結婚すれば婚姻届を出し、子どもができれば名前をつけて出生届を役所へ。予防接種を受けさせ、就学年齢がくれば学校に入れる。身仕度のために三角巾を作ってやったりする。税金を納め、家族が死ねば死亡届を出し、葬式を行い、相続や法事に頭を痛める……
社会人なら誰でもやっていることだし、当然のことだ。当然のことではあるけれど、でもこれって大変なことなんじゃないか。「誰でもやっているから」仕方なくやっているのではないだろうか。第一、ほんとうにみんなこんなことをキチンとこなしているのか?
母親が四人の子どもを残して失踪し、子どもたちは都会の真ん中で自分たちだけで生き続ける……泣かせが苦手なわたしとしては、むしろ敬遠したくなるタイプの映画。でも監督は「ワンダフルライフ」で冴えたところを見せた是枝裕和だし、「スウィングガールズ」を観たがる妻を説得してこちらを選択。
モデルとなった実際の事件の方はもっと陰惨な話のようだが、この映画には一種の救いが見える。兄妹四人の生活は、確かに苦しくはあるだろう。でもそれなりに楽しかったのではないか、とする是枝の視点は正しいと思う。その証拠に、彼らの部屋に入り込む兄の友人や大家などは、観客にとってはっきりと“異物”に感じられるほどだから。
「あたし、カンヌ女優じゃん!」とさんまの番組でギャグ(事実そのとおりなのだが)をとばしたYOUが、無責任だが憎めない母親を演じて出色。社会人として欠格していることがそんなに悪いことなのか、とまで感じさせてくれる。
見終わってからの方がしみ入る映画。あの兄妹は、今どうしているのだろうと劇場を出てからも頭から離れない。実話であること以上に、是枝が口伝えで子どもたちにセリフを言わせた(めちゃめちゃにフィルムを消費したろう)およそ劇的なるものと無縁な作りがそうさせたのかもしれない。帰ってから、いつもなら没入するであろう達者な某映画をDVDで観ようとしたが、どうしても“嘘”が感じられてギブアップ。大嘘なのは「誰も知らない」の方かも知れないのに。おそるべし是枝。そしておそるべし子役たち!
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