ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

シーズン一発目!:思わぬ出会い!

2017年04月04日 23時31分35秒 | Weblog
避難小屋へと戻り、下山に向けてのパッキングを終え後は山を下りるだけとなった。

「なんかもう一泊したいくらいの天気ですね」
「そうなんだよ、わかるよその気持ち。天気の良し悪しってそれくらい気持ちが左右されるんだよなぁ。」
何度登っても、何年登り続けてもモティべーションは天候で左右されやすい。
ましてや100%のピーカンともなれば尚のことだ。


小屋の入り口に立てられている指標。
「エビの尻尾」が見事なまでに発達していた。
それだけ風が強いポイントであることの証拠なのだが、昨日到着した時には見落としてしまっていた。


10:30分に下山開始。
たった一泊の避難小屋であったが、どれほどの強風であっても一切の風の侵入を許さず、快適にそして安全に一夜を過ごさせてくれた。


今日はかなり暑くなりそうだ。
12月の年の瀬間近ともなれば、平地でも日中は手がかじかむ程の寒さだが、たとえ雪山であっても動いている時は相当の大汗をかく。
そして休憩時ともなれば汗冷えに襲われる。
常にその繰り返しなのだ。


「墨絵」はモノトーンの描写だが、もし青い墨汁があればその一色の濃淡だけで描くことができそうな世界だ。
幾重にも重なっている峰峰が美しく、思わず見とれてしまった。

と、その時だった。
「○○さ~ん!と、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「ん?AM君はまだ俺の上にいるし・・・誰?・・・どこから?」
周囲を見回していると再び「○○さ~ん!」と自分を呼ぶ声。
それはこれから登ってくる登山者の呼び声で、下の方からだった。

手を振っている。
顔は・・・よく見えない。
自分も近づいてみると・・・。
「えっ! えっ! Tさん?! Tさんじゃないですか!」
山仲間とも言える知人のTさんが単独で登ってくるのがわかった。

彼は登山をこよなく愛しているだけでなく、山そのものを愛し、畏怖心や畏敬の念までも持っている正真正銘の山男だ。
それだけではない、山に関わる人たちへの感謝の気持ちも決して忘れないジェントルマンでもある。

「いやぁー昨日から一泊で登るって知ってて、ひょっとしたら会えるかなぁって思ってたんですよ。良かった良かった! 会えて良かったです!」
自分も嬉しい。
自分と彼だからこそ分かち合える山での出会いが、これほどまでに嬉しいものなのかとしみじみと思った。

Tさんは日帰りでここに来たそうだ。
名残惜しいが、お互いに逆方向に向かって別れた。
別れてしばらくしても、不思議な清々しさが残った。

山頂のロープウェイ駅に着きアイゼンを外した。
ゴンドラの窓からつい数時間前に自分たちがいたポイントがはっきりと目視できた。

AM君にとっては初めての雪山登山だった谷川岳。
本来であればもう少しレベルを下げて挑むのが筋であろう。
しかし、敢えてここを選んだことで見えてきたものもある。
「ひょっとして彼なら八ヶ岳も・・・。しかも北横岳とか天狗岳とかじゃなくて、思い切って赤岳とかでも・・・。」
単独ではまだ無理だろうが、自分が一緒で彼の体力と技術習得の早さであれば・・・。
そんな思いがした。