舞台にパーフェクトは無い、と思っている。
同じ曲でも弾くたびにニュアンスは変わるし、あらゆる細部まで会心の演奏ができることって、まずない。
思ってもみない箇所を間違うこともあれば、カンペキに弾けたはずなのにどうも心持がよくないことも多々ある。
弾くたびに自分のコンディションも違うし、演奏者が生きものなら、その奏でる音楽も生きものだ。
とはいえ、あきらめているわけでもなく。
むしろあきらめは悪いほうかも知れない。
やっぱりその日そのときの自分にできる最高の演奏をしたい。
今日も今日とて、同じ曲を何か親の敵でもやっつけるかのようにひとしきり練習しまくる。
練習しまくって、突然ぱたんと止める。
そこから本番まではもう触らない。
最後のあがきは、決して悪あがきではいけない。それがヒイラギ流。
いよいよ明日が本番。
最後の1回の演奏は、自然と、野となり山となってくれるハズ。
日時 平成19年4月1日(日) 十一時開演
場所 東京証券会館ホール(茅場町)
東京メトロ日比谷線/東西線 茅場町駅中央改札 8番出口直結
終演予定が六時ごろ。
新名取披露の曲は、五時すぎごろの見込です。
地歌筝曲に関心ある方はぜひお運びください。
午後三時ごろからは、聴き応えのある曲が続くと思います。
半月ほど前だったか、地下鉄に乗り合わせた女性の二人組。漏れ聞こえる話の雰囲気から、二人とも派遣ワーカーらしい。昨日の新聞でも大きく取り上げられていた、正社員と同じ職務内容の派遣ワーカーの、正社員との待遇格差。彼女たちの話はその実例のようだった。
二人のうちの一方が、正社員を置かずに、正社員よりも低い時給で派遣ワーカーばかりを雇う方針の会社に派遣されているという。
会社側にしてみれば採算性を重視した結果なのだろうが、そこで働く者からみれば、やはり「その会社で働く意味がわからない」ということになるのだろう。採算だけはとれても、それは労働の質の確保という意味では、疑問だ。彼女の不平不満は、正当だ、と思いながら聞いていた。
しばらくして、話は意外な方向にズレていった。
くだんの彼女はこううそぶく。
「絶対に定時に帰れて、残業はないんだけど、仕事の中身が濃いんだよね」
もう片方の彼女がはげしく頷きながら、一言こう言った。
「やっぱり、仕事はラクなほうがいいもんねえ!」
あれっ? いや、そういう話だったの?
派遣ワーカーって本来、専門スキルを売る人たちのことだもん、仕事の中身は正社員と同じに濃いものなんじゃ??
いつのころからか、派遣と臨時雇いがいっしょくたにされている気がしてならない。
折しも、非正社員と正社員の月給格差が開いているという厚労省調査の結果が報道された。
アルバイトやパートが含まれていることも一因だろう。でも、それよりも。
専門スキルを有さない派遣ワーカーも、
高度な専門職としての派遣ワーカーも、
単なる有期雇用の契約社員も、
高度な専門職としての契約社員も、
ぜんぶぜんぶひとからげにされているせいで、派遣ワーカーの時給が低く抑えられてしまっているのではないのかなぁ。
そんな気がしている。
今年の風邪は、いやらしい。
熱はじわ~っと上がり、しかし最高でも38度までいかない。氷枕に冷却パッドで冷やしつつ、もう3月だというのに電気行火(あんか)の目盛を「強」にして毛布と布団にくるまる。
二晩二日の間、熱は37度台で停滞して、頭痛と熱っぽさで、じっと寝ていてもちっとも休まらない。
二日めの夕方、ようやく熱は37度ちょうどでゆらっと不時着した様子だった。週末には起きられるかと少し、安心した。そこへ、第二波がやってきた。
下腹に痛みがあった、その原因らしきゴロゴロ小僧が、熱と入れ替わりに暴れだした。お茶を飲んでも、おかゆをすすっても、少しお腹にものが入るたび、長特急でゴロゴロと出ようとする音がする。こまめにトイレに通っても、そのたび、小用じゃなかったハズなのに、ほとんど水ばかり。
一晩と一日、ゴロゴロ小僧は暴れ続けた。
あらゆる予定をすべてキャンセルして、春分の日から次の月曜日まで6日間のダウン。風邪はひいても、たいてい週末や夜の間に熱にうなされ、翌朝すっきり治ってしまって仕事にでかけていた殊勝な体質のヒイラギとしては、これまでにない長さのダウンである。
熱は下がったし、ゴロゴロ小僧は出て行ってしまったし、ようやく仕事復帰、と、思いきや、軽い頭痛が依然として残ったまま一日デスクで仕事していると、午後のおやつタイムを過ぎたあたりからぽわぁ~っと体温が上昇してくる。4時を回ったあたりでふたたびみたび37度の微熱が復活。
これはイカン、と、早退して、残務を自宅ベッドでこなす、ということを二日間繰り返した。
さすがに上司から「無理して出てきたら罰金」メールが届き、ついに今週いっぱい自宅勤務。食欲はようやく回復してきたものの、いやらしいまでのしつこさの、今年の風邪である。
