事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「村の状況報告」The Global Citizen

2007-11-19 | 国際・政治

Danameadows ……誰も送信してくれないし、簡略版がベストセラーになってしまっているので、しかたない、私がオリジナルを送ります。ウィルス騒ぎよりはよほどマシなチェーンメールだし。これはしかし考える“必要”、というか“必然”の話だったんだろう。感情的にならずに、とにかく考えるための資料として読むべきだと思った。

「村の状況報告」The Global Citizenダネラ・メドゥズ(1941-2001)

地球が1000人の住む村だとすると、そこにはアジアの人が584人、アフリカの人が123人、東ヨーロッパと西ヨーロッパの人があわせて95人います。
ラテンアメリカの人は84人、リトアニア、ラトビア、エストニアなどを含むソビエトの人が55人。
北アメリカの人は52人。
そして、オーストラリアとニュージーランドの人が6人います。

村の人たちが気持ちを伝えあうのは、それはそれは大変です。なにしろ、1000人のうち165人は中国語を、86人は英語を、83人はヒンディー語かウルドゥ語を、64人がスペイン語を、58人がロシア語を、37人がアラビア語を話すのですから。
ここにあげたのは、村人の話す言葉の半分だけです
このほかにベンガル語、ポルトガル語、インドネシア語、日本語、ドイツ語、そしてその他200の言葉があるのです(後に出てくる言葉ほど、話す人の数は少なくなります)。

村には300人のキリスト教徒がいます。このうち、カトリックの信者が183人、プロテスタントが84人、ロシア正教を信じる人は33人です。
イスラム教徒は175人、ヒンズー教徒は128人、仏教徒が55人、アニミズムを信じる人も47人います。
残りの210人は、他の宗教を信じている人たちで、宗教を信じない人もいます。

全体の3分の1にあたる330人の村人は子供です。
子供の半分は、はしかやポリオといった、防ごうと思えば感染の防げる病気にかかっています。
1000人の村人のうち、65歳以上の人は60人。
結婚している女性の半数を少し欠けるほどの人数が、現代的な避妊具を使えますし、実際に使っています。
毎年28人の赤ちゃんが生まれます。
死ぬ人の数は年間10人。このうち3人は食糧不足で、1人はガンで亡くなります。また、2人は生後1年にならない赤ちゃんです。
村にはHIV感染者がひとりいます。まだ、AIDSを発症するところまではいっていないようです。
Oilisnothealthy 28人生まれて10人死ぬのですから、来年の人口は1018人になります。

1000人の村では、200人の村人が収入の4分の3をもっていってしまいます。また、全体のわずか2%にあたる収入を200人で分けている人たちもいます。
車を持っている人はたった70人。でも、その中には2台以上持っている人もいるのです。
一方で、全体の3分の1の人には清潔で安全な飲み水さえ手に入りません。
670人いる大人の半数は字が読めません。

村にはひとりあたり6エーカー(※1エーカーは40.4㌃)の土地があります。
全部で6000エーカーある土地のうち、畑が700エーカーです。
1400エーカーは牧草地。
1900エーカーは森林です。
砂漠、ツンドラ、歩道、その他の荒れた土地をあわせると、2000エーカーになります。
森林はすごい速さでなくなっていて、荒れ地は増えています。その他の土地は増えも減りもしていません。村では畑の40%に、肥料の83%をつかっています。この土地は特別お金持ちの人たちが持っている土地で、ここで270人分の作物がとれます。多すぎた肥料は大地から流れ出し、湖や井戸水を汚します。残りの畑には17%の肥料がまかれ、収穫量の28%にあたる作物がとれます。これで村人の73%の食べ物がまかなわれるのです。貧しい人の畑の収穫量の平均は、豊かな人の畑の3分の1です。

世界を1000人の人が住む村だとすると、そこには5人の兵士と7人の先生、そしてひとりの医者がいます。村が1年間に使うお金は300万ドルを少し超えたくらいです。そのうちの18万1000ドルは武器や戦争に使われます。教育に使われるのは15万9000ドル、そして健康管理に使われるお金は13万2000ドルです。

この村には、村全体を吹き飛ばし、塵が何層にもつもるほどの破壊力をもった核兵器が埋まっています。こうした武器はちょうど100人の人の管理下にあります。残りの900人の人は、あの100人はお互いうまくやっていけるようになるのだろうか、そうだとして、万が一不注意や処置を間違えて作動してしまうことはないのか、また、武器を解除すると決めたとしても、武器の原料の危ない放射性物質を村のどこに捨てるのだろうと、息を潜めてうかがっているのです。
<翻訳:佐光紀子>


