事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

もう一回「ALWAYS 続・三丁目の夕日」

2007-11-08 | 邦画

Alwaysnext  日本人とアメリカ人がいっしょに手拍子を打つとうるさい。なぜなら、日本人は基本的に1拍目と3拍目に打つのに対し(民謡ショーの手拍子を考えるとわかりやすい)、アメリカ人は2拍目と4拍目に打つため、のべつまくなしに手が鳴っている状態になるから。日本人からみるとアメリカ人は『裏打ち』をしているわけ。民族性とは意外なところに出てくる。

日本でもロックを子どもの頃から聴いている世代なら裏打ちが基本になっているだろう。カラオケがまだBOXのものではなかった頃、スナックの他の客への手拍子を裏打ちにしないと恥ずかしい時代もあったのよ。

でも、日本人の『ベタなノリ』とはやはり手を打ってからちょっと揉んだりする(笑)あのリズム。そんなベタさ加減は、今まで実は恥ずかしいこととされてきた。でも「三丁目の夕日」のスタッフは怖れずにベタを押しとおしている。「観客がこうあってほしいと願う方向」にストーリーはすすむのである。ある意味、立派であり、戦略的。

 CGだけが騒がれることは山崎貴としても本意ではないだろう。制作会社ROBOTも、そこで評価されるのは痛しかゆしだろうし。昭和34年の羽田空港など、わたしもさすがに生まれる前の存在だし、うまく作ってあるのかはよくわからない。前作から2年、技術は相当に進歩したらしいが、同時に観客の目も肥えているので、色調の微妙な違和感などでちょっと首をかしげる部分もある。でも、東海道線のまわりが田んぼだらけであるなど、どうやって撮ったのかなあ。あ、21世紀の今でも田んぼだらけなのか?(^o^)

Always2s   この映画、偶然かもしれないけれど役者のアンサンブルがまことにうまくいっているのだ。ストーリーの核をなしているのが、薬師丸ひろ子が演じる“お母さん”であることは確実。荒っぽい亭主(堤真一)の罵声を受け流し、子どもたちや同居する使用人(堀北真希)を常にやさしく思いやる母性そのものの人。すっかりおばさん体型になった(それでいてアイドルだった当時の面影も健在な)薬師丸の存在は、ドラマの基調音として常にある。角川映画や「翔んだカップル」で、誰よりも庇護されるべき存在だった彼女を思うと、隔世の感が……。

 そして、JAC(若い人は知らないだろうけどジャパン・アクション・クラブのこと。千葉真一が主宰していた)出身らしくアスリートのような体型の堤真一が弾け、インテリではあるが生活力がない貧弱体型の吉岡秀隆を、笑ってしまうくらい長身の小雪がつつみこむ。ね?なんか、いい感じのチーム。体育系の堤が初日のあいさつに現れた暴漢をやっつけた話など、だろうなあと思わせる。

 しかし三丁目の住人で、誰しもが愛さずにいられないのは三浦友和演じる医師ではないだろうか。妻子に先立たれ、前作で家族の夢を見させてくれたタヌキに会いたくて焼き鳥をもって森に佇む男。彼だけは、高度成長に取り残されていくであろうことを予感させる。死んだ戦友が蛍になって訪れる堤真一のエピソードが、彼の現代的すぎるアスリート体型が災いして効いていないので、いっそう三浦友和の戦前性は際立つ。やはり日本一うまい役者だ。

Alwy2 前作は子どもを使って泣かせた感じがどうも引っかかったけれど、今度は正々堂々おとなの純愛ドラマで泣かせてみせる。ベタの極致。まあ、それでもわたしがいちばん泣かされたのは、今度も子どもたちの別れなのだけれど。24色の色鉛筆とは、いいところを突いたなあ。

 問題はラスト。観客のすべてが望んだ形に収束させた以上、あの続編をつくるのは至難の業だ。でもどうだろう、ベタの連続で国民映画になった寅さんの正当な後継者はこのシリーズだろうし、あと三作ぐらいはいけるんじゃないか。東京オリンピックの東洋の魔女たちを、当時よりはるかに西欧人のような体型になった現代の日本人に演じさせるのもいい手じゃない?シリーズの継続を、誰よりも館主たちは待ち望んでいるだろうし。

Wtrbdge  堀北真希のズーズー弁はほとんどネイティブの域まで達しているし(マジで東北出身じゃないのか)、脇役に意外な大物(東宝だからゴジラも出ます)が登場するのも楽しい。薬師丸ひろ子に日本橋の上で「哀愁」(ウォータールー・ブリッジでヴィヴィアン・リーが演じたメロドラマ。「君の名は」の元ネタです)をやらせるしゃれっ気も含めて、金を払う価値は絶対にある映画だ。

泣かせるラストでは、ぜひ、ベタな手拍子を。Bump of Chickenのテーマ曲(スマップの某曲を茶化しているような内容で笑わせる)にはおよそ合わないだろうけれど。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする