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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「昭和の劇」 その4~天皇

2008-02-02 | 本と雑誌

前号繰越203

笠原は多くの戦争映画の脚本も書いている。「二百三高地」(※)「日本海大海戦 海ゆかば」で日露戦争。「あゝ決戦航空隊」「大日本帝国」「零戦燃ゆ」などで太平洋戦争。海軍出身であり、徹底した取材魔でもある彼は、やくざやテロリストといった歴史の暗部に関わる人間たちから話を聞くうちに、独自の歴史観を確立する。そしてその大きな部分は「天皇」への強烈な思いだ。

※笠原:(主題歌の『防人の詩』について)さだまさしを使うというのは誰が言いだしたのかな……山本直純かな?でも、詩を読んでもよくわからないんだな。「海は死にますか、山は死にますか」って死ぬわけないじゃないかって思ったんだけど、これが大ヒットしたんだ(笑)
……笠原は擁護するけれど、乃木はやっぱり無能でしょう。

例えば、特攻の生みの親と言われる大西瀧治郎の二千万人特攻論について、あの児玉誉士夫(ロッキード事件でおなじみ。右翼の巨頭)から真意を探っている。

笠原:結局、大西さんの二千万人特攻論というのは、天皇に死んでくれということなんですよね。表向きには言えないから二千万人特攻だと言っているけど、そうなった時には天皇陛下自ら玉砕していただいて、最高司令部の全員が特攻機に乗り込んで突っ込むと。そうしなければ、たとえ敗れたとしても日本は絶対にいい形では蘇らないと。一遍、古いやつが死んでしまわなければダメなんだというのが大西さんの悲願だったんだね。

……まるで国体明徴運動だ。逆に、明治以降の日本は軍隊を近代化することができず、「天皇の私兵」として統御するしかなかったから、降伏のタイミングを失い、玉砕に向かって突き進むしかなかったのだと笠原は結論づける。

笠原:そういった、どんどん悪化していく状況の中にあって、なぜ、日本は戦争を続けたのか。その段階でもう日本が勝つ見込みは100%なかった。それなのに最高戦争指導会議は、なぜ戦争を継続したのか。天皇なんだよ。
国体護持ということですか?
笠原:そう。そのためにアメリカとは何の交渉もせず、とにかく徹底抗戦するというだけの話なんだよ。結果、敗戦となるまでの間に特攻隊とか空襲、原爆で日本人は相当死んでいる。それは全部、国体護持……つまり裕仁を天皇の座に置くということのためにのみ、そうなっていたんだよ。それは天皇制のヒエラルキーに入っている上流階級がね……上流階級は、天皇制がなくなったら自分たちの権益をすべて失っちゃうわけだからね、位から財産からすべて。で、当時、アメリカの世論調査では80%の人が天皇を銃殺すべきだと言ってますからね。そういう情報も入ってきてるから、上流階級としては国体護持が第一だということで終戦を延ばしに延ばしていたんですけど、結局、そのために何十万という人が死んでいったわけですよ。だから裕仁が個人で何を考えていようとも、あの人は第一級の戦犯ですよ。これは間違いなく戦犯です。
Akihito  -戦後、何度か天皇退位説が出ていますけども、笠原さんから見ると、天皇はどういう責任をとったらよかったとお考えですか?
笠原:いや、やめるべきでしたね。
-最低限、退位すべきだったと。
笠原:ええ、最低ね。できれば自決してほしかったですね。
-まあ、歴代の天皇で、戦争責任をとっていないのは昭和天皇だけですよね。

……長々と引用したのは、この構図って今でも生きているんじゃないかと思ったから。この日本でも、イラクでも、そしてご近所のあの国でも。既得権益の問題とか、アメリカが指導者の銃殺を求めている姿勢とかね。

 おそらく今の日本で最大のタブーは北朝鮮拉致関係になっているんだと思う。しかし“ご家族”への同情をテコにこの国をどこかへ引っぱっていこうとしている勢力には、やはりキチンとした批判を加えなければ。

