わたしは、バリウムが、きらいだ。
タイトルから1行目にたたみかけるぐらい、キライだっ。
お昼ごろからずぅっと頭が痛いのはバリウムを飲んだせいだと思ってたぐらい、きらいだ。
夜、家に帰って天気予報を見たら、「100%雪」などという荒天が近づいていたから、
しぶしぶ冤罪だったことは認めたけど。
去年は、途中で飲むのイヤになって、飲み続けてるふりして「ふー…」と一休みしてたら、
ガラスの向こうの先生が、
「ハイ、もうちょっとだけがんばろうねー」
バレてた。
今年は、一休みしようと思ったら台がガタン、て動いたので、
ちょびっとだけズルして吹き出して、しかも検査が始まる前に軽くげっぷまで出させてもらった。
それでも十二分にげんなりしてたらしく、検査着には点々と白い痕跡だわで、
血液検査の看護師さんが一目見るなり、
「大丈夫ですか? ご気分、悪くないですか?」
慰めるような苦笑い付きで。
下剤を飲まされたゆるめのお腹でそのまま出社して、
イベント会場の音響チェックと、データ分析の打合せがみっちり2時間。
今日はいつにもまして、周りのみんなが優しかった。
通勤電車に揺られて都心のクリニックまで行って測った血圧は100を超えるのがやっとこさで、
去年より、背が1ミリ伸びてた。
ダンナさまが検査入院されて毎日のように病院に通うようになったとある知り合い。
若くてきれいで優しい看護師さんにお世話してもらってほくほくのダンナさまを見て、
「くやしいから、私が具合が悪くなって入院生活をすることになったとしたら、
お医者さんも看護師さんも、若いきれいな男の人でずらりとそろえてやるの」
それを聞いたご家族が、
「そんなことしたら、どんなに具合が悪くっても、
寝ても覚めてもきれいにお化粧して緊張してなきゃいけないから、私はいやだわ」
ふふ、この母娘、面白い。
わが家には、“雪晃”という種類のサボテンのほかに、
もうひとり、“パーティードレス”という名の多肉植物くんがいる。
肉厚の葉の、すこーし赤みがかったふちはレースのようにふりふりってなっていて、
そういう形状の葉が花びらのように重なっている。
お花屋さんの店先の鉢植えがなんともいえず可愛らしい姿をしていて、
思わず衝動買いして帰ったのが、たぶん3年くらい前の話。
当時のウチの子にいちばん近い姿がこんな感じ。
この品種、個体によって色合いもふりふり具合もさまざまで、やっと見つけた一枚。
(http://ameblo.jp/vanilla-days/entry-10716624505.html からお写真拝借しました)
しかーし。
ここ1年ほど、忙しさにかまけてびっくりするぐらい水やりをさぼりまくった結果、
去年の暮れには見るも無残な丸ぼうず。
せめてもの罪滅ぼしに、年が明けてからはリハビリ的に水やり再開したら、
なんと! 息も絶え絶えに見えた乾ききった茎から、新しいイノチがっ!
なんとも、生命の力というのは、感動的。
春になったら、もすこし大きなところに引っ越しますかね。
うちのカイシャは、某大学のメインの校舎とは別棟のビルにある。
ここは大学発ベンチャーが入居しているフロアなので、
カイシャ宛てに届く郵便物は、大学の職員さんが各ラボに届けてくれる。
ここ何カ月か、決まってお昼過ぎに郵便物を持ってきてくれる女性は、
ラボの入り口をノックしてからちょこっとだけ開けて、
「郵便でーす、置いときまーす」
と、ぺっ、と郵便の束を置いてそそくさと去って行っていた。
年恰好のわりに、イマドキの、“ごあいさつがニガテ”タイプかな~って気はしてたけど、
いちおう職責は果たしてくれているので、ま、別にいいけどさ、と思っていた。
そのカノジョが、今日は封書を一通だけ胸のあたりにたずさえて、
息せき切ってやって来て、
「あの、ヒイラギさん、いらっしゃいますか?」
スタッフに仕事の指示をしている手を止めて振り向くと、
すたすたとこちらにやってきて、郵便です、と両手で封書を差し出した。
これまでにない、絵に描いたようなご丁寧で確実な手渡し。
はい、ありがとう、と受け取ったら、
「失礼します!」って一礼して事務室に駆け戻って行った。
なにゆえにカノジョのあの態度?と、目の前にいたスタッフも、きょと~ん。
渡された封書を見ると、非常勤をやってる国立大の封筒で、差出人は人事課。
しかも、書留でも、速達でも、なんでもない、ただの普通郵便。
なんだろな。
もしかして、よもやヒイラギが国立大学で教えてる人だとは夢にも思わんかった、みたいなことか。
零細ベンチャーの事務アルバイトか、先生の秘書の人だと思ってましたすいません、みたいなことか。
たしかに、どこのロシア人だ、みたいなカッコで出勤しとるけれども。
(だって、先生にも「その毛皮の帽子、似合ってるね」って言われてるし♪)
たしかに、毎朝、湯沸しポットにお湯くんだり、帰る前に自分でマグカップ洗ったりしとるけれども。
ま、福祉分野の事例研究なんかしてる身としては、
必要以上に人様に威圧感を与えるよりは、
ナメられてるぐらいのほうがいい仕事ができるんじゃないかと、自分では思っている。
「ヒイラギさん、お疲れじゃないですか?」