ダウンしながらも、研究には余念がない。最初に平熱にもどった夜、すかさずニンテンドーDSをとりだし、『やわらかあたま塾』に勤しんだ。
進歩は不意に訪れる。結果、「2325グラム・ケンチクカあたま」。熱であたまがやらわかくなったのか、突然、「名人」からついに「柔王」に昇格した。
そして今日、午前中ひとしきり仕事をして、昼食後のひととき。休憩がてらふたたび『やわらかあたま塾』。本日の結果はまたまた進歩。「2334グラム・ダビンチあたま」。
寝込んでも、タダでは起きないヒイラギ。今年の風邪のいやらしさと引き換えに、やわらか度109グラムアップ。あっぱれだしょ。
職場主催のちょっと面白そうなワークショップがあったので、逆ギレマンの了解を得て参加してみた。
「心の豊かさ」がテーマの科学技術政策ワークショップ。
これだけ聞いて、どんな話か想像がつく人は少ないだろう。
先週までの国際会議騒ぎで宣伝が十分に出来なかったこともあって、参加者20名そこそこ、というこじんまりしたワークショップだった。
でも、なかなか面白かった。
科学技術には2種類ある。
生活を便利にして余暇とかレジャーのための時間を生み出してくれる科学技術と、ゲームみたいに時間を消費させる科学技術。
一般の家電製品のように壊れたときに買い替え需要が起こる科学技術と、携帯電話のように新たな機能が加わることで買い替え需要が起こる科学技術。
なるほど。どちらも納得的。
そして、心の豊かさにも2種類ある。
欲求が満たされて得られる心の豊かさと、欲求が満たされなくても得られる心の豊かさ。
たしかに。
それでは、心の豊かさを得るために、科学技術と人は、どんな風に関わりあえばいいのか。
そんな壮大な、そしてもしかしたら哲学的に深遠なテーマで、基調講演が2題とみっちり2時間半にわたるパネルディスカッションだった。
オーガナイザーの先生がその場で整理できないくらい色んな論点が抽出されて、二十一世紀の科学技術のあり方を考えるヒントもたくさん挙がった。
そこでヒイラギ思ふに、こりゃーモノづくりと人づくりのリンク点をさぐる研究では。
パネラーの一人によると、こう言い換えられる――浮世と浮世ばなれの接点。
面白いぞ。現(うつつ)と夢のリンク。
春分の日も間近だというのに、二日連続で降雪が観測された東京。
しかも昨日は史上まれに見る遅い初雪。
三月も半分以上過ぎてからのこの寒波到来は、記録的な暖冬をもたらしたエルニーニョ現象が終息したためだとか。
気象予報士の解説をききながら、自然現象にはかなわない、とつくづく思ふ。
だって、エルニーニョ、だよ。
こんな威力で、〝がきんちょ〟なんだよ。*
これがおとなの自然現象だったら、一体どんな冬だったんだっ!
* エルニーニョ(el nino)とは、スペイン語で「子ども」「少年」
年末からお正月にかけて、帯状疱疹にかかってたヒイラギ。
炎症がおさまって二週間ぐらい経ったころ、通院はおしまいになりました。
お医者さんからは、
「しばらくは、ピリピリしたり、しびれたり、が残るかも知れませんけどね」
と、クギを刺されていました。
それから3ヶ月。
いまだにしびれる左手の半分と背中の炎症痕。
先生の言ってた「しばらくは」ってのは、こんなに長いのかなぁと、ぼちぼち不安になり、久々にクリニックへ。
意外に診察は1分で終了。
「もうしばらく、メチコバール飲んでないといけなかったね。あと1ヶ月分、お薬出しておきましょう」
んー。簡単すぎ。
3ヶ月経ってもしびれるのは、「珍しいことじゃありません。大丈夫ですよ。」と聞いて安心はしたけどさ。
さて、この“メチコバール”。正体は、ビタミンB12なのです。
ビタミンB12は、人のからだの中で一番少なくて、赤血球のもとになるビタミンです。
血のもとになるから、「赤いビタミン」とか呼ばれるそうです。
悪性貧血の人が、せっせと摂取しなくちゃいけないビタミンです。
体内にも少ないけど、必要量もとっても少ないビタミン12。
よほどの偏食か菜食主義者でもないかぎり、欠乏することは珍しいといふビタミン12。
それすらも足りてなかった、この3ヶ月。
めばーる美味しい~♪などと言ってる場合じゃなかったらしい。
足りなかったのは、“メチコバール”、ね。
過労。花粉。風邪。
3つの「か」、の一日。
朝起きる前から鼻づまりと咳と頭痛。
からだが温まり始めるとともに、やってくるのは連続クシャミ地獄。
クシャミ、鼻水、咳、頭痛。
気が遠くなりながら、ともかくも仕事を終えての帰り道。
いつにもまして重い足取りで駅のホームを歩きながら、
いつものように売店の新聞スタンドに目をやった瞬間、
咳もクシャミもぴたりと止まり、パッと意識がはっきりした。
視線の先には、本日の大きな見出し。
