でも表現が変わるといろいろな作風になる」。依頼されたからには「この人に頼んでよかった」と思われる作品を作り続ける。インタビューは2023年7月に撮影。【時事通信映像センター】

https://www.jiji.com/jc/movie?p=j003024


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「カムイのうた」監督あいさつ 広島市中区の八丁座で3月16日

2024-03-09 | アイヌ民族関連

中國新聞2024/3/8(最終更新: 2024/3/8)

 アイヌ民族に伝わるカムイユカラ(神謡)を初めて日本語に翻訳した知里幸恵(1903~22年)を主人公のモデルにした映画「カムイのうた」。北海道東川町が企画し、札幌市出身の菅原浩志監督が脚本も手がけた。15日から公開する八丁座(広島市中区)では16日午前10時10分からの上映後、監督が舞台あいさつする。

残り304文字(全文:455文字)

このページは会員限定コンテンツです。

https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/435404


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町伝統文化継承者に大須賀さんを認定 アイヌ語方言研究を評価

2024-03-09 | アイヌ民族関連

室蘭民報2024/03/08 15:30白老

 白老町教育委員会は、町指定無形民俗文化財「町伝統文化継...

ここから先の閲覧は有料です。

https://www.muromin.jp/news.php?id=102536


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山崎賢人主演『ゴールデンカムイ』VFXメイキング公開 ヒグマとレタラの裏側明らかに

2024-03-09 | アイヌ民族関連

シネマカフェ3/8(金) 19:20配信

現在公開中の山崎賢人主演映画『ゴールデンカムイ』より、VFXメイキング映像がSNSに公開された。

【写真】山田杏奈演じるアイヌの少女・アシリパ『ゴールデンカムイ』

本作は、明治末期の北海道、莫大なアイヌの埋蔵金を巡る一攫千金ミステリーと、一癖も二癖もある魅力的なキャラクターたちが躍動するサバイバル・バトルアクション作品。

今回公開された映像は、山田杏奈演じるアイヌの少女・アシリパが、エゾオオカミのレタラをなでる様子や、迫力満点のヒグマの登場シーンなどが映し出され、リアルな生き物たちがどう作られていったのかが垣間見える。

この映像公開にファンからは「いやすごいなこれ」、「リアルな動きはこう作られていたのですね!」、「俳優さんも実際に居るかのように演じてるので凄いよね」、「こんなに段階踏んでるとは思わなかったすごい」、「ホンマにクマが怖すぎて、映画館で思わず【怖っ!!】って声出ちゃったもんな。ヒグマを見るだけでも価値あるよw レタラのモフモフ感も良かったなぁ」、「ヒグマ骨と筋肉の部位毎に動かしてたんか」などと感嘆の声が寄せられている。

『ゴールデンカムイ』は公開中。

※山崎賢人の「崎」は、正しくは「たつさき」

※アシリパの「リ」は小文字が正式表記

※レタラの「ラ」は小文字が正式表記

https://news.yahoo.co.jp/articles/c56c9e9124ff699dc899043d6a4cc581dc5e5413


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ゴールデンカムイ「アシㇼパの村」はどこにあるか

2024-03-09 | アイヌ民族関連

 東洋経済オンライン2024年3月8日 13時0分

累計2700万部(2024年2月現在)を突破し、2024年1月に実写版映画も公開された「ゴールデンカムイ」。同作でアイヌ文化に興味を抱いた方も多いはずです。そんな大人気作品のアイヌ語監修者である中川 裕さんが上梓した『ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化』では、物語全体を振り返りつつ、アイヌ文化について徹底解説しています。本書を一部抜粋・再構成し、お届けします。

本書のコラム⑤では、小樽市総合博物館の石川館長が、当時の砂金の採掘地からアシㇼパの村がどのあたりにあったのかを推測しています。

現地に関する相当深い知識がないとこのような考察はできないので、なるほどなるほどと感心して読んでしまいましたが、私の方はそれとは別の観点から、アシㇼパやフチたちが暮らしていた村について考えてみたいと思います。

村は深い山の中に位置している?

