ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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鉱夫芸術2

2012-09-24 11:23:14 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「鉱夫芸術2」です。

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上の写真は、先日、石川県鉱物同好会の山本会長が店に置いて行った水晶や黄鉄鉱や黄銅鉱で作られた花瓶です。これはいわゆる「鉱夫芸術」という鉱夫が造ったものだと思います。

山本会長はリサイクルショップでこれを見つけて購入されたそうです。現在では大変珍しいもので、我々鉱物趣味の人間にとってはお宝だと思います。

問題はこの「鉱夫芸術」がどこで造られたのか?どこ産の鉱物で構成されたのか?です。花瓶に付いている水晶は熱水鉱床のものと思われますし、黄鉄鉱が美しすぎるのがチョッと気になりますが、かつての尾小屋鉱山産の黄鉄鉱もこれらに似ていたそうなので、もしかすると尾小屋鉱山の鉱夫の作品の可能性もあります。もしそうだとすると我々にとっては非常に貴重なお宝です。さすが!山本会長!と言いたくなります。

ただし、まだ確定はできません。

Webで「鉱夫芸術」を調べていて、「東北の鉱山はパイプを芯にした花瓶が多く・・・」という記述がありました。この花瓶はビール瓶か?何かのガラス瓶を芯にしてコンクリートで固めてあり、東北の鉱山的な気配も感じます。かつての鉱山稼働時代には東北の鉱夫たちとの行き来もあったらしいので、そういう可能性も考えられますが、よく分かりません。

本当は花瓶に付けてある鉱物から鑑定できれば良いのでしょうが、完全な同定は難しいと思います。

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もうひとつ「鉱夫芸術」の花瓶です。これは石川県鉱物同好会の第一回総会の時にSさんが持ってきた水晶が張り付けてある花瓶です。こちらは瀬戸物の花瓶そのものに張り付けて造ってあり、山本会長の花瓶とは造りが違います。この花瓶のいわれは知らないのですが、焼物的な雰囲気から何となく地場産の気配が感じられます。

これらの「鉱夫芸術」はその存在そのものが大変珍しく、貴重なものだと思います。

遊泉寺銅山や尾小屋鉱山が現役だった頃には、恐らく、このような「鉱夫芸術」は数多く造られていたのでしょう。それらはどこに行ったのでしょうか?多くのものは捨てられてしまったのでしょう。ただ幸運にも、こうして残っているものもあるのです。我々にはそれらを探し出し保存する義務があると思います。

リサイクルショップや骨董市等はそれらのようなお宝を探し出すチャンスがあるかも知れません。

それらを探す事は、古書店でお宝本を探す作業に似て楽しい事だと思います。そこには発見の喜びがあります。それは鉱物採集にも似た楽しさがあると思います。

最初の写真の山本会長の「鉱夫芸術・花瓶」は現在「石の華」に置いてあります。もちろん非売品ですが、いつでも見る事はできます。是非、ご覧ください。

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石川県鉱物同好会 第2回採集会 下見

2012-09-23 11:32:50 | 日記・エッセイ・コラム

昨日は遊泉寺銅山跡に行って来ました。石川県鉱物同好会の第2回採集会の候補地への下見です。

当初は能登方面への採集会も考えましたが、能登方面の採集地の情報不足と、第1回採集会で行きそびれた近場の採集地では遊泉寺銅山跡は外せない、という事で行って参りました。

実は、遊泉寺銅山跡に行くのには訳があります。先週の日曜日に新会員が入会しました。和歌山在住のTさんです。Tさんはこのエリアの産地にはこれまでも何度も来られており、産地情報にも詳しく、採集の実績もしっかりお持ちの方です。

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この写真はTさんが昨年の5月に採集された遊泉寺銅山の水晶の群晶です。