 だいたい、著作権だの放映権料の問題もあるだろうに北朝鮮の“異様な”映像を日本のテレビは「どうです?変な国でしょう?」といった具合に流している。でも、あの異様さを戦前の日本が同様に持っていたということをどうして誰も指摘しないのだろう。キム・ジョンイルの両手を叩くあのしぐさに、ヒロヒトの右手をあげる姿を重ね合わせる人間の声が聞こえてこないのはなぜなんだ。

 出来上がった映画が右翼的である笠原が昭和天皇の退位を願い、左翼が天皇制にむしろ寛容になっているねじれと共に、この国は未だに天皇の呪縛から離れられないでいる。あ、その裕仁の出自についてのとんでもないネタに入る前にこんなにスペースをくってしまった。以下、次号

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「昭和の劇」 その3~仁義なき戦い

2008-02-02 | 本と雑誌

Jinnginakitatakai01 前号繰越。「仁義なき戦い」(昭和48年 東映)
深作欣二監督 笠原和夫脚本 飯干晃一原作

 われながら単純だと思うけれど、「昭和の劇」を読み終えてから、とりあえず笠原和夫脚本の映画をビデオ屋に走って何本か借りて続けざまに観ることにした。一発目の「仁義なき戦い」では、最初観たときにはよく理解できなかった広島やくざ抗争が(事実、笠原も「どっちがどっちに殴り込んでいるかわからなくなって(笑)」観客にはわかりづらいだろう、しかしそれでもかまわなかったと述懐している)、詳細な解説を読んだこともあってアウトラインをつかむことができた。要するに戦後のどさくさに紛れてのし上がった新興やくざたちが、山口組との確執のなかでどう消長していくか、だったのだ。呉や広島の市民は「ああ、あれが山村さん(劇中では山守)の組ね」なんて感じで観ていたろうし、全国のその『業界』の方々にとっては、こりゃ最高の映画だったろう。それにしても恐ろしいほどの迫力。深作とのコンビが最強だったことがよく感得できた。

 この映画は当時のベストテンに入ったり、それなりの評価を得たわけだけれど、それまでのやくざ映画は文字通り日陰の存在で、評論家はほとんど誰も相手にしていなかった。教条的左翼である猪俣勝人など、「(高倉健や東映の連中の)顔が次第にその筋の人間に似てきて」不快だったと映画史に記述していたぐらい。しかしこの流れを変えたのはなんと三島由紀夫

Soutyoutobaku  【私は、『総長賭博』を見た。そして甚だ感心した。これは何の誇張もなしに「名画」だと思った。(略)何という絶対的肯定の中にギリギリに仕組まれた悲劇であろう。しかも、その悲劇は何とすみずみまで、あたかも古典劇のように、人間的真実に叶っていることだろう】

こうしてやくざ映画評価の機運がもりあがっているあたりで、自分の金で映画館に通い始めたのが酒田の某高校生だったというわけ。そりゃ、熱中もするわな。

 しかし現実としてのやくざの有り様は、これがなかなかにハードなもののようで……

-刑務所に入ると、おかまを掘られるわけですね。掘るのが《カッパ》で、掘られるのが《アンコ》。
笠原:そうです。僕は「仁義なき戦い」で美能幸三(映画では菅原文太が演じた広能)さんに取材したんですけど、美能さんも刑務所でアンコを掘っていたわけですよ。
-それでアンコというのは、結局、カッパの鉄砲玉になって人を殺しに行くようになるということですけど。
笠原:だから美能さんも、今はどうか知りませんけど、大阪、東京に男を二、三人囲っているわけですよ。それで美能さんが電話一本で指令を出せば、その男は鉄砲玉となってフッ飛んでいくと言うんですよ。(略)だから刑務所を出たあと、おそらくそういう人たちも最初は女を買いに行ったんでしょう。だけども、できない。できないできないという自分のコンプレックスみたいなものを抱えて、結局、男になりたいということで昔の兄貴分に頼みに行く……
-博奕をやる人はインポだと言いますね。
笠原:ええ、博奕をやるからインポになるのか、インポだから博奕をやるのかわからないけれども。
-博奕をやる時には、覚醒剤を打って……。
笠原:ええ。どうしたって博奕をやってれば覚醒剤を打つようになるんですよ。それで陶酔していくでしょ。あれはエクスタシーなんですよね。だから、有名なやくざの親分というのは、博奕は一切、若い時からやっていないんです。「勃たなくなる」と。