もとより、これは原作者である野田先生の意図を完全に無視していますので、何も真理に迫るものではありませんが、作中ではっきり言及されていないことをああでもないこうでもないと考察してみることは、ファンの特権であり醍醐味ですし、またそこに描かれているいろいろな事物の理解を深めるきっかけにもなりますので、あえて試みてみたいと思います。

5巻42話で、鶴見中尉の部隊を脱走してフチとアシㇼパの家で足の治療をしている谷垣のもとに、尾形上等兵と二階堂一等卒が姿を現します。ここから数話を使ってアシㇼパの村とその近くの山で尾形組と谷垣の攻防戦が繰り広げられますが、ここでの描写を見る限り村はけっこう深い山の中に位置しているように見えます。

一方、アシㇼパが杉元を連れて自分の村に帰って来た2巻11話では、家の後ろにかなり高いY字型のものが林立しているのが見えます。これは実は網の干し竿です。網といっても流し網漁に使うもので、二艘の舟の間にこの網を張って、魚を追い込んでいくためのものです。漁の後はこのY字型の竿の間に棒を渡して、そこに網を掛けて干しておくのですが、家の屋根と比べるとどう見ても4メートルぐらいの高さがありそうですね。

実はこの光景は、今ウポポイ(民族共生象徴空間)のある、白老という海岸近くの村の古い写真をモデルにして描かれたものです。白老川の河口付近での漁に使われるものですので、広い川幅に合わせて長い網が使われているわけですが、はっきり言って山の中の村にはふさわしくない光景です。

※外部配信先では画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

しかし、それでもそのように描かれている以上、それが両立するような場所を小樽に近いところで考えてみましょう。つまり、山の中でありながら川幅が4メートル以上あるような広い川が流れているところということです。

小樽近辺にはダムと川がある

とはいえ、あいにく私は小樽近辺の地形的な状況についてはあまりよく知らないので、グーグルマップを見てみると、JR小樽築港駅の東に朝里川という川が流れています。この川は比較的山奥の方から流れていて、上流には朝里川温泉があり、朝里ダムが作られています。

このあたりならば、かつて舟を二艘浮かべて流し網漁をするくらいの川幅があったかもしれません。そしてダムが作られて人造湖ができているということは、かつてここにアイヌのコタンがあったのだが、ダムによって湖の底に沈み、今はもうないという設定をすることもできるかもしれないなどと、適当なことを考えておりました。

ところが連載終了後、『週刊ヤングジャンプ』編集部から相談がありました。「コミックス最終巻の発売記念に、南の島で王様になったらしい白石から、抽選で白石の肖像入りのコインが入った手紙が届くという懸賞を行いたいと思っているのだが、その届け先をアシㇼパと杉元が暮らしているコタンにしたい。ついては『北海道小樽コタン』という宛先でよいと思うか」という相談です。

つまり、架空の住所として所番地まで書くわけにはいかないので、「小樽コタン」というおおざっぱな表記にしておいて、昔はそれで郵便が届いたのだということにしてよいかということなのですが、いくら昔でも小樽は大きな町です。そして「小樽コタン」では、やはりアシㇼパたちが小樽の町中に住んでいるように見えてしまいます。

ここに来て、アシㇼパたちの村がどこにあったのか、真面目に考えなければいけなくなってしまいました。しかし、まったく架空の地名を考えるのも、それはそれで大変なことです。そこで、アイヌ語地名というといつも頼りにしている山田秀三先生の『北海道の地名』を紐解いて「小樽市」という項目を見ると、次のように書かれていました。

「〔小樽の〕名のもとになった小樽内川は小樽郡と札幌郡(後には共に市)の境を流れていた川で、その川口は銭函の東、今は新川川口となっている処であった。そこは古く元禄郷帳(1700年)にも『おたる内』、同年蝦夷島絵図に『おたるない』と書かれた処で、当時アイヌのコタンがあって、和人もそこで漁場を開いていたものらしい。

後に運上屋を今の市街地内入船町に作り、小樽内川筋のアイヌをその周辺に移した。当初のうちは、当時の習慣で旧地の名をそのまま使って小樽内場所と称していたのであるが、後に下略して小樽と呼ぶようになった」(490頁)

つまり、今の小樽という名前のもとになったオタルナイという川が、もっとずっと東の方にあって、そこの住民が今の小樽市街に移されて、「オタル」という名前の元になったという話です。そしてオタルナイというコタン自体は、1700年にはその名前が確認されているものの、もうすでになくなっているということのようです。

コタン所在地(図:本書より引用。制作:MOTHER)

それならば、アシㇼパたちの村としてこのオタルナイという名前を拝借させてもらえれば、現在実在する地名ではないのでそこの人たちにも迷惑はかからず、しかも何も説明しなくても小樽の近くだということは感じられますので、ぴったりではないかと思って提案させてもらいました。このように、連載が終了してからはじめて、アシㇼパとフチ、そして杉元が暮らしているコタンの名前が決まったのです。ということで、白石から杉元に来た手紙の宛先は、オタルナイという地名になっています。

ダムでできた湖はオタルナイ湖と呼ばれていた

話はそれで終わりではありません。結局、最初に私が考えていた朝里川というのは関係なくなってしまったはずなのですが、その後であらためて地図を見ていると、例の朝里川のダムによってできた湖の名前が実はオタルナイ湖と呼ばれていることに気がつきました。

もちろんこれはダムによって人造湖ができた後につけられた名前です。しかし、かつてのオタルナイの住民の一部がここに移り住んで、もとの名前のオタルナイコタンを名乗っていたのだが、朝里ダムが1993年に竣工して湖の底に沈み、その村のことを記憶していた人たちによってオタルナイ湖と呼ばれるようになった……などと、勝手な想像をしてみてもいいと思いませんか?