……このオリジナルが、インターネットで紹介され、電子メールで人づてに広がるうちに、いつの間にか1000人が100人になり、さまざまな言語に訳され、世界中に伝わっていった。そのうちに、4分の3ほどが書きかえられ、同性愛者が11%もいるという衝撃の村(笑)の形に落ち着いている。

No_war  たとえ話で語ることには、実は落とし穴が多い。物事を簡略化し、いわゆる俗耳に入りやすい形にすることは、肝心な部分をねじまげ、とりこぼしてしまう危険性をはらんでいる。だが、世界の現状を千分率(のちに百分率)で表すだけで、これだけ反響を巻き起こした背景には、豊かな生活を当然のものと享受している先進国の連中(もちろん日本人も)の常識が、少なからずおごりたかぶっていたことがある。環境ジャーナリストにして農業従事者であるメドゥズのたとえ話は、その意味で効果的だったわけだし、ネットを利用できる富裕層の罪の意識を喚起し、自らを発信者にまでしたと言える。わたしにしても、2001年10月27日付の天声人語でこれの一部を読んだときには、やはりショックをうけた。日本人にとっては、世界における65才以上の人間がわずか6%しかいない現状はもはや想像もできない事態だろうし、30人以下学級がようやく実現できると喜んでいる山形県人にとって、教師の数が人口の0.7%にすぎない世界の現実は……

アメリカ人にとっては、アメリカン・スタンダードを推し進めることが、いかに尊大な態度であるかを感じ取れるはずだ。宇宙船地球号という古くさいメッセージは、まだまだ有効だったのである。
出典は「サスティナビリティ・インスティチュート」。でも英語はめんどくさいし、坂本龍一監修の「非戦NO WAR」(幻冬舎)からいただき。これも必読。

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「模倣犯(上・下)」 宮部みゆき著 

2007-11-19 | ミステリ

  ふう。読み終えるのに三週間以上かかった。こんなに時間がかかったのは高村薫「照柿」、ジェイムス・エルロイ「ホワイト・ジャズ」以来。3,551枚、上下巻合計1,400ページを超える大作だから物理的にしかたない、ともいえるが、それだけでもない。なかには本屋をハシゴして一日で立ち読みで完読した練達の女性もいるらしい。わたしにはちょっとそれは無理だ。

Mohohan_2 相性の問題だろうか。いや、この小説はわざわざ速読できない仕組みになっているように思える。
 ミステリだからストーリーの紹介はしないが、これだけはいえる。“被害者がやたらに多い”お話だと。犯人が直接に手を下した、いわゆるガイ者だけでなく、その家族、捜査員たちの心が、どれだけ二つ(実をいえば一つ)の悪意によって被害をこうむっていくか、を宮部らしい繊細なタッチで描いている。もっとすすめていえば、犯人の心すら蝕まれて……という具合。

 探偵役が意外な人物なのだが、宮部はプロの職業人である彼に、こう語らせている。
「人殺しが悪いのは、被害者を殺すだけじゃなくて、私やあんたや日高さんや三宅さんたちみたいな、残ったまわりの人間をも、こうやってじわじわ殺してゆくからだ。そうして腹立たしいことに、それをやるのは人殺し本人じゃない。残された者が、自分で自分を殺すんだ。こんな理不尽な話はない。私はもう嫌だ。それが嫌になったんだ。私はどれだけ自分自身に責められて、じわじわ殺されかけても、じっとこらえていられるほど強い人間じゃねえからな。弱虫だから、もうこんな非道いことには辛抱ができねえんだよ」
……探偵が事件に関与する動機として、史上もっとも説得力がある。

 そして、この小説が速読できないのは、これら被害者たちを、その背負っているもの、事件にふれた経験が何を与えたかに至るまで、それはもう徹底的に書き込んであるからである。ここまでやるか、と思うくらい。読者がこれにつきあうということは……そう、まるで登場人物全ての人生に伴走を強いられているかのようだ。評価が分かれるのはこの部分だろう。ミステリとして考えれば、夾雑物だらけで先に進めやしない、と切って捨てるか、哀切なラスト(意識していないうちに涙がボタッと流れてきてたまげた)に感動してベストに推すか、である。