これを見て驚きました。今でもこのような水晶の群晶が採れるのです。

昨日は河合副会長、若手のNさん、そして再度、和歌山からいらっしゃったTさんを含め総勢4名で下見に行きました。

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坑道を調査する河合副会長

上の写真は現地にいくつか残っていた試掘坑?とそれらの一部を調査している河合副会長です。どうも我々は穴があったら入りたくなる人種のようです。

昨日は当然の事ながら、穴の中には入りませんでした。採集会でも穴には入りません。近辺のズリ場での採集です。ズリでは細かい水晶の欠片が一帯に散らばって落ちていました。

昨日は本格的な採集ではなく、採集会の下見としての産状調査でしたので、収穫はさほどありませんでした。幾つかのズリ場を確認して、採集会は可能だと判断しました。

後日、山本会長に報告して、採集日程、等々を決めたいと思います。

昨日は午前中で下見を切り上げ、お昼は「生雲」でそばを食べました。「生雲」は山の山頂にある施設で、すばらしい眺望で有名なところです。昨日は天気も良く、白山から日本海まで良く見えました。駐車場には他県ナンバーの車もあり、観光スポットになっているようでした。

午後は近くの菩提で瑪瑙を探し、私は少し早めに別れ、夕方にはお店に戻りました。

第2回採集会は詳細が決まりましたら会員各位にはご連絡します。

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玉虫色

2012-09-21 13:01:37 | 日記・エッセイ・コラム

ここ数日、「曜変天目」について書いてきました。「曜変天目」の魅力は何と言ってもその玉虫色にあると思います。

今日は「玉虫色」です。玉虫色は光の干渉によって起こる変化する色彩の事です。その色は構造色の一種である事は分かっていますが、その原理が分かっていても、その不思議な色ではない色に魅了されます。

玉虫色で有名なのは法隆寺の玉虫厨子だと思いますが、残念ながら私はまだそれを見ておりません。螺鈿を使った調度品なら、これまでに幾つも見た事がありますが、玉虫厨子の玉虫色はどのように見えるのか、いつか見てみたいと思っております。

玉虫色は「曜変天目」以外の陶磁器にも見られます。すぐに思いつくのはラスター彩でしょうか。ラスター彩と言えば、やはり加藤卓男さんを思い出します。岐阜県の幸兵衛窯には古陶磁資料館があり加藤卓男さんが研究したペルシャ陶器のラスター彩や加藤卓男さんが再現したラスター彩も展示してありました。私も名古屋にいた頃に見に行きました。陶器の表面に現れる金属的な光沢と、光の角度によって変化する玉虫色には魅了されました。

陶磁器にはラスター彩以外にも玉虫色に変化するものがあります。

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ハンガリー ジョルナイ製 エオシン釉の花瓶

これは並行輸入で入手したジョルナイのエオシン釉の花瓶です。その不思議な金属的な光沢で光の加減で輝きが変化する様はラスター彩と共通します。このエオシン釉はジョルナイ工房が1893年に開発しております。名前の由来はギリシア語で「暁」を意味する「エオス」から来ています。エオシン釉独特の光沢を放っています。

私がこのエオシン釉の存在を知ったのは数年前にBSジャパンで放送された「ハンガリー陶磁器紀行」という番組でした。その番組に出てくるペーチの「ジョルナイの泉」は印象的でした。そこには玉虫色に輝く雄羊の頭が四方向に付けられ、それぞれの口から水が出ていました。雄羊の頭は光の方向で様々な色に変化して見えていました。

ハンガリーでは「ジョルナイの泉」以外にも色んな所でエオシン釉が使われているようです。特にエオシンの殿堂と言われている国立リスト音楽院は圧巻です。アール・ヌーヴォー様式とエオシン釉のコラボレーションはハンガリー建築の傑作と称されています。

玉虫色の工芸品はティファニーのガラス工芸にも見受けられます。ガラスに関しては「虹色ガラス」の話題の時に少し書きました。

玉虫色は時代や洋の東西を問わず人々を魅惑し続けています。鉱物のオパールやレインボーガーネットやレインボー水晶のように人々を魅了する何かを持っていると思います。

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曜変天目3

2012-09-20 11:42:47 | 日記・エッセイ・コラム

今朝、店のパソコンのメールを見ると、先日の「曜変天目」のブログでお名前を出した古橋尚さんからの御伝言というメールが入っており、長江惣吉さんからのうれしいメッセージが書いてありました。長江さん、ありがとうございます。