(中川 裕 : 千葉大学文学部教授)

https://news.livedoor.com/article/detail/26009342/


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困窮する先住民の暮らしを救えるか?「昆布」が気候変動に苦しむアラスカの“救世主”になろうとしている

2024-03-09 | 先住民族関連

ワシントンポスト2024.3.9

養殖した昆布を水揚げする、シー・クエスター養殖場創業者のジョニー・アントニ(左)  Photo: Salwan Georges / Washington Post

地球温暖化が進み、従来作っていた農作物を作るのが難しくなるなど、人々の暮らしを支えてきた産業が各地で脅かされている。そんなアラスカで注目されるのが「昆布」の養殖だ。日本人の食生活に馴染みの深い海藻は、現在「スーパーフード」として世界から注目を集めているという。

デューン・ランカード(64)は、アラスカ南東部沖のシンプソン湾で刺し網漁船を走らせていた。海面には日光に照らされた浮標が広がっている。その水面下には2万平方メートルもの養殖場が広がっていた。

アラスカ先住民族である彼は、同地で数十年にわたって漁業を営んできた。同時に先住民による環境保全団体を運営し、約4000平方キロメートルの環境を守ってきた。しかし、アラスカではこれまで狩猟の対象としていた野生生物やサケの個体数が減少している。そこで彼は、昆布の養殖を始めた。

「当初は、海の酸性化と温暖化、海面上昇にどう対応していいかわからなかったんです。しかし、私たちは海と陸でものを育てなくてはいけないという考えに至りました」

長髪でやや白くなった髪をバンダナでまとめあげた彼はそう語った。

海藻や二枚貝の養殖業がいま、世界中で成長している。かつてはアジアに集中していたものの、近年では欧米でも拡大した。

気候変動による影響で、各地で従来作っていた作物を確保するのが難しくなるなか、海藻の可能性が注目されている。それは陸で育てられる作物の生産に比べ、二酸化炭素発生量がずっと少ないためだ。そのうえ栄養価は高く、食物繊維、オメガ3脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミンA・B・C・Eが豊富だ。多くの陸上作物のように肥料や添加物を必要とせず、成長する過程で窒素と炭素を吸収する。

海藻は、寿命の長い樹木のように二酸化炭素を吸収することはできない。しかし、海底に埋めれば炭素を貯蔵できるのではないかと研究する企業もある。家畜のメタン排出の削減、サラダのレタスに置き換えることで肥料に使われる化石燃料を削減するなど、さまざまな可能性が追求されている。

危機を救う新産業

アラスカでは、従来の農水産業の継続がほかの地域以上に困難と見られているため、昆布養殖業の可能性と、その必要性が強調されている。アラスカ先住民の多くは先祖伝来の土地を失い、原木の伐採もできなくなった。彼らは何世紀も海藻を採取してきたが、その養殖が経済的な機会となるかもしれない。

アラスカの冷たい海は、温暖化に伴って昆布養殖の次のフロンティアになるだろう。同州にはすでに大規模な事業者が誘致され、なかでもシーグローブ・ケルプ社は現在、米国最大の海藻養殖場となっている。他にもアラスカ、州外、国外の事業者が昆布の養殖場の設置を申請中だ。

海藻産業確立のため、アラスカは連邦政府から数千万ドルの資金を得ている。しかし、新しい作物のためにインフラを整え、市場を成長させるのは簡単ではない。その過程で海はより産業化され、沿岸部の海の利用にあたって競争が激化する可能性がある。前出のランカードは話す。

「昆布の養殖は限りある資源を採取するのではなく、修復、保全、緩和を基本とする最初の再生産業です。しかし、養殖業に対しては、アラスカ、米国、世界におけるきちんとした計画がなく、すでに問題が起きています」