 結果的には昨年のベストワンを総取りしたため、後者が勝ったということなんだろう。しかし「火車」に似て“(真の意味での)最初の殺人の背景を全く語らずに幕をひく”というアクロバットを成功させている点で、やはりこれはたいしたミステリでもある、と感服。小説家である宮部自身も含めて、マスコミはなぜ犯罪を語るか、に痛烈な批評を加えていることも重要。確かに、長さに見合った内容を誇っている作品だ。長いだけに、実はアラもちょっと目立つけれど。

 それにしてもベストセラー。上下巻計で3,800円は痛かったが、その価値は確かにあった。酒田の図書館では25人待ちまで行ったから、こりゃ買うしかなかったんだけど。

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A LONG VACATION / 大瀧詠一

2007-11-19 | 国際・政治

Alongvacation ♪くーらいうぅみにぃむーかあってぇ~ヘッドライトのぉパッシングぅ~♪

 ご存知、大瀧詠一の名曲「スピーチバルーン」の一節。“日本のウエストコースト(笑)”庄内浜で遊ぶのが通例だった若い頃(海のない地域→波浪警報が出ることもない地域の連中って、どうやって青春するのだろう。山菜とり?イワナ釣り?)、悪友たちと深夜、松林を抜けて海岸まで車を乗り入れた。

「やっが?あの歌みでぇ」
「ヘッドライトのパッシングが?」
「おー。やっぜやっぜ、青春ぽいのやー」
「待で待で。そんだごどすっど、北鮮のスパイど間違わいっぞ!」

もちろん、我々はシャレで言っていたが、シャレにならない事件は日本海沿岸で頻繁に起こっていた。新潟の女の子や、金賢姫の教育係の日本人女性に代表される拉致事件、そして不審船騒動をはじめとして、かの国がなんらかの方法で日本に違法なコンタクトをとっているのは間違いない。ウエストコーストの住人としては、やはり気持ちのいいものでは……。

 それにしても、21世紀になっているというのに、北朝鮮がいまだにあんな体制で国家として成り立っていること自体、一種の奇跡だろう。金日成が強引にでっちあげた主体(チュチェ)思想なる“王制社会主義”(すいません。また勝手に造語を)が、いかに強固に人民を縛っているかを実感する。搾取し尽くし、自身は贅の限りを貪る金正日の姿は、独裁、というよりおとぎ話の王様に近いと考えるのは私だけではないはず。

 キムプチョ=悦び組と呼ばれる党幹部性処理係の存在や、金正日がシロート考えで「もっと稠密に植えたら収穫が増えるはずだ!」(素人百姓である私もよくそう考えた)と指示したために大失敗に終わった農業政策など、これはやはり困った裸の王様のありようだ。労組の会議に行くと、朝鮮総連も同席することがあるわけだが、今度本気で彼らの祖国のことをきいてみようか。やめといた方がいいかな。

Kim_sj  北朝鮮に実際に行った人(某町長が青年団関係で招待されたらしい。この人は前に勤務していた学校のPTAだった時代、職員室でワカゾー事務職員相手にとうとうとしゃべっていくことがよくあった)の話を聞くと、要するに外国人相手には絶対に弱味はみせないことを身上としている国らしい。やせがまん国家である。空母が一隻もないことは以前ふれたが、北朝鮮の脅威を喧伝する勢力が、冷戦の終結で力が衰えた公安庁や自衛隊であることは忘れてはならないと思う。仮想敵国としてのソ連と北朝鮮を比較すれば、どれだけの差があるかは自明ではないか?テポドンやノドンの脅威は確かに否定できないが、彼らに兵力はあっても兵站がないのは旧日本軍の比ではないし。

 この金正日、美食とコニャックで糖尿の気があるようだが(だろ?あのやつれかたは)、大の映画ファンであることにはちょっとシンパシーを感じる。寅さんのビデオも取り寄せているらしいが、ハリウッド製の戦争映画を観て、彼がどう感じているのかはぜひ知りたい。米帝への怒りを駆り立てているのか、それとも……。

……およそ5年ほど前のネタ。2007年現在、いまだにあの国の体制はくずれない。金日成没後、これだけ長い間命脈を保つと誰が想像しただろう。むしろ、拉致にこだわりすぎて日本の方が孤立し始めているのはどうもなあ。外交センスにおいては、対米追従しかない日本と、大国の間でバランスをとりながら生きてこなければならなかったあの民族では差がありすぎたということか。

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