事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

F4。

2008-02-12 | 情宣「さかた」裏版

Chicago01 フッ素シリーズ最終回。第三弾はこちら
発行日は2003年3月6日でした。

現場にいる教職員なら、子どもがマニュアルどおりに動かない存在であることを日々痛感している。予想もつかない行動をとる彼らが、希釈されたとはいえそれ自体は劇薬であるフッ素ナトリウムを、ぶくぶくうがいをしているときに“飲み込まない”はずがないし、“飲み込ませない”ための指導がどれだけ大変かをよくわかっている。

 ところが、旧厚生省がぶちあげ、県や各市町村がそれにならった『健康21』計画という一種のマニュアルには、フッ素洗口を推進する、という一項がもうけられていることが多い。

 たとえば『健康さかた21計画』(酒田市)には、歯の健康の欄で、学童期の健康づくりのために

③フッ素の効果と安全性を啓発します。また、小学校、中学校、家庭でのフッ素洗口を推進します。


と明確に提示してしまっている。これはいったいどうしたことだろう。

 昨年の教育事務所との専門部交渉でフッ素洗口の話になり、回答は「学校、設置者、保護者の合意のもとに……」ということだった。こちらは逆に「ということはこの三者の合意がなければ推進することはない、ということですね?」と問うと「そのとおりです」との返答だった。だが市町村は……

 おそらくこの姿勢を読み解くキーワードは、『費用対効果』だろう。健康日本21がめざす【80歳で20歯以上の自分の歯を有する人の割合を、2010年に20%以上にする】という数値目標を達成するために、いちばん費用が安く、行政の姿勢を明確に打ち出したと印象づけられるのはおそらく上水道へのフッ素添加だ。

しかし反対が多いために折衷案として小中学校へのフッ素洗口を持ち出すのだとしたら、それはお門違いというものだろう。低年齢、低体重児へのフッ素の使用をWHOも警告している状況下、学校にフッ素洗口を導入するリスクは無視できないはずだ。

 そしてもうひとつ。行政職としてわたしもつねづねそんな傾向を自戒しているが、行政は、一度予算のついた事業をとりやめることは、立ち上げるよりもはるかに難しいという性格をもっている。フッ素洗口導入がどんどん進んでいる今こそ、そのことへの危機意識をもっていなければ、将来に禍根を残すことになりかねない。

 いずれにしろ、子どもが多様化し、“一律に、一斉に推し進める”ことのむずかしさを知るわたしたちは、フッ素について学習を深め、その対応を養護教員ひとりに押しつけるのではなく、わたしたち全員の問題として考えることが必要だろう。そうでなければ、子ども以上に多様化した保護者からの、学校自体への信頼がゆらいでしまうのではないか。

※推進派の言によれば、学校で使用するフッ素は、飲み込んだところで影響はない、とのこと。しかし、もとはアルミ精錬の廃棄物だった歴史を持つフッ化ナトリウムを、飲み込んでも影響はありませんと学校が説明をし、そのことを保護者が納得すると考える方が楽天的すぎないだろうか。

※画像は「シカゴ」Chicago(’02)
 あーダメだこれは。わたしはどうしても楽しめなかった。リチャード・ギアとレニー・ゼルウィガーという大好きな主演コンビ+音楽ダニー・エルフマンなのに、どうして。

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F3。

2008-02-12 | 情宣「さかた」裏版

Shogo_butawonusumu フッ素シリーズ第三弾。第二弾はこちら
発行は2003年3月6日でした。

そもそもどうしてフッ素を利用するとむし歯になりにくいのか、例の素人の保護者は、ひたすらインターネットで情報を集めまくる。

 歴史は意外に新しい。20世紀初めに始まるお話。1901年、ナポリの駐在医官イーガーが、火山と関係のある住民に、まだら状の濁りがある歯(斑状歯)の持ち主が多いことを発見。その後、ナポリで給水系統が変わってから斑状歯がみられなくなった地区があったことが報告される。

そしてその頃には、斑状歯の持ち主にはむし歯が少ないことも報告されていた。これらの結果をうけて、飲料水フッ素濃度とむし歯には相関性があると判断したアメリカとカナダで、上水道フッ素添加が開始された。これが1945年のこと。日本が飢餓のどん底にいたとき、アメリカではむし歯予防に予算をつけていたわけだ。

 日本でも50年代から上水道にフッ化ナトリウムを添加する地区が出てきたのだが、この流れを頓挫させる事件が起きる。この世界では有名な話らしい「宝塚斑状歯事件」である。