ジョニー・アントニは、アラスカ南東部ジュノーそばに3万8000ドル(約5700万円)をかけて昆布の養殖場を建設した。

アントニとその共同事業者らは、昆布バーガーのような付加価値のある食品を販売したいと考えている。米国では海藻を食べる習慣がないため、事業化には工夫が必要だ。

彼が運営するシー・クエスター養殖場では、今シーズン、計3.6トンの昆布が水揚げされた。そのほとんどがジュノーを拠点とするバーナクル・フーズ社に売却された。バーナクルは、2016年にハイフェッツとその夫のマット・カーンが設立した食品メーカーだ。

「昆布を買おうとして私たちのところにくる人はいません。ほとんどの米国の消費者には、昆布は身近な食材ではないからでしょう」

そのため、同社は昆布を使った辛いソース、サルサ、ダークチョコレートなど、入口となる商品を開発している。

不透明すぎる先行き

シー・クエスターが現在売っているのは昆布だけだ。

アントニは生産規模拡大を目指しつつ、事業を継続させるためにいくつかの仕事でつなぎあわせてきた。この地域の昆布養殖家は熱意にあふれているが、現状では生産者を支援するための資金はあまりないそうだ。

「私は貯金をすべてつぎ込んでしまったのでとても大変です。うまくいくことを願っています」

世界的に見ても、海藻養殖の先行きは不透明だ。ベルギーから発信される海藻産業に関するニュースレター「フィコノミー」によると、海藻ビジネスを展開する公開企業は、2022年は前年より増加した。一方、これらの事業への投資総額は減少し、同期間で1億6000万ドル(約24億円)以上から1億2000万ドル(約18億円)に減った。

ヨーロッパの海の沿岸付近は多様な目的で使われているため、養殖場を作る場はなかなか見つからない。さらに沖合の海は風と波が強いため、養殖には適さない。一方、韓国では養殖業者の多くが協同組合に加わり、設備や販売で協力しているが、海水温の上昇という困難に直面している。

昆布は水揚げした後すぐに湯通しして冷凍するか、乾燥させる必要がある。ジュノー付近の養殖場であれば対応できる。しかし、アラスカの離れた地域に養殖場を作れば、加工工場も新たに作らなくてはいけない。

現在、昆布生産で全米をリードしているのは東海岸のニューイングランドだ。同地の養殖場は加工施設にも市場にも近い。

2017年に初めて水揚げした養殖場、コディアック・アイランド・サステナブル・シーウィードのCEOニック・マンジーニは言う。「とてもエキサイティングな産業で、可能性はたくさんあります。でも、アラスカではまだ誰も大規模にやっていません」

昆布養殖業を発展させるため、2022年、アラスカ海洋養殖クラスターは約4900万ドル(約73億円)の助成金を得た。同団体は助成金の半分を貧しい地域に、4分の1を先住民の地域に配分すると約束した。

アラスカではコストがより高いため、養殖場を経営して最初の数年で利益を上げるのは不可能に近い。

それでも「何十年にもわたってアラスカの主産業だった林業などが徐々に縮小しているため、昆布の養殖から収益と雇用を得られるようにしなければいけません」と前出のバーナクル・フーズに投資するシーラスカ社のアンソニー・マロット社長は話す。

しかし彼には懸念がある。「小規模の養殖がうまくいかないかもしれないという不安があります。今後養殖場がたくさんできてから失敗しないよう、いまのうちに確かめておきたいんです」

特にアラスカの先住民にとって、そのリスクは大きい。ランカードはイヤックとアサバスカン族の血を引くが、彼の民族は土地と資源の権利をめぐり、半世紀以上も州と連邦政府と対立してきた。

1989年、エクソンの原油タンカーがアラスカ南東部の沿岸部で座礁し、手つかずの海域が原油で汚染されるという事件が起きた。その後、ランカードは地元住民に対する10億ドル(約1500億円)の和解金の獲得を助けた。その資金がなければ、人々は生計を立てるために木をすべて伐採し、売っていただろう。

2003年、彼は「イヤック保全カウンシル」を設立し、同地域の手つかずの自然の保護に力を注いだ。彼にとって、昆布の養殖もその保護活動の延長にある。海を再び健康にし、先住民に食料安全保障を提供するものだからだ。

先住民族は守られない

一方、現在、アラスカでの養殖許可の審査において、先住民や州民に対する優遇措置はない。すでに商業漁業に携わる者や大規模な事業者に有利になるだろうと、ランカードは見ている。

「彼らには船があり、担保も知識もあります。アラスカ先住民の多くには30万ドル(約4500万円)もする船を購入するのも、許可証を申請するのも難しいです。先住民の私たちではうまくいかないように仕組まれているように思います」