……あああこの世界にはやはり入ってはいけない。“実録”以上の部分がここには。そして避けて通れない問題だったのに結局描けなかったのは……
笠原:やくざというのは、突きつめれば被差別民朝鮮人が多いんですよね。例えば、山口組にしても六割は朝鮮人と被差別民なんです。
-それは否定できないらしい。
笠原:それでおもしろいのは、被差別出身のやくざというのは、同じ出身ということで団結することがあるんですよ。で、最終的には組が何を言おうと、そっちの方を大事にするんですね。
-朝鮮人の場合、横に団結するというのはないわけですか?
笠原:それは、ない。だって金にならないんだもの。被差別の場合は、同和対策ということで金が出るんだから。

……ふう。もうキリがない。しかしこの本の一番の危うさは、《天皇》の部分にある。以下次号

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「昭和の劇」 その2~Wの悲劇

2008-02-02 | 本と雑誌

(前号繰越)Arai01

 インタビュアーは「赫い髪の女」(傑作)「リボルバー」(大傑作)や「Wの悲劇」などの脚本で知られる荒井晴彦(「争議あり!」も必読)。彼も触発されて芸談が始まる。

「澤井(信一郎)さんと『Wの悲劇』をやった時、薬師丸ひろ子が処女を失ったあと、朝帰りするシーンがあるんですよ。で、澤井さんは、薬師丸ひろ子に足の間に棒を入れた感じで歩け、ガニマタで歩けと。けれど僕としては、澤井さん、そんなことありえないよと。『処女をなくしたら、どうしてガニマタになるの?そんな女、見たことないよ』と。そんなこと、見えなくたっていいじゃないか、そういうことじゃないことで客にわからせられないのかと。でも、澤井さんは頑強にガニマタで歩かせるわけですよ。で、僕は『見えないものは見えないんだよ』と。書くときもそこで困るわけですよ。いろんな女に電話して『お前、処女をなくしたあと、まず何をした?』と(笑)。で、結局、澤井さんがガニマタで歩かせたあと、薬師丸に部屋で何をさせたかというと、カレンダーに生理日の印をつけさせるんですよ。でも、そんなことしないでしょ」

W01 ……自己主張しろよ薬師丸(笑)。それはともかく、このあたりに脚本家と監督の違いがあらわれているような気がしてならない。「意図」と「画面の効果」どちらを優先させるか。このバトルがあるからこそ映画は面白いのだとも言えるだろう。ただ、わたしは今の日本映画界において、脚本家の地位が低すぎるという意見に100%賛成だ。TVが堂々と「倉本聡脚本」などとうたいあげているのに、なぜか映画はそのほとんどが監督のモノとされている。映画を建築に例えれば、設計図を描いた人間より、現場監督の方がはるかに評価されるなんて、どうしても納得できない。ゼロから有を生み出すことがどれだけの苦行か、観客も理解するべきだとつくづく。   

次回はやくざ生態篇

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「昭和の劇/映画脚本家 笠原和夫」

2008-02-02 | 本と雑誌

Shouwanogeki 太田出版刊 4,286円(税別)

 凄い本であることは前からきいていた。しかしこれほどまでとは。大掃除の合間や、お餅を丸めたりしながら、その面白さに600ページを超える大作をほぼ一昼夜ぶっ通しで読み続ける。文句なく2003年のベストワン