『妖怪ゴム人間』
さすがTスポ。 このインパクトよ。
二日連続の国際イベント開催は、みんながみんな“異常”事態だった。
カオスにもほどがある状態からようやく解放され、撤収の荷物を積んでオフィスに向かってひた走るタクシーの車内には、同僚3人と、ヒイラギ。
1人が、腑に落ちないという様子で話し始めた。
連続9日間も早朝から深夜までの勤務になっている同僚たち。見るに見かねて、明日にも非常勤の二人はお休みを取らせてもらえるように、と総務の人にお願いをした。それがイベント司令塔(故障中)の逆ギレ男の耳にどこからか入り、予想どおり逆ギレされた、と。
それも、逆ギレの矛先は、直接ではなく、非常勤さんに向けられた。どうして(休みたいなら休みたいと)自分に言わないで他の人に言うのか、とえらい剣幕でプライベートのケイタイに電話をかけてきて、同僚が電話を代わると、「このイベントの間の出来事の中で最も腹立たしい」とまくしたて、最後にこう言った、と。
「こういう仕事のやり方は、プロとしての意識に欠ける」
しかしこの逆ギレ本人、
週明けに迫るイベント陣頭指揮をほっぽりだして、金曜に休みを取り、
マイレージを使って週末旅行にでかけ、
はしゃぎすぎてギックリ腰で救急車に乗り、
使い物にならない状態で帰ってきたうえに、
二日間のイベント本番のうち半日は病院に行って不在、
などという、社会人として考えられない非常識の極みをやってのけた。
その男の言い分が、
「こういう仕事のやり方は、プロとしての意識に欠ける」
二日間立ちんぼで東奔西走してくれたもう一人の非常勤さん。いったん座るときっと立てなくなるから、と、最後まで黙々と役目を果たし続けた。
周りから「明日はお休みできるんでしょ」と労わられた彼は、遠慮がちに、そして背筋を伸ばして、こう言った。
「じゃあ、これから職場に戻ってメールをチェックして、次の会議までの仕事の状況を見て、もし大丈夫でしたら、明日の午前中だけはお休みさせてもらうかも知れません」
素晴らしいプロ意識ですね、というヒイラギに、車中の同僚はみな大きくうなずき、非常勤さんは少しはにかんだ。
皆さんと別れ、遅い夕食をとりに行きつけのレストランに立ち寄った。
いかにも入りたての、初々しいウェイターさんが注文をききに来た。
パスタと、サラダと、グリーンピースのスープのセットを、と頼むと、申し訳なさそうに頭を下げた。
「本日はセットのスープがミネストローネしかないのですが」
セットじゃなくて、グリーンピースのポタージュだけならありますか、とためしに訊いてみれば、それもないらしい。残念。
それじゃ、ソフトドリンクでいいです、とオーダーした。
しばらくして、息をはずませてウェイターさん再び登場。
「お客さまっ、単品でよろしければ、1つだけならグリーンピースのスープをお作りできるそうなのですが」
ダメモトで、厨房に訊いてくれたようだ。たくさんの客の中の一人のささやかな希望。かなえてあげられないかとトライしてくれたまっすぐな真心が、なんだかとても嬉しかった。
それじゃ、単品でぜひ、お願いします、ありがとう、と追加注文をした。
運ばれてきたグリーンピースのスープは、とても美味しかった。プロの味がした。
このあいだは空中散歩を楽しんだわが家の同居人HONJAMACA。
http://blog.goo.ne.jp/hiiragi_m/d/20070217
じつはひとり暮らしではありません。仲良しさんとふたり暮らし。
この仲良しさんの名は、MACH(まっは)といいます。
キンギョ族の人たちは、からだの形で3種類に分けられるそうです。和金、琉金、蘭鋳。
和金は、ふつうのお魚の形で、しゅっとしてる人たち。
琉金は、ちょっとふっくらしてて、ひらひらの人たち。
蘭鋳は、琉金と親戚で、目の上がタンコブな人たち。
丹頂のHONJAMACAは、本当なら蘭鋳タイプだけど、ハゲちゃって以来、目の上は非常にスッキリして琉金に先祖がえり。
でも、どっちにしても体型はふっくら丸っこいので、ちょっと油断すると寝ている間にからだがタテ向けに浮き上がっていきます。
朱文金のMACHは、すらりとした和金タイプなので、ところせましと猛スピードで泳ぎ回っては、疲れると静かに隅っこで横になって眠ります。
安定感バッチシです。
MACHの安定感に目をつけたHONJAMACA、ちかごろはうまい具合に話をつけたらしく、MACHとふたりで安定して眠る、という芸(?)を身につけたようで。
鼻先にMACHをのっけて、タテに浮き上がることもなく調子よくうたた寝しています。
MACHはていよく“重し”にさせられているよーなもんですが、ま、べつにいやがる風もなく、仲良しぶりをアピールしております。
ま、HONJAMACAのほうが、主人さまに似てお調子もの、てことですかね。