 1971年、ある歯科医師が、宝塚市の特定の地区に斑状歯が高率でみられることに気づいた。彼の報告をもとに、宝塚歯科医師会や京大は水源の変更をもとめたが、適切な措置がとられず、被害が広がったといわれている。ちなみにこの医師は、フッ素被害の風評が地域振興の妨げになるためにさまざまな嫌がらせをうけ、県外に転居を余儀なくさせられている。

 こんな事件がありながらも、フッ素推進勢力は元気である。その筆頭はなんとおとなりの新潟大学歯学部予防歯科学教室。そのせいもあるのかフッ素洗口の実施施設数と実施人数は新潟がダントツのトップ。なにしろ全体の1/3強を新潟で占めているのだ。この推進グループの最終的な目的は水道水へのフッ素の添加で、おひざ元の新潟市で画策したのだが、このときは市民グループの反対で阻まれてしまっている。

 そこで“その代わりに”出てきたのが小中学校でのフッ素洗口。ある意味、わかりやすい図式である。

 前面に立たざるをえなくなった養護教員の悩みは深い。そして山形県教職員組合養護教員部はこの動きに明確に反対している。根拠はとりあえず四つ。これがまことに冷静で、納得できるものなのだ。それでも推進されていく学校が増えているのはなぜなのか。どうやら、行政の方に話は移っていく。

Shogo_sideb ※なぜ学校でのフッ素洗口に反対しているの?

①学校は教育現場であって、薬品を用いて予防を行う医療の現場ではない。

②『疑わしきは用いず』は予防医学の原則。学校保健の主体は、安全性の確立されていない薬物にたよる予防ではなく、広く深く子どもたちの成長につながる適切な食事や歯みがきの指導であると考える。

③洗口用の医薬品は(それ自体は劇薬)、歯科医師の処方のもと、蒸留水で希釈して、歯科衛生士が実施できると規定されている。それを学校で養護教諭や学級担任の手で行ってよいのか。まして多忙が叫ばれる学校現場で安全に実施される保証はない。歯科医師不在の医療行為で事故があった場合、どう対応するのか。

④フッ素塗布、洗口は歯科医師の指導のもと、保護者が必要と認めたとき、保護者の責任において行うものである。子どもたちの歯の状況は個々に違うはず。それなのに一律に学校で実施すべきものではない。

   山形県教職員組合養護教員部

※新潟大出身のみなさまには申し訳ないが、推進派の主張で連想するギャグがある。「健康のためなら死んでもいい」というヤツ。優先順位が、違っていないか?

F4につづく
画像は佐藤正午「豚を盗む」「Side-B]
同じことをくりかえしくりかえし語る正午。すべてが言い訳の連続とも言える正午。「永遠の1/2」と「リボルバー」の変奏曲だけだとも言える正午。大好き(笑)。ホントよ。

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F2。

2008-02-12 | 情宣「さかた」裏版

Furukawahideo02 フッ素シリーズ第二弾。第一弾はこちら。
発行は2003年2月19日でした。素人であることを大々的にアピールする卑怯ぶりです(笑)。

 たとえばわたしのような医療系ど素人な人間の子どもが通う学校が、新年度からフッ素洗口を導入する意向だとします。学校はそのことを保護者に問います。いかがでしょうか?と。

理由は次号あたりでお知らせしますが、ここは通知ではなくて希望を問う形になるでしょう。その文書にはフッ素洗口のメリットが列記されているはず。こんな感じ。

1.小学校6年間実施すると、永久歯のむし歯が半分に減ります。

2.特に前歯のむし歯予防に効果が大きいと思われます。

3.小さなむし歯ができても、進行しにくくなります。

4.予防効果はやめたあとも持続します。

おーこれはいいことだらけではないか。そういえばウチで使っている歯磨き粉にもフッ素は入っているし、こどもの歯の健康に!とガムにまで含まれているヤツがあったはず。誰も反対なんかする人はいないだろう、さっそく○をつけて……ん?でもこの前、気になる記事が新聞に載ってたよな。

フッ素入りガムなどの販売禁止 ベルギー政府

 ベルギー消費者保護・保健・環境省は30日、虫歯予防のためのフッ素入りガムや錠剤、ドロップの販売を禁止することを決めた。

 声明によると、フッ素の摂取が多すぎると神経系に影響が出て骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などの副作用がある、と省内の専門家会議が判断した。ただしフッ素を添加した練り歯磨きについては禁止の対象にしなかった。

 ベルギー政府は90年代半ばからフッ素の取りすぎを問題視し、2年前に欧州連合(EU)に疑問を提起した。しかしEU側の検討作業が遅れたため、欧州で初めての単独禁止に踏み切った。