 笠原和夫とは、美空ひばりの時代劇から「総長賭博」などの任侠やくざ映画で東映を支え、「仁義なき戦い」で頂点をきわめた後、「二百三高地」などの大作を放った脚本家。先日お伝えした深作欣二とのみごとなコラボレーションと、同時に苛烈な相克。これは笠原へのインタビューをまとめたものだが、脚本家の本は、監督の映画本よりもさらに面白いことがわかる。「あのバカ(監督)が、オレのホン(脚本)の意図もわからずにあんな映画にしやがって」という歯がみがきこえてくるからだ。

Kasaharakazuo  この本の凄みは、執筆のために徹底した取材を敢行する笠原がたどりついた歴史の裏面にある。まあそれは次回以降にゆずるとして、まずは東映の屋台骨を支えた彼だからこそ語ることができる芸能史の側面を見てみよう。

【『人生劇場・新飛車角』昭和39年】
「これがヒットしたというのは、非常に展開がスピーディであったことと、それから当時、鶴田浩二が佐久間良子とできてたんだよ(笑)。その二人が、実に琴瑟相和すという名演技を見せて」

【『日本侠客伝・浪花篇』昭和40年】
高倉健について)「ナルシシズムが強いんだね。自分の美しさと若さに自分で惹かれているというかね。『鉄道員(ぽっぽや)』なんてやってたけど、あれははっきりいって二・二六事件の将校ですよ(笑)。あんな人、田舎にはいまへんでえ(笑)。僕が『二百三高地』をやった時にね、乃木将軍役は高倉健がいいと言ったんですよ。それで、僕が交渉することになって青山で会いましてね、乃木将軍をやらないかと言ったら、大分長いこと考えて『悪いんですけど、私は軍人というのはやる気がしない』と。でもそうじゃないんですよ。お爺さん役がイヤなんですよ。というのも、その後『動乱』(昭和55年)って映画があったでしょ。あれで二・二六事件の青年将校をやってるんですよ。何が『私は軍人というのはやる気がしない』んだと(笑)。」
※乃木は結局仲代達矢が演じた。

中村錦之助について)「彼が東映に入ったのは昭和29年ですけどね、錦之助兄弟を車で迎えにいくというのが僕の宣伝部での最初の仕事だったんですよ。で、錦之助が助手席に座って、僕は弟とうしろの席に座ってたんだけど、うしろから見てね、本当、首筋がきれいだなあと思った。女以上にきれいですよ。真っ白で。それくらい女っぽい。ものすごく女っぽい人。」

次号につづく!

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わたしのグランパ('03 東映)

2008-02-02 | 邦画

Mygrandpa 中学1年の五代珠子(石原さとみ)は、不良グループからのいじめにあっていた。そこへゴダケンこと祖父の五代謙三(菅原文太)が現れる。謙三は13年前、友人のかたきを取るため、街のヤクザ2人を殺して刑務所に入っていたのだった。正義感の強い昔かたぎの謙三と、祖父に心を開いていく孫の珠子。2人のまわりにさまざまな騒動が起こって……。

 のっけから断定。今までに数多くの女優のヌードを見てきたけれど、もっとも美しい裸身は、「サード」(’78 ATG)における森下愛子のもの。「木更津キャッツアイ」や「池袋ウエストゲートパーク」などの“壊れたお母さん”役しか知らない世代には意外なことだろうが、いやー本当なのです。こう思っているのは私だけではなくて、ネット上でも結構いろんなサイトで伝説になっている。お好きな方は検索してみると鑑賞できるはず。

その「サード」の監督、東陽一の新作「わたしのグランパ」。地方都市の穏やかな情景が、みごとにとらえられている。いい日本映画を観たなあ、と充実した気分になれるのだ。「時をかける少女」にしても、あの筒井康隆の小説が、なぜかこのような叙情的な映画を産む不思議は、ちょっと考えてみる価値はあるかも。

