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親友Kへ。2次ケーデンス(セカンダリドミナント)についての説明。

2012年06月10日 07時16分06秒 | what's New Today

親友Kへ。二次ケーデンスについて

以前のツイートで「バッハは二次ケーデンスの名人だった、だからベースラインが動くようになり、対位法が生まれた」
という説明を菊地成孔さんのメソッド講座で聞いた話を書いたら、クラシックの演奏家をやっている親友Kから説明を求められたので、それを書いておきます。
これはジャズ理論の「バークリーメソッド」の講義、および独習によるもので、間違っている場合すべて私の責任ですので。ご了承くださいね。

※「二次ケーデンス」は僕が通っているジャズトランペッター原朋直さんのレッスンでは

同じことを「セカンダリドミナント」と言っていました。同じ内容だと思います。

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 ●ケーデンスとは。
クラシックだとカデンツァというのではないだろうか。
起立、礼、着席の音楽。
C-G7-C.
この和音の動きが持っている動的なエネルギー。
それがケーデンス。あるいはドミナントモーションともいう。
西洋の伝統的な音楽はこのケーデンスを曲の動力としている。

理由は
G7(ドミナント、または属音)の時には非常に不安定な響きがある。その不安感が、Cに戻ることで解消される。これが曲を動かす動力となっている。(ドミナントモーション)

 

●1次ケーデンスとは。


ケーデンスはドレミファソラシド、というCの環境内には1カ所G7-Cしかない。これを一次ケーデンスという。

●2次ケーデンスとは

V7→I、あるいはV7→Im
という動き(ドミナントモーション)は非常に強いので、

(なぜ強いかは音響学的に説明できる)

これを利用し、あるコードをIと仮に見立てて、

そのV7(ドレミファソラシドの環境外の)から動かす、ということをするようになる。

これが二次ケーデンス。


たとえば上の図の場合、
A7はドレミファソラシドのコードからは導き出されないコードだが、DmにいくV7として入ってる。そのためド#が和声には入る。
これはこの1小節だけ一時的に転調していると考えることもできる。この時にベース音がド#になると半音して上向するベースラインができる。
これはドレミファソラシドの環境だけでは出てこないベースラインになる。

つまり
●ケーデンスとはCでいえばG7→Cの動きである。
●一次ケーデンスはG7→Cしかない。これはドミナントモーションともいう。
●二次ケーデンスはドミナントモーションの力を利用して、Cの環境にない和音をもってくることができる。
たとえばC→A7→Dm7、G7という構造。
●二次ケーデンスはどこまでも増設できる。G7→C7→F7→B♭7とどんどん4度で動いていくこともできる。

ということであります。

違っていたらスイマセン。

※以降は菊地成孔さんのレクチャーを聞いての自分の推測。
バッハまでの前期、中期バロックまでは二次ケーデンスがなく一次ケーデンスだけで曲が作られていた。
低音部は主にドローン(通奏低音)が演奏されていて、キー(主調)を明示する役割を果たしていた。
そのため、低音部がメロディアスに動くことはなかった。
バッハが二次ケーデンスを導入して、短い単位での転調が入るようになり、
低音部は以前よりずっとダイナミックに動くようになる。
それが発展して、メロディと対旋律という対位法的なアプローチが可能になってくる。

ということではないだろうか。

※ジャズのケーデンスはIIm7を伴うことが多い。
つまりDm7-G7- Cと動く。
このDm7はバロックでは用いられない。
IIm7が入ると急にジャズっぽくなる。


●用語解説。
【前提としてのダイアトニックコード】
キーをCのメジャー(ハ長調)で考えたとき、
ドレミファソラシド、これを三度ずつ4つの音を積み重ねると
(ピアノで言えば白鍵だけを一つ飛ばしで押せば)
C、Dm7、Em7、F△7、G7、Am7、Bm7♭5
という7つの和音ができる。
これをダイアトニックコードという。

憂鬱と官能を教えた学校
菊地 成孔,大谷 能生
河出書房新社
憂鬱と官能を教えた学校 下---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 旋律・和声および律動 (河出文庫 き 3-2)
大谷 能生,菊地 成孔
河出書房新社
憂鬱と官能を教えた学校 上---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 調律、調性および旋律・和声 (河出文庫 き 3-1)
菊地 成孔,大谷 能生
河出書房新社


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1 コメント

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さすがです (ひとみん)
2012-06-12 05:39:49
楽典にお詳しいのですね、わたしはいろんなこと忘れちゃってもう譜面も読めないかもしれません(笑)
FBではありがとうございました。どうぞよろしくお願いします!
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