ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

最後の残雪登山:360°雪景色

2013年07月30日 20時44分32秒 | Weblog
室堂ターミナルに到着し、先ずは腹ごしらえをした。
とは言っても、前日の夜コンビニで買ったおにぎりとパン。
朝食と昼食については贅沢は言えないが、今夜の夕食は「劔御前小舎」で豪華なメニューを期待できる。
登山における大きな楽しみの一つはまぎれもなく「食」だ。
それを楽しみに雪山を登ろう!

すべての準備、身支度は整ったが、最後に重要な手続きが残っている。
「登山届」の提出だ。


やはり事故の内容が記されていた。
自分たちが明日縦走する予定のルートでは、2件の滑落死亡事故があった。
その文章を目に焼き付けた。
「安全はすべてに最優先される」
これはよく工事現場などにおいて掲げられているスローガンだが、当然登山にも共通するものだ。
楽しさの裏にひそむ危険を決して忘れてはならない。
笑顔で帰宅し「ただいまぁ!」と言わなければならない。

気を引き締め直し、いざ表へと出てみた。
「ウオォ~~!すっげぇ~!」
どこもかしこも雪だった。
ついさっきまでの緊張感は何処へ・・・。
情けないかなすっ飛んでしまった。


今日は「雷鳥坂」をひたすら登攀し、別山乗越へ向かう。
全体の8割は登りだが、ゆっくり登攀しても14時過ぎには小屋に到着できる予定。
明日の立山縦走に向けて英気を養いたい。


残雪期とはいえ、やはり北アルプスはスケールが違う。
思わずため息が出そうな程に美しい山脈(やまなみ)に目を奪われっぱなしだった。

アイゼンはまだ装着せず、雷鳥平までは「つぼ足」で進むことにした。
この辺りですれ違う人達は全員が観光で訪れている人達だった。
スニーカーならまだましで、なかにはハイヒールで歩いている強者もいた。
「あれ、やばいよなぁ。濡れるだけじゃ済まないよ」
そんな会話をしながら先を進むと、遙か先の稜線のコルに小屋らしき建物が見えてきた。
地図で確認する。
「りょうちん、あれだよ。あの小屋が今夜の宿だよ。」
・・・しばし沈黙。
「と言うことは、あの雪渓をこれから登るってことかぁ。」

見事な雪の坂道だ。
5月に入ってからろくに登山らしい登山をしていない。
半月山に二度登った程度だ。
ましてや体力作りも今回のためにやったことは「スクワット」程度。
正直言って不安は自分にもある。
「まぁ今日は時間があるからゆっくり登ろうや!」
それは自分自身にも言い聞かせている言葉だった。

よく見ると、左奥の方に別の山が見えた。
「あの形って・・・劔かな。」
自信はなかったが、劔の形状を忘れるはずはない。
一度ゆるみかけた手綱がもう一度引き締まる瞬間だった。

「みくりが池」にほど近いところで、雷鳥を見た。
いて当然の天然記念物ではあるが、常に会えるとは限らない
雪山をバックにした雷鳥に、これから始まる雷鳥坂の登攀に思いを馳せる。

「雷鳥さん、ありがとうね♪ 元気をもらったよ!」