 主演の石原さとみは、森下愛子以上の衝撃のデビューだ。菅原文太や波乃久里子といった助演に恵まれたとはいえ、自省と成長を完璧に演じきっている。この子、大女優になるかも。NHK「てるてる家族」は苦戦しているようだし、妻も「あれはあんまり……」と見放しているが、長い目で見てやりましょうね。

この作品がファンタジーであることは疑いなく(そのことを明確に示すシーンはわずかに一つしかない)、いじめが昔気質の老人の侠気だけで解決するとは思えないが、そのおとぎ話を、なぜか本気で信じたくなる愛すべき映画。ぜひ。

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「危険な話」東北版

2008-02-02 | 情宣「さかた」裏版

Tsuruga01 クミアイ情宣シリーズ。
人魚伝説」ネタをいただいて原発反対をぶちあげてみました。
発行は2002年9月9日。

人勧の検証をちょっとお休みして緊急に原発のお話。表版にもあるように、六ヶ所村の署名の件もあるので。

 資源をもたない日本のエネルギー政策に関して、原子力発電を推進することを、積極的にではないにしろ、まあ仕方のないことと考える人も多いのかもしれない。しかし原子力について、そのリスクが充分に認識されていると言えるだろうか。いったいいつ私たちは、電力会社に命まで預けることを承認したのだろう。東電のトラブル隠しの件をみるまでもなく、私たちが知らないでいることって、もっとたくさんあるんじゃないだろうか。以下は初秋の怪談話『地元住民の語る原発』……

※【被爆国】日本が、原子力発電を推進することになる経緯は、佐野眞一が正力松太郎を活写した「巨怪伝」に詳しい。原発とジャイアンツがこの男を通じてつながってるなんて。

 数年前、北海道と東北の事務職員部長たちが集まる会で、定年の近かった福島の部長に、“住民でなければ知ることもない”ディープな原発話をたっぷり聞くことができた。この人は太平洋側の相馬地区に勤務していたが、ここはいわゆる原発銀座である。

「だいたいね、東電は絶対安全なんて言ってるけど、そんなこと全然ないんだ。」
福島弁のアクセントは内陸弁に良く似ている。
「あ、やっぱり。」
「従業員の放射能対策だってちゃんとやってるっていうけど、それは正社員だけのことでね、炉心の近くには臨時とか外国人が特攻してんのよ。」
「へー」
「地元じゃみんな知ってるんだぁ。原発出るとき汚いジャンパー着てるのは危なくないとか。」
「は?」
「汚いのを着てるってことは、帰りに着替えてないってことだろ?そーゆーのは塗装とか危なくない方をやってるわけ。」
「あ、そうか。じゃあ特攻組は……」
「そう、ちゃんと着替えて出てくるわけよ。」
「なるほどねぇ。」
「それにね、私は釣りが好きなんだけど、あの辺りの漁業権はみんな東電が買ってるんだ。それでも漁は禁止されてるわけでもないからみんな獲ってるの。漁師も私も。」
「はあ。」
Kyokaidenn 「でまたこれが何でか知らないけどでっかいのが揚がるのよ。」
「魚が、でっかいんですか。」
「うん。まあ温水が出てるってこともあるんだろうし、他の理由もあんのかもしんないねぇ。」
「他の理由って……ヤじゃないですか。」
「そうだねえ。でもそのでっかい魚、地元じゃ食べなくて、陸送で築地に持ってくと高く売れるんだって。なんたって大ぶりだから。そいで高級料亭に出てるんだってよ、原発近くの魚が。」
「しっかし何でその……」
「地元は分っててなんで文句言わないのかってことでしょ?東電に。いやそれはさあ、私の前任校に行けばわかるよ。そりゃもう凄い設備だから。町のグランドだって観客席可動式だよ。交付金あるうちは町民は何にも言えないの。」
「うーん」
「そのくせ事故対策に公民館にヨウ素用意しろっていう要望は却下されるんだよ。」
「何でですか?」
「だってほら、事故は絶対に起こんないって建前だから。」
「…………。」

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