事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「獄門島」(’77 東宝)

2008-02-14 | 邦画

Ichikawakon  市川崑追悼のためにアップ。
長寿だったせいで誤解されそうだけれど、彼は決して【巨匠】ではなく、最後まで【才人】だった。
「悪魔の手毬唄」の切れ味、「細雪」の皮肉さはこの人でなければ……
名コンビだった脚本家の故和田夏十と、今ごろ久しぶりの夫婦の会話を楽しんでいるかも。
彼の最高作に金田一シリーズをあげる人は多いだろうけれど(大原麗子つながりでサントリーのCMをあげる人もいるかもしれない……確かに、ホンペンの巨匠がCMであれほどの切れを見せるなんて。さすが市川)、テレビの「木枯らし紋次郎」や「刑事追う!」は将来絶対に再評価されると思う。わたし、なぜか「刑事追う!」の生シナリオを神田の古書店で手に入れているんだけど、あれはなんだったんでしょう(笑)
妻にとっての最高作は文句なく「おとうと」と「私は二歳」だそうです。さすが年季はいってます。さて、「獄門島」は……

「獄門島」(’77 東宝)
Photo監督市川崑
主演石坂浩二 佐分利信 司葉子
 
わたしの世代は横溝正史どっぷりである。正確にいうと角川書店が仕掛けた横溝ブームにまんまとはまったのだ。ほぼ同世代の喜国雅彦(「傷だらけの天使たち」のマンガ家。必読)など、黒背に緑文字の横溝正史の角川文庫全89種を集めることに命を賭けたほどだ。

 だから新作の「犬神家の一族」に客がまるで入らなかったのはショック。一種の天使として存在する探偵を、三十年前と同じ石坂浩二に演じさせたのが災いしたか。でも、佐清(すけきよ)がゴムマスクを微妙にグニュグニュ動かす小細工など、90歳をこえた市川監督が、カメラの後ろでほくそ笑むような遊び心がうかがえてうれしかった。

 その三十年前の石坂金田一シリーズで、わたしがいちばん好きなのは「獄門島」。原作の【放送禁止用語を使った謎解き】もすばらしいが、東野英治郎、稲葉義男、松村達雄などの爺さんたちがとにかくいい味を出している。特に佐分利信!(「華麗なる一族」の万俵大介はやっぱりこの人でなくっちゃ)了然和尚の悲嘆をみごとに演じ、犯人の動機の不自然さをうまく隠している。もしも再映画化するというなら、この爺さんたちをこそぜひもう一度……って全員死んでるけど。

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「上京ものがたり」西原理恵子著 小学館刊

2008-02-14 | アニメ・コミック・ゲーム

Mail02a ところで西原理恵子は実は知り合いでした。Saibara03
というか、彼女が高校生のころ、私たちの作った高知天文研究会(今はみんな歳がいって活動してない)に入ってきたことがきっかけで、私は今はお付き合いはないのですが、仲間はお付き合いがあるようです。(時々彼らと集まると話を聞きます)
高校生のときから、ぶっとんだ子でした。
私立のお嬢様女子高にいたのですが、退学になっちゃったりして、反乱おこしてましたねー。

……らしくないことに筑波に研修行って何がうれしかったと言って、こんな出会いがあることだ。どひーまさかあのサイバラの知り合いに会えるとは!
「上京ものがたり」は、その西原が土佐女子高退学事件後、美大入学のために上京した当時のことが叙情的に語られている新作。

私が本当に欲しいのはこの本なのに、なんで新しい服着てるんだろう。
私が本当に欲しいのはこの本なのに、なんでうす汚い部屋で何もしない男とくらしているんだろう。

私はかっこわるい。
ああ私はとてもかっこわるい。

きれいな絵の本をめくりながら、私はずっとそう思い続けた。

Saibara02  そうだ。そうだった。決して自分のことなど誰も見てやしないことに気づきもせず、それが東京の優しさであることにも気づかず、上京した人間はまず激しく東京を憎み、そして自分を卑下する。故郷のことを美しく誤解するのもそんなとき。

 しかしそこから、「自分って一体なんなんだ」ということを自らに問い、世間との折り合いをつけ、都会になじみ、いつしか愛するようになる。その問いに“答えないでくれる”のもまた東京の優しさなのだ。西原はそのことに意識的。名著。

ゆんぼくん」「毎日かあさん」特集はこちら。

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