 販売禁止の決定に対して歯科医の間には反対の声もあるが、同省報道官によると、フランドル歯科学会は錠剤などによるフッ素の取りすぎの危険性については同意しているという。
 販売禁止措置は8月の官報掲載後に実行に移される見通し。

2002年7月31日付 朝日新聞

 こ、これはどういうことだぁ?かくして素人ではあるもののインターネットに耽溺することでは人後に落ちないこの保護者は、フッ素関係のサイトに次々に入り込む……そこでは、おそろしいことにフッ素賛成派と反対派の壮絶なバトルが行われていることを“知ってしまう”。

 そして彼は疑問に思う。いったいなぜこどもの通う学校は、こんな状態のまま、フッ素洗口を導入するのだろうか、と。
なるべく公正を期すために、推進派の意見も並列させてみましょう。

フッ素って安全なの?
 フッ素は、諸外国では半世紀以上前からむし歯予防に使われていて、WHO(世界保健機構)も使用をすすめています。水道水にも加えられており、高い効果を上げています。残念ながら日本では、まだまだフッ素の応用は遅れています。遅れている主な原因は、フッ素の安全性に対する誤解と考えられます。

 もっとも大きな誤解は、フッ素の量に対するものです。たとえば、栄養剤もとりすぎれば有害となるようにフッ素もとりすぎれば有害となります。指示された量を、よく守って使用すれば、フッ素は安全で確実なむし歯予防法です。

※神奈川県・神奈川県医師会「フッ素でつよい歯じょうぶな歯~フッ素洗口手帳~」より

さて、それでは山形県は、そして山形県教組養護教員部は、この問題にどう対応してきたのでしょう。

F3につづく。画像は古川日出男「ロックンロール七部作」。
「ベルカ~」の続編にしてあれよりはるかにすばらしい。
小林恭二の「ゼウスガーデン衰亡史」から20数年。日本の小説もここまで来たかあ。こんな古川に芥川賞をやれない文藝春秋に呪いあれ!

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F。

2008-02-12 | 情宣「さかた」裏版

Furukawahideo01 クミアイ情宣シリーズ。学校事務職員と同様に少数職種である養護教諭の課題をとりあげた。フッ素の問題である。これは、現在にいたってもまだもめている。こんな“”で“乱暴”な話が、とあきれる思いだ。
発行は2003年2月9日でした。

 圧倒的に多数な“教員”のなか、行政職である事務職員が組合の代表になっていることで、実はかなりキツい場面に遭遇することもあります。世間的には「教職員組合」より「教員組合」の方がまだとおりがいいようですし。

 でも、不遜を承知でいえば、少数職種である栄養職員や養護教員、そして事務職員については、多少なりとも“一般の”教員よりもその痛みが承知できているのではないか、との自負はあるし、専門部とよばれるこれらの職種の課題を見過ごしていては、それこそ全体が穏やかならざる方向に進みかねない、との危惧もまた、ひとしおに感じています。

 だからこそ今のうちに(笑)酒田地区支部からそれぞれがかかえる問題を全体の課題として発信していきたいと企んでいます。ひとつよろしく。
 で、今回は養護教員部篇。

 山形教育新聞に、県養護教員部長が連載した「フッ素シリーズ」を読んでいただけたでしょうか。身内ボメになるようですが、これは好企画でした。フッ素(元素記号F)洗口の問題が、養護教員の世界だけの問題ではなく、教育、医療、行政それぞれの意向が激しくぶつかり合い、結果的に養護教諭がその相克のなかで悩まざるをえなくなっている課題であることが、これまでになく理解できたからです。

 まずは全体化への第1歩、「フッ素洗口とはいったい具体的にはどんなものなのか」から考えてみます。
実施されている例をあげると

・フッ素ナトリウム(NaF)の低濃度溶液を

・週1~5回

・10cc程度口に含み

・ほぼ1分間洗口(ブクブクうがい)させる

・以降30分間は飲食させない

というもの。この際、一般的には

・指導を学校歯科医が行い

・薬剤管理と洗口液の溶解希釈は養護教員

・各クラスの指導管理はクラス担任が行う

こととされている例が多いようです。

※実施回数が多くなればなるほど、溶液の濃度は低くなる。
最近は薬剤師が希釈した溶液が用意されるらしい。希釈された段階でそれを扱うのは『医療行為』ではなくなっている、というのが県教委の主張。

さて、次号からはこのフッ素洗口がなぜ導入され、あるいはなぜ導入されないのかを検証していきます。乞うご期待。

画像は古川日出男の「ベルカ、吠えないのか?」
混沌はいつもどおり。でも今ひとつのれないのは、「サウンドトラック」のような理不尽さに欠けているからかも。それにしてもベルカ、いい歯並びですね。

【F2につづく】

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