アラスカの自然環境と先住民の生計向上を支援する非営利団体であるネイティブ・コンサーバンシーは、先住民の昆布養殖業者を支援している。そのために「オーシャンバック」というプログラムを立ち上げ、必要な許可や設備を取得するのを助けている。さらにより手頃な価格で船を得られるよう、造船事業も立ち上げた。このプログラムの終了までには、20ほどの先住民の昆布養殖業者が許可証を得られるだろう。

学ぶことも非常に多い。3年前、同プログラム・ディレクターのテシア・ボブリッキは「海藻について何も知りませんでした」と話す。現在、彼女は12メートルの輸送用コンテナを使って昆布の種苗を作ろうとしている。ジュノーの南のカケ島の人材に専門知識を教え、彼らが試験場と昆布の養殖場を開発できるようにする計画だ。

昆布の養殖は、自分たちの資源をコントロールするための手段をコミュニティに与えることだと考えている。「昆布が私たちを救ってくれるという期待が高まっています。ひとつの小さな種にプレッシャーをかけすぎていますね」

ランカードは、自分たちの10の試験場と養殖場が成功するかどうかはわからないと語る。しかし彼は、最近親友から買った漁船を「オーシャンバック」と改名するつもりだ。彼は、イヤック族が100年以上前に絶滅を免れるために隠れ住んだ「壁の穴」と呼ばれる入り江の近くで昆布を育てはじめた。

「いますぐ進化し、適応しなければ、チャンスはありません。私たちは何かをしていますが、まだうまくいくかはわかりません。何よりも大事なのは希望です」

https://courrier.jp/news/archives/357079/


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三井住友銀行とシティなど米4行、「エクエーター原則」脱退

2024-03-09 | 先住民族関連

オルタナ2024/03/08室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

三井住友銀行やシティなど米大手4行は3月6日、「エクエーター原則」からの脱退を表明した。同原則は、金融業界の「自主的ガイドライン」だが、国連PRI(国連責任原則)にも大きな影響を与えるなど、サステナブル金融における象徴的な存在だ。一方、5行離脱の背景には、米国で強まる「反ESG」の圧力があるとみられる。この事態に環境NGO5団体が早速、緊急の抗議声明を出した。(オルタナ編集長・森 摂、オルタナ総研フェロー・室井孝之)

エクエーター原則から離脱したのは、三井住友銀行のほか、シティ、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、JPモルガン・チェースの米大手4行。

同原則は2003年、シティグループや英バークレイズ銀行などが中心になって成立した。金融業界の「自主的ガイドライン」であるものの、2006年に成立した国連PRI(国連責任投資原則)にも大きな影響を与えるなど、「サステナブル(持続可能な金融」における象徴的な存在だ。

エクエーター原則は「ESGの原点」

国連PRIからはESG(環境・社会・ガバナンス)という概念も生まれており、極言すれば、エクエーター原則は、「ESGの原点」のような存在とも言える。

エクエーター原則の名称は、「北半球・南半球を問わず、グローバルに適用する原則」という意味を込めた。動詞としてのエクエイト(equate)には「基準に合わせる」という意味もある。

国内の金融機関では、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、農林中央金庫、日本生命、SBI新生銀行、信金中央金庫、日本政策投資銀行が加盟している。

同原則は、石油・ガスや鉱山の開発、発電所やダム、工場などの建設といった大規模開発プロジェクトへの融資の際に、環境・社会リスクを評価管理するよう求めるもの。

具体的には、「環境・社会アセスメント」「ステークホルダー・エンゲージメント」「苦情処理メカニズム」「情報開示と透明性」など10の原則から成り立つ。

オルタナ編集部は、三井住友銀行に脱退した理由と再加盟の条件などを聞いた。同行広報部の回答は下記の通り。

「今回、同原則を運営するエクエーター原則協会の組織再編に伴い、現時点でエクエーター原則協会メンバーでないことは事実です。将来、メンバーとなる可能性はあるが、現時点ではこれ以上のコメントは差し控えさせていただきます。 なお、サステナビリティ実現に向けた三井住友銀行のコミットメントに変更はなく、エクエーター原則が長年に渡り多くの金融機関によって支持されてきた信用力あるガイドラインである点は理解しております。 今後もエクエーター原則における理念を尊重しつつ環境社会リスク評価を実施していく予定としております」

5行の離脱には「もしトラ」も影響か

今回の5行離脱の背景には、この1~2年で急速に勢力を増している「反ESG」の圧力もあるとされる。特に共和党の有力候補であるトランプ前大統領やデサンティス・フロリダ州知事が「反ESG」の急先鋒だ。

