初めて歌舞伎を観た人がまず興味を惹かれるのが、大向こうさんの掛け声だろう。芝居のポイント、ポイントで、タイミングよく役者の屋号を叫ぶ、あの、熟練の合いの手だ。
歌舞伎を観に行ったら、小学生くらいの男の子が、お母さんの隣で目を輝かせて舞台を見つめていた。歌舞伎のお家の子かなぁと思っていたら、次の幕間に、「あの、ナントカ屋ぁ~!って声、かっこいいねー」
小鼻を膨らませてコーフンしていた。
これに返したお母さんのセリフが耳に入って、ヒイラギひそかに大爆笑。「あんたのも作ってもらったら。―“わからず屋ぁ~!”」
ナイス返しよ、お母さん。
さて、自分に屋号をつけるとしたら、なんじゃろ?
〝がんばり屋ぁ~!〟 ―いや、ちがうな。たまにしかがんばらないからな。
〝オタク屋ァ~!〟 ―イヤ、チガウナ。放浪癖モアルカラナ。
さしずめ、
〝きまぐれ屋ぁ~!〟
てとこか。
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