ラウンド1はこちら。
かの有名な「あしたのジョー」の最終回、原作者の高森朝雄(=梶原一騎)は、実はこう書いたのだ。
[ホセ・メンドーサに敗れ]うなだれたジョーに、段平が言っていた。『お前は試合には負けたが、ケンカには勝ったんだ』
ジョーが、白木邸で葉子と一緒にぼんやりとひなたぼっこしている。彼が廃人になってしまったかどうかは定かではない。葉子は微笑んでいる。二人とも幸せそうだ……
でも作画のちばてつやは納得せず、呻吟の末にあのラスト(真っ白い灰になる)になった。酒田のデパートに入っていた本屋でその最終話を立ち読みしたわたしは、「あ、死んだんだな。」とそのとき軽く納得していたが、果たしてジョーはほんとうに死んだのだろうか。マンガ読み巧者の夏目房之介(ご存知、漱石の孫)がちばにインタビューしている。
夏目:日本のマンガは右から左に読んで話が進みますから、時間は右→左に向かう。だから敵は左にいる。左はマンガの中で『未来』なんですね。丈は負けて、生きてるのか死んでるのかわかんないけど、顔を未来に向けてるんです。無意識に描かれたんでしょうけど、それがこの場面を名作のラストたらしめたと思ってるんです。
ちば:ホセは未来になる……。なるほど、そこまで計算してたわけじゃないけど。
夏目:『ジョー』が終わって、周囲の反応なんかはいかがでしたか?
ちば:僕はなるべく聞かないようにしてましたね。もう終わってホッとして、本当に僕も燃えつきた気がした。描いてる二日間は眠れなかったけど(笑)。担当者はネーム読んで「うまいですっ!」っていってくれたし、梶原さんも、どこかで会ったときに「いいラストを描いてくれて、ありがとう」っていってくださった。
さてあなたは、矢吹丈は果たして死んだとお考えだろうか。わたしは……
次回はマン好きレス特集。