共和党予備選挙のヤマ場であった「スーパーチューズデー」(3月5日)で圧勝した直後に5行離脱が明らかになっただけに、今後、大統領選の行方とともに反ESGがどう増幅していくのか、警戒する向きもある。

国際NGO、加盟する邦銀に脱退しないよう求める

国際環境NGO 350.org Japan、気候ネットワークなど5団体は6日、「三井住友銀行のエクエーター原則脱退に関する緊急抗議声明」を出した。

三井住友銀行はエクエーター原則からの離脱を発表した一方で、今も同行サイトでは「エクエーター原則の理念を尊重しつつ、環境社会リスク評価を実施し、評価結果をリスク管理プロセスに反映しております」と記載するなど、社内的な混乱も見せる。

NGO5団体は声明の中で、「同行がエクエーター原則を今後も遵守するかどうかは明確ではない。同行は、エクエーター原則を適用した事業について、毎年、情報公開を行ってきたが、同行が情報公開を継続するかどうか明らかではない」とした。

さらに、「同行などエクエーター原則加盟金融機関は同原則を必ずしも遵守してきたわけではない。石炭火力発電事業やガス採掘など、多くの事業で甚大な環境・社会・人権への負の影響が確認されてきた」とも声明では伝えている。

三井住友銀行に対してはエクエーター原則への再加盟を、加盟する他の邦銀に対しては、脱退しないことを要求した。

みずほ銀行の「エクエーター原則への取り組み」

一方、みずほ銀行はエクエーター原則を尊重する姿勢をウェブサイトで公表している。
(ここから引用)
みずほ銀行は責任ある投融資等に向けた取り組みの一環として、エクエーター原則を採択しています。エクエーター原則とは、金融機関が大規模な開発や建設を伴うプロジェクトに参加する場合に、当該プロジェクトが自然環境や地域社会に与える影響に十分配慮して実施されることを確認するための枠組みです。

みずほ銀行(旧みずほコーポレート銀行)は、2003年にアジアの金融機関として初めてエクエーター原則を採択しました。

みずほ銀行は、世界10社で組織される運営委員会のメンバーであるアジア・オセアニア地域代表を長年務めてきました。また2014年にはアジアの金融機関で初めてエクエーター原則協会の議長銀行を務めるなど、リーダーシップを発揮しています。

同原則に基づいた環境・社会デューデリジェンスを行うことで、融資先を含めた関係者・事業者への環境・社会リスクに関する理解と対策を促進し、金融機関の投融資に伴う社会的責任として、「資金の流れ」を環境・社会配慮の実現に向けることができると考えています。(引用終わり)

先住民族の生活を脅かしたダム建設が設立のきっかけ

エクエーター原則設立のきっかけは、1980年代インド中西部のナルマダ川でのダム建設、サルダル・サロバル・プロジェクトだ。

下流地域に電力と灌漑用水を供給するため、上流地域の先住民族20万人以上に十分な補償もなく立ち退かせ、彼らの生活を破壊し、国際的に厳しい批判を浴びた。

脱退した米4行は、脱退した理由について、「プロジェクト関連融資の環境・社会リスク評価に最善を尽くす意思に変わりはない」(シティ)とした。リスク管理の自主的な強化を継続するとコメントした。

https://www.alterna.co.jp/115869/


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【書評】台湾観光の「最後の聖地」屏東を徹底解剖する:一青妙・山脇りこ・大洞敦史著『旅する台湾 屏東』

2024-03-09 | 先住民族関連

ニッポン.コム2024.03.08

日本人とも歴史的に深い縁がありながら、情報が「空白」だった台湾・最南端、屏東。「国境の南」と台湾で呼ばれる地の多様な魅力をたっぷり紹介する1冊が、3人の作家によって刊行された。

われわれは、通常、台湾に入る時は、桃園空港から台北に向かうか、台北の松山空港を使う。短い日程ならば台湾北部しか訪れない。少しゆとりを持って、南部の高雄や台南を訪れることもあるだろう。台湾高鉄(新幹線)があるので、比較的便利に、台中、嘉義、台南、高雄の中南部を訪れることもできるようになった。高雄からさらに南に行く人は多くはないだろう。しかし、そこに屏東という場所があり、実は、台湾観光で注目を集めていることを日本人はあまり知らない。

そんな日本における屏東をめぐる情報の空白を埋めてくれる1冊が刊行された。それが本書「旅する台湾 屏東」である。

本書の特徴は、歴史・文化・食の3分野において、それぞれ専門的な知識を有する3人の作家が分担して執筆を行っているところにある。本書は、ガイド本ではあるがガイド本ではなく、旅エッセイではあるが旅エッセイでもない。その中間のような本である。歴史や人物を担当する作家の一青妙、食を担当する料理家の山脇りこ、文化を担当する作家・大洞敦史の3人が、それぞれ執筆に当たっている。

