カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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昨日の北海道佐呂間の竜巻について 雑感

2006-11-08 12:01:01 | インポート

06110712 引用図は、昨日、北海道佐呂間町で竜巻が発生した時刻(午後1時30分頃)に近い、11月7日12時の天気図です。気象庁HPより引用です。

昨日、北海道佐呂間町(サロマ湖から少々内陸に入ったところ)で、竜巻が発生し、9人の方が亡くなられてしまい、民家の倒壊など、甚大な被害が発生してしまいました。

そんな折、タイムリーにYYさんのコメントをいただいたこともあり(YYさん、ありがとうございます。)本記事を紹介いたします。

まず、今回の竜巻が発生した要因を推定すると、1・地表付近の気流の収束 2・地表と銃空との気温差大(大気が不安定)3・地表と上空1500メートル以上の風向の鉛直シアーが大きいこと が挙げられます。

それでは、①気象庁HPより引用の11月7日13時の北海道東部アメダス気温分布図 ②気象庁HPより引用の11月7日13時の北海道東部アメダス風向風速分布図 ③ワイオミング州立大学HP引用で、現場に近い11月7日9時北海道稚内エマグラム図をご覧いただきましょう

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より、竜巻発生現場の佐呂間町付近では、7日13時には、気温が18℃前後と、この地域の9月下旬の最高気温に匹敵する高温でした。また、引用図にはありませんが、現場周辺の観測地点の湿度も80%以上と湿っています。これは、低気圧の前面に、南より暖かな気流が流れ込んだことが原因でしょう。

より、現場付近は南東風や北西風が混在し風向はまばらで、風速は弱めになっています。ヤフーHPより引用の発生現場の北海道佐呂間町付近の地形図を見てみると

Mk_map_1 ご覧のように、現場付近では、南東方向や南西方向に開いた谷が合流している、複雑な地形であり、現場付近では、いっそう、風向が定まらず、水平方向のみならず、鉛直方向でもシアー(変化)が大きい状態であることが推定されますね。

より、寒冷前線が通過する直前の北海道稚内5500メートル上空で-20℃以下と、この時期としてはかなり強い寒気が入っており、鉛直方向の風向分布より、その寒気が、どんどんと上空に流れ込んでいる状態(寒気移流)ですので、寒冷前線が現場付近を通過した時刻頃は、地表(湿度80%以上ありました)と上空との気温差が大きく、大気が不安定な場であったことが推定されます。

このような大気の状態の現場付近に、寒冷前線に伴う積乱雲が通過し、竜巻をひきおきしたといえます。

ところで、昨日のNHKニュースウォッチで、気象キャスターの平井信行さんもおっしゃってましたが、現場付近は、過去、竜巻は殆ど発生していない地域でした。日本で、竜巻に発生頻度が多い地域は ①沖縄県 ②伊豆諸島を含む東京都 となっていますが、今回の竜巻は、この、過去前例のあまりない地域に発生して、その規模も、F3程度と、国内最大級のものでした。

参考に、竜巻の規模を表現するランクとして、藤田スケール(気象学者の藤田博士が作成したものです。気象庁HPより引用抜粋)一覧表を紹介いたします。

<藤田スケールとたつまきの強さ >
  階級 風速 被害状況
  F0 17-32
[m/s]  煙突やテレビのアンテナが壊れる。小枝が折れ、また根の浅い木が傾くことがある。非住家が壊れるかもしれない。 
  F1 33-49
[m/s]  屋根瓦が飛び、ガラス窓は割れる。また、ビニールハウスの被害甚大。根の弱い木は倒れ、強い木の幹が折れたりする。走っている自動車が横風を受けると、道から吹き落とされる。
  F2 50-69
[m/s]  住家の屋根がはぎとられ、弱い非住家は倒壊する。大木が倒れたり、またねじ切られる。自動車が道から吹き飛ばされ、また汽車が脱線することがある。
  F3 70-92
[m/s]  壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車が持ち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半は折れるか倒れるかし、また引き抜かれることもある。ミステリーが起こり始める。
  F4 93-116
[m/s]  住家がバラバラになってあたりに飛散し、弱い非住家は跡形なく吹き飛ばされてしまう。鉄骨づくりでもペシャンコ。列車が吹き飛ばされ、自動車は何十メートルも空中飛行する。一トン以上もある物体が降ってきて、危険この上ない。あちこちにミステリーが起こる。
  F5 117-142
[m/s]  住家は跡形もなく吹き飛ばされるし、立木の皮がはぎとられてしまったりする。自動車、列車などが持ち上げられて飛行し、とんでもないところまで飛ばされる。数トンもある物体がどこからともなく降ってくるし、また被害地はミステリーに満ちている。

最後に、追伸ですが、YYさんのご質問の件、まったく根拠のないことですよ。どなたが、そんなこと言われたんでしょうかね?(苦笑)

内陸部でも、都市部でも条件が整えれば、竜巻は発生する可能性はあります。


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2 コメント

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ごぶさたしていま~す。ここ1週間。本当に竜巻とか... (みなこ)
2006-11-13 00:50:17
ごぶさたしていま~す。ここ1週間。本当に竜巻とか大雨とか多かったですね。
11日は、成田空港では濃霧でしたし。
竜巻が多い地域が全国で2番目に東京都があるとは・・・ 私知りませんでしたね。
たしか、私が子供のころ千葉県の茂原で竜巻がおきましたよね。
関東地方って、竜巻は多いんですか?
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みなこ さんへ。 (カノウおにいさん)
2006-11-13 23:41:52
みなこ さんへ。

こちらこそ、ご無沙汰で~す!(笑)
フライトはいかがですか?異常気象が多いからね。運行には支障でませんでしたか?

さて、竜巻の件ですが、要は、発達した積乱雲が竜巻の引き金になりますから。その積乱雲が発生し易いところが、竜巻の達成しやすい箇所ともいえそうですね。

また、関東地方ですが、ずばり、竜巻の発生は多い地域です。

竜巻の発生要因の一部分に、本ブログの記事でも書きましたが、地表と上空との鉛直シアーが大きい(平たく言えば、地表と上空とで気流の流れのコントラストが大きい。と言えましょうか)ことがあげられますが、関東地方は、東海上の海流の影響で、南海上からの気流が入っても、関東内陸部では、その気流の流れが弱めとなり、風向もまばらとなってしまう場合が多く、ひとつの事例として、このような気流の状態の所へ、台風が接近し、関東の南海上から台風を取り巻く雲(積乱雲です)が、関東平野特に内陸部に入ると、前記した、上空と地表との鉛直シアーが大きい状態ですから、竜巻が派生しやすくなります。また、本ブログで再三紹介した、沿岸前線 発生時も、気流の鉛直シアーが大きい状態となりますので、竜巻の発生率は高くなりますね。

実際、台風接近時で、台風の進行方向右側前面(第一象限と呼んでいます)に関東地方が入り、前記した、気流の状態(内陸部で風速弱く風向まばら)、竜巻の発生をまず疑って良さそうです。実際に、前記した気象状況時に、関東地方では、竜巻発生および、竜巻と確認できなくても、竜巻のような突風が吹いた事例が、必ずと言って良いほど発生しているんですね。

みなこさん ご指摘の、平成2年12月の千葉県茂原の竜巻も、件の 沿岸前線 上で発生しています。
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