事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「あしたのジョー」 2R

2008-02-17 | アニメ・コミック・ゲーム

ラウンド1はこちら。Ashitanojoe

 かの有名な「あしたのジョー」の最終回、原作者の高森朝雄(=梶原一騎)は、実はこう書いたのだ。

[ホセ・メンドーサに敗れ]うなだれたジョーに、段平が言っていた。『お前は試合には負けたが、ケンカには勝ったんだ』
ジョーが、白木邸で葉子と一緒にぼんやりとひなたぼっこしている。彼が廃人になってしまったかどうかは定かではない。葉子は微笑んでいる。二人とも幸せそうだ……

 でも作画のちばてつやは納得せず、呻吟の末にあのラスト(真っ白い灰になる)になった。酒田のデパートに入っていた本屋でその最終話を立ち読みしたわたしは、「あ、死んだんだな。」とそのとき軽く納得していたが、果たしてジョーはほんとうに死んだのだろうか。マンガ読み巧者の夏目房之介(ご存知、漱石の孫)がちばにインタビューしている。

夏目:日本のマンガは右から左に読んで話が進みますから、時間は右→左に向かう。だから敵は左にいる。左はマンガの中で『未来』なんですね。丈は負けて、生きてるのか死んでるのかわかんないけど、顔を未来に向けてるんです。無意識に描かれたんでしょうけど、それがこの場面を名作のラストたらしめたと思ってるんです。
ちば:ホセは未来になる……。なるほど、そこまで計算してたわけじゃないけど。
夏目:『ジョー』が終わって、周囲の反応なんかはいかがでしたか?
ちば:僕はなるべく聞かないようにしてましたね。もう終わってホッとして、本当に僕も燃えつきた気がした。描いてる二日間は眠れなかったけど(笑)。担当者はネーム読んで「うまいですっ!」っていってくれたし、梶原さんも、どこかで会ったときに「いいラストを描いてくれて、ありがとう」っていってくださった。

さてあなたは、矢吹丈は果たして死んだとお考えだろうか。わたしは……

次回はマン好きレス特集

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「あしたのジョー」 1R

2008-02-17 | アニメ・コミック・ゲーム

巨人の星」篇はこちら。Joe01

1969年、深夜の少年マガジン編集部に一人の中年男がふらりと入ってきてこう言った。
「毎週マガジンを買っているんだが、書店も閉まって、今週号を買えなかった。売ってもらえないだろうか」
困惑する編集部員たち。だがその男を顔を見て副編集長は飛び出した。男は故・三島由紀夫だったのである。毎週『あしたのジョー』を楽しみに読んでいるという。代金を払おうとする三島に副編集長は「編集部では受け取れませんから」と進呈した。

文学コンプレックスが強かっただろう原作者の梶原一騎は、この話を聞いて感無量だったそうだ。翌年、激闘の末、力石が死に、11月、三島は自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺をとげる……

「巨人の星」とほぼ同時期に連載され、今も並べて賞揚されることの多い「あしたのジョー」だが、実は売り上げ的には「巨人の星」の方が圧倒的に大きく、マガジンの部数拡大に貢献したのも「巨人~」の方だったと言われている。それではなぜ「あしたのジョー」は伝説になれたのか。

 連載後期にやっとリアルタイムで読むようになった世代のわたしは、力石の死に衝撃を受けたわけではない。今なら減量に苦しんだ力石にはへルシアをおすすめするが。でも寺山修司が力石の葬儀を主催したり、よど号ハイジャック犯たちが「われわれは『あしたのジョー』である」と声明を出したりしたように、当時の世相と「あしたのジョー」は分かちがたく存在している。そして1973年、あの最終回が掲載されるのだが……以下第2ラウンドへ。

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「巨人の星」 第4球

2008-02-17 | アニメ・コミック・ゲーム

前号繰越Hanagata01

 魔球大リーグボールは3号まである。
 うなりをあげてキャッチャーミットに突きささる速球と(でもワインドアップに入ってからミットに届くまで一週間もかかったりする)、こどもの頃から壁にあいた小さな穴を通す抜群のコントロール(ほいでボールは庭の木に当たってそのまま返ってくるのだ。物理的にありえないってば)がありながら、なにゆえに星飛雄馬は大リーグボールを生み出さなければならなかったか。

 前述したように、身体が小さかったため(こどもに大リーグボール養成ギブスなんかはめて固めるからだ!)“球質が軽い”からである。これはしかしよく考えた理屈だと思う。花形満や左門豊作、そして親友の伴宙太というお兄ちゃんキャラに囲まれていたせいで、作画上飛雄馬は小男に描かれることが多かった。そのことがこの絶妙な設定を生んだのだろう。これは、同じ梶原原作の「あしたのジョー」において、ちばてつやが力石を大男に描いてしまったために、例の減量苦→力石の死という名場面につながったエピソードに近い。

 それはともかく大リーグボール。
1号は、打者の心理を読み、バットの動く方向を予測し、そのバットを狙って投げてボテボテのゴロにするほとんどオカルトボール

2号は、走者の恐怖心を煽る父親の魔送球をアレンジし、マウンドではね上げた土煙と、ボール自体がバッターボックス直前で巻きあげる土煙によってボールを見失わせる“消える魔球”。

3号は、のちに左門豊作の奥さんになる不良のお京さんが、欠けた指(笑)で投げたリンゴにヒントをえて考案した、ボールがバットを避ける魔球。飛雄馬の腕の筋肉はこの魔球のせいで断裂する。

……みんな無茶である。だけど、これが少年マンガの王道だ。そしてこの「巨人の星」によって、読売ジャイアンツは子どもたちにとって特別な存在たりえたというのに……この名作アニメにナベツネが登場しなかっただけでもラッキーだったと言っておこうか。

次回からは「あしたのジョー」に突入。

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「巨人の星」 第3球

2008-02-17 | アニメ・コミック・ゲーム

前号繰越Ozma

 それでは恥ずかしいけど「早回し巨人の星」はこんな感じだった。

お決まりの一徹と飛雄馬のうさぎ跳び。
「飛雄馬!」
「とうちゃん!」
意味無く木陰で涙を流しながら見つめる明子ねえちゃん「飛雄馬……」
海岸で飛雄馬に究極のセリフを突きつける恋人美奈。
「あなたに巨人の星があるように、わたしにも死の星があるわ……」
美奈さん!」(これ、どう聞いても“皆さん”になるのね)
「一方その頃アームストロング・オズマはっ!」ランニングマシーンで全力疾走するオズマ(これ、わたしの役)。
「ママ……待ってて!」

見てない人にはなんのことやらさっぱりなシーンの連続。おそらく全国の居酒屋では、学生たちが同じようなネタで笑いをとっていたのだろう。それだけ、濃かったのである。

 オンエア当時こどもだったわたしは、実直なライバル左門豊作がなにゆえにお京さん(さすがにその頃でも古くさすぎる名前だった)という不良に魅かれるのかわからなかったし(今はよーくわかります)、息子を鍛え上げることが自己目的化し、中日のコーチとなって、結果的には飛雄馬の野球生命を絶ってしまう星一徹という存在はあまりにも哀しかった。そんな色濃いドラマではあったものの、全国のガキどもを熱狂させたのは、やはり「大リーグボール」という存在ゆえだ。以下次号

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