3人の視点やアプローチはもちろん異なっているが、共通するのは屏東という地の魅力を日本の読者に伝えたいという熱量である。

私自身、20年前ぐらいから屏東を訪れてきたが、イメージは先住民のパイワン族が多く暮らし、特産は玉ねぎやフルーツ、それから台湾で歴史的ヒットになった映画「海角七号」の舞台となったことぐらいだ。本書を読んで、屏東にはまだこれほどたくさんの魅力、活力がある場所だったのかと思い知らされた。すでに台湾情報がかなり詳しく行き渡った日本において、屏東は「最後の聖地」かもしれない。

本書について、編集部によるまえがきで、屏東は「最も台湾らしい場所」と述べている。それは屏東における多様な民族構成と関係している。

台湾の特色はしばしば「多様性」と強調される。それは、台湾がもとよりオーストロネシア系などの先住民が暮らしていた島に、漢人が移民し、その漢人も、福建系、客家系、そして戦後に国民党と共に渡ってきた中国各地からの外省人と呼ばれる人々が重なり、一種、民族・族群の見本市のような場所になっているからである。

ただ、実際のところ、例えば先住民は台湾東部の花蓮や台東に多く、客家は北部の桃園・新竹、福建系は南部の台南や高雄、外省人は台北などに集中している。それが屏東は歴史的な理由から、先住民、客家、福建系、外省人がそれぞれ一定数少ない割合で暮らしており、屏東に行くと、それらの多様性が一目瞭然に体験できる利点がある。

「屏東好味道(屏東は美味しい)」という言葉が台湾にあるように、多数の料理書の著書がある料理家・山脇りこがそうした屏東の味、素材、先鋭的な料理の数々を丁寧に取り上げている。

そんな屏東の魅力に台湾の人々も気づき始めて、すでに台湾では何年も前から屏東観光はブームになっており、ホテルなども予約がシーズンはなかなか取りづらくなっている。

本書で意外なところは、日本とのゆかりが深いところだ。日本時代に屏東は南部開発の拠点になり、軍事基地や捕虜収容所もあった。また、明治政府による初の海外派兵「台湾出兵」(1874年)の現場となったのは、本書でも紹介される名勝地・四重渓温泉からほど近い石門である。

そんな屏東で暮らしている魅力的な日本人たちが、人物描写では定評のある作家・一青妙による細やかなインタビューによって紹介されているのも見どころである。

屏東の各地を旅するようにして文化の豊かさを描き出す台南在住の作家・大洞敦史は「文化という資源が無尽蔵に眠るこの一大鉱床で、海・山・アート・客家という4つの鉱脈」を訪ねて歩いた。災害も多く、過疎化も深刻である屏東の各地においてそれでも文化を残し発展させようとする人々のエネルギーを感じさせる。

日本人が知らない、そして知るべき屏東という地。その魅力を伝える日本で初めての本であろう。詳細な参考情報や地図がついているのも親切。ガイドブックと旅エッセイの両方を兼ね備えたこの本を片手に屏東を訪れたくなる、そんな一冊だ。

『旅する台湾 屏東 あなたが知らない人・食・文化に出会う場所』

ウエッジ
発行日:2023年11月20日
四六判:287ページ
価格:2090円(税込み)
ISBN:978-4-86310-272-9

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/bg900526/


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ルイ・ヴィトンと「People For Wildlife」 オーストラリアの生物多様性を回復する活動を公開

2024-03-09 | 先住民族関連

AXIS 2024年3月8日 

ルイ・ヴィトンは、2023年より5年間にわたるグローバルな環境パートナーシップを締結した自然保護慈善団体 People For Wildlifeとの活動について、初年度のレビューを発表した。

このパートナーシップは、2030年までに500万ヘクタール分の動植物の生息地を回復させるというLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)の目標と、同年までに地球上の陸域や海洋・沿岸域、内陸水域の30%を保護するという生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)での合意に寄与するために結ばれたものである。

オーストラリア・ケアンズに拠点を置くPeople For Wildlifeは、生物多様性のある景観の保全・回復を行うとともに、さまざまな業界をリードする企業や先住民社会とパートナーシップを結び、地域社会の生計を支える自然素材のための持続可能なブティック・サプライチェーンを軸とした経済の構築を目指している。

