事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

ドカベン 第3試合

2008-02-22 | アニメ・コミック・ゲーム

Tonoma_2 第二試合はこちら。

 水島新司はこう述懐している。

「もしも岩鬼というキャラクターがドカベンに存在しなかったら、2,3年で連載は終了していただろう」

常に学生帽をかぶり、なぜか葉っぱをくわえ、神奈川県人のくせに関西弁をしゃべる(小さい頃に育ててくれた家政婦が関西人だったからですって。むちゃです)破天荒なキャラは確かに魅力的だ。「悪球しか打てず、不美人が美人に見える」彼のおかげでドラマはぐいぐいと引っぱられてきた。でもわたしはこうも思う。山田太郎という“無色な”主人公のおかげで、こんなキャラが光り輝いて見えたのではないかと。

考えてもみてほしい。少年マンガのキャラのくせに常に品行方正で(お風呂の入り方を妹に伝授する回には笑った)、感情を表に出さず、強肩強打にして打率が7割を超える(笑)人間って、読者にとって感情移入しにくいことこの上ない。第一、このキャラには“瞳が存在しない”のだ。目は横線が入っているだけ。これは驚異でしょう。

だからこんな『器』としてのみ機能する主人公のおかげで、岩鬼だの殿馬だのといったくせものキャラが生きたのだろうし、故障気味の美少年、というピッチャー里中が人気を獲得することもできたのだと思う。

※わたしがいちばん好きなキャラは“ハエボール”(投げる瞬間に速球かチェンジアップかを投げ分ける、実現性が高そうで実は絶対無理な魔球)の不知火。プロ野球篇で土井垣とバッテリーを組んだのはうれしかったなぁ)

こんな山田の造型を水島が最初から意図したものかはわからない。でも、原作者がいた「男どアホウ甲子園」の主人公藤村甲子園が「常に熱血で絶叫する」タイプだったことへの不満はあったんだと思う。水島は山田太郎(ネーミングもみごとだ。銀行の記入例みたい)という冷静なキャラを使って、もっともっと野球が描きたかったのだろうし、その意味でドカベンはみごとに成功している。野球漫画の最高傑作とわたしが思う理由も、そのあたりにある。そして何より水島の野球漫画でわたしが痛感したのは「ドカベン」「一球さん」「野球狂の詩」「あぶさん」などが同時進行していた頃の方が今よりもずっと面白かったという事実。人生において“のっている”時期というのはあるんだなあということです。
【ドカベン おしまい】

次回は「1、2の三四郎」です。

コメント
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