その中には、先日の「曜変天目2」で書いた特許のサイトにあった「長江秀利」さんは、やはり「長江惣吉」さんご本人であった事が書いてありました。「長江惣吉」さんは代々の襲名で仕事上ではそう名乗っていらっしゃるのですが、特許申請では戸籍上の名前でなくてはいけないので、そうされたそうです。

それから、もうひとつ気付きました。どうもYouTubeで見る事のできる長江惣吉さんの曜変天目の映像は古橋尚さんの映像のようです。皆さん、是非、その極彩色の映像もご覧下さい。長江惣吉さんの曜変のすばらしさを実感することが出来ると思います。

「曜変天目」の美は写真では伝わりません。その美は静止したものではなく、それを目にした鑑賞者と光源との間で刻々と変化していく美だからです。それは立体的であり、さらに変化する時間も係る4次元的な美なのです。その美を体感するには、それを直に手に取って眺めるか、もしくは動画的な映像を見る事に因って疑似体験する、必要があります。そういう意味でYouTubeのような映像的疑似体験はその美を鑑賞する有効な手段だと思います。

「曜変天目」、良質なノーブル・オパールにも似た魅力的な存在です。やはり鉱物趣味に通じるものを感じてしまいます。

そういえば、桶谷寧さんという陶芸家がいらっしゃるのですが、その桶谷寧さんの個展に行った事があります。3年前の名古屋の丸栄美術画廊で行われた「曜変天目」の時です。その時のパンフレットに面白い事が書いてありました。

陶磁とは、「石」が自然風化したものを、人の力と灼熱により、再び「石」にもどすという作業の結果であると、私は考えております。桶谷寧

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ミルククラウン

2012-09-18 11:50:24 | 日記・エッセイ・コラム

昨日は体調不良で、ブログ更新を休みました。お休みしてもアクセク件数が落ちませんでした。アクセクして下さった皆様、すいませんでした。

今日のタイトルは「ミルククラウン」です。「ミルククラウン」はご存知のようにミルクの滴を垂らした時に出来る王冠状の形態の事ですが、その美しいミリ秒の世界には魅了されてしまいます。

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アメリカ ユタ州 産 水晶(Quartz)

この写真はミルククラウンの一瞬の形状に似ている水晶の群晶です。それは石の華でもあります。ミルククラウンの形状も花のような美しさがあります。実際のミルククラウン現象はつい見逃してしまうほどの一瞬に起こっている連続した形状変化に面白みがあるのですが、そのような映像的な印象を受けてしまいます。水晶の形態にミリ秒の世界のドラマを見る、これも鉱物的イマジネーションの楽しみのひとつです。

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純度99.92%のニッケル(Ni)

この写真は元素コレクターの集めそうなアイテムのひとつで、ニッケルの人工結晶です。何となくミルククラウン現象の一瞬の形状に似ています。実は「世界で一番美しい元素図鑑」(セオドア・グレイ著 創元社)のコバルトのページに、この写真とそっくりな写真が載っています。その写真には「ボタン形のコバルト。電気めっきを長時間して得られる。」、とあります。このニッケルの人工結晶もそのようにして造られたのだろうと思います。確かにコバルト(27)とニッケル(28)は元素番号は隣り合わせです。両者の化学的性質も似ています。形状が似ているとその本質も似るという「相似率」を思い出してしまいます。

先日、お店にいつも来る小学三年生のお客さんが「世界で一番美しい元素図鑑」を読んでいると彼のお母さんがおっしゃっていました。驚きでした!アンファンテリブル!最近の小学生はスゴイ!の一言です。末恐ろしい事です。彼らが大人になる頃の鉱物趣味の世界はどう進化しているのか?気になります。


世界で一番美しい元素図鑑
セオドア・グレイ
創元社
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