両者は、豪クイーンズランド州のヨーク岬半島にある、40万ヘクタールの自然保護区内の生物多様性の回復に取り組んでいる。今回発表されたレビューによると、プロジェクトの出発点として、保護区内の生物多様性の現状を正確に評価するため、ベースライン測定基準の作成、モニタリング・システムの構築、最先端の科学的測定機器の配備を実現。効果的な保全管理と研究活動に不可欠である、遠隔地や困難な地形へのアクセスが可能となった。

これらの作業を通じて、カメラトラップによる広範囲かつ膨大な画像の収集が行われ、キノコとヘビの新種が発見された。また、保護区に精通する生物多様性や獣医学、防火管理、外来種管理、分子遺伝学などの専門家12名からなる専任チームの研究・環境保全活動を、安全かつ効率的に推進できるようにもなった。

そのほか、アプタマ地域の先住民やレンジャーたちとのワークショップを開催。防火管理計画の策定や希少な種の保全を行うとともに、食用となる新種のアンズタケの生産など、地域社会に貢献する天然素材の持続可能なビジネスモデルの共創も進めている。

https://www.axismag.jp/posts/2024/03/578316.html


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金子みすゞらの生涯描く 文学への情熱、朗読と歌で 舞台「いのちかけて」 川崎であす上演 /神奈川

2024-03-09 | アイヌ民族関連

毎日新聞2024/3/9 地方版 有料記事 588文字

 童謡詩人、金子みすゞ(1903~30年)ら、大正デモクラシーの時代に才能を開花させた3人の女性の生き方を描く舞台「いのちかけて」が10日、川崎市アートセンターアルテリオ小劇場(麻生区万福寺6)で上演される。

 劇作家、演出家のふじたあさやさん(90)の新作で、自身が芸術監督を務める同市の「劇団わが町」など、市民劇団のメンバーらと、劇団民芸の俳優、加來梨夏子さん、今野鶏三さんが出演する。

 文学少女だったみすゞは20歳のころから創作に打ち込み、みずみずしく豊かな作品を数多く紡いだ。だが、22歳で結婚した後は夫に詩作を禁じられ、一人娘が3歳の時に離婚。そして26歳で自ら命を絶った。舞台では、みすゞをはじめ、アララギ派の歌人の金田千鶴、アイヌ民族として文化の伝承に打ち込んだ知里(ちり)幸恵という、同時代を生きた3人の女性の苦悩や葛藤、文学への情熱を朗読と歌で表現する。

 ・・・・・・・

 午後1時と同5時の2回公演。一般4000円。問い合わせはNPO法人KAWASAKIアーツ(044・953・7652)。【明珍美紀】

https://mainichi.jp/articles/20240309/ddl/k14/040/116000c


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企画展「ジャッカ・ドフニ」高島屋史料館TOKYOで、サハリン少数民族にまつわる歴史や文化を紹介

2024-03-09 | 先住民族関連

ファッションプレス2024/3/9

企画展「ジャッカ・ドフニ 大切なものを収める家 サハリン少数民族ウイルタと『出会う』」が、日本橋の高島屋史料館TOKYOにて、2024年3月16日(土)から8月25日(日)まで開催される。

資料館「ジャッカ・ドフニ」の資料を東京で初公開

「ジャッカ・ドフニ」とは、北海道・網走にかつて存在した、サハリン少数民族の資料館だ。同館は、ウイルタをはじめ、ニブフ、樺太アイヌなど、サハリンに暮らした少数民族の生活文化を伝えてきたものの、2012年に閉館。その所蔵資料は、北海道立北方民族博物館に引き継がれることになった。

ポクト(衣服) 北海道立北方民族博物館蔵

撮影:城野誠治

企画展「ジャッカ・ドフニ 大切なものを収める家 サハリン少数民族ウイルタと『出会う』」は、ジャッカ・ドフニが所蔵していた資料を、東京で公開する初の展覧会。サハリン少数民族は、自らの意思とは無関係に、国境や国籍といった制度的枠組みに翻弄されてきた。本展は、こうしたサハリン少数民族の歴史や文化に光をあてる機会となる。

展覧会概要

企画展「ジャッカ・ドフニ 大切なものを収める家 サハリン少数民族ウイルタと『出会う』」
会期:2024年3月16日(土)〜8月25日(日)
会場:高島屋史料館TOKYO 4F 展示室
住所:東京都中央区日本橋2-4-1 日本橋高島屋S.C. 本館
開館時間:10:30〜19:30
休館日:月・火曜日(祝日の場合は開館)、8月21日(水・全館休業日)
入館料:無料
【問い合わせ先】
日本橋高島屋
TEL:03-3211-4111(代表)

https://www.fashion-press.net/news/116103


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