「たしか去年は、翌日は休んでおられたと思いますけど」
『ルチア』本番の翌日から、いつもどおりに出勤しているのを見て、
同僚がとっても心配そうに気遣ってくれた。
そういえば今年はやけにオペラシーズンの日々がめまぐるしいなと思ったら、
公演日が例年より2週間ほども遅かったんだった。
いつもなら、オペラの後は少しまったりできる期間があって、
一息ついてから、怒涛の年度末&温習会リハーサル月間に突入だったのだけど、
今回はオペラが仕上げに入るころには、もはや年度末の繁忙期。
――疲れてはいないんだけど、なんか寒くて眠いね。。。
「と…、凍死寸前じゃないですか!」
「たいへんたいへん! 温まるものをガッツリ食べに行ってきてください!」
遅めのランチに行って、食べて、戻ってきて、
お腹がいっぱいでもやっぱり眠いんだよな~、などとつぶやきながらシゴトしていたら、
ササッと、熱~い濃い目のコーヒーが出てきた。
最近、なんだかとっても甘やかされているなーと思ったら、
「だってー、ヒイラギさんが倒れたら、このカイシャは本当に困りますー」
あーはいはい。。。
例のアンケートの集計と分散分析は終わりました。
出版プロジェクトの校正刷りも編集者に送り返しました。
明日11時半からイベント会場の下見なのも、
14時から某プロジェクトの打合せ会議なのも、
マスコミ関係の友人に頼みごとのメールしなきゃいけないことも、
週明けまでにニューズレターのダイジェスト版を編集しなおさなきゃいけないことも、
今日お話をいただいた新しい仕事の準備をしなきゃいけないことも、
来週のイベント当日は朝から晩までシステム席に張り付かなきゃいけないことも、
ぜぇ~んぶ、よぉーく分かっておりますとも。
いまいち売上増に直結しないのが玉にキズだけど、
とりあえず仕事の話が絶えないのはいいことだってことにしておこう。
このさいなんで、当分、甘やかしてもらうかな。
明日のおやつは何かな~♪
日曜の『ルチア』に来てくれた友人たちからのメールが今朝まで来続けていて。
「エドガルドさんが墓に隠れきれていないのがちょっとだけ(^▽^)ってなりました」
と書いてあるくだりを読みながら、駅までぷらぷら歩いていたら、
すれ違ったちっちゃな男の子がおかあさんに手を引かれながら、
高ーい可愛いおっきな声でお歌を歌っていて。
「どーんなーに じょーずーに かっくれってもぉー♪」
ありえないくらい絶妙なタイミングに、マスクの中で大爆笑。
カイシャにいても、ランチ食べていても、思い出すたび大爆笑。
おかげで、今日も何かといろいろ事件はあれど、一日中笑顔でいられた。
「みなさん、公演初日にして楽日、おめでとうございます!」
女声合唱の楽屋にやってきて、
そんな洒落た挨拶をしてくれる演出家のババ先生には、
ものすーごく優秀な右腕さんがいる。
いつも、「英(ひで)ちゃん」て呼ばれている。
前回の公演のときに初めてババ先生と一緒にやってきて、
舞台裏のありとあらゆることを、カンペキに取り仕切ってくれた、
頼れる舞台スタッフさん。
最後に紹介されるまで、みんな「あの人は“おばさん”だ」と信じてたくらい、
どこかで会ったことがあるような、素朴な、むやみに信じていいタイプのお顔。
一緒に写真撮ってくださいっていうと、
「え、だって作業服ですよ? あとでスーツで…」って、とっても照れくさそうに笑う。
いい意味で昔風の硬派キャラはみんなから密かに大人気。
その英さんが、今期はなんと茶髪になって登場。
なぜ、どうして、せっかくいい感じの硬派だったのにぃ…!
打ち上げには不参加だったので、
①修了証書にババ先生のサインもらってきて~♪
②アルトゥーロさんのサインも、もらえたらもらってきて~♪
ていうお願いついでに、本番当日のハイテンションなノリで、
③英さんに、なんで茶髪にしちゃったの?って訊いてきて~♪
なーんてふざけたことを言ってたら、
これまたハイテンションなノリで、ぜーんぶ快諾してくれた心優しい仲間たち。
「うん、わかったー。
英さんが黒髪じゃなかったから打ち上げに来なかった子がいますぅー、って言っとくー」
「ババ先生でもマエストロでもソリストさんたちでもなく、
英さんの茶髪で打ち上げに来るか来ないか決めた子がいます、って言っとくー」
いやいやいや、全然そうじゃないし。
で、①と②のほうがだんぜん優先順位高いし。
だいじょぶかな。。。
この調子の仲間たちだもんだから、
英さんの茶髪の理由、ホントに訊いてくれたそうな。
ウラ打ち上げが楽しみー♪
12期目まで回を重ねてきた区民参加オペラ。
今期の演目『ランメルモールのルチア』もいよいよ本番前日の今日、ゲネプロ。
一部の合唱女子が殺到する舞台中央付近では、
客席からは見えないところで、
背中を“拳で”痛いほど押されるっていういつもの嫌がらせも受けつつ。
まあ、ケガはしなかったからよしとして。
あと一回、本番で歌ったらこのオペラとも当分お別れ。
衣装を脱いで家に帰って、最後の復習とばかりに楽譜を見直す。
はさんであったチラシの裏のあらすじを、なんとなく眺めていたら。
「絶望したエドガルドは自らの剣で胸を突き、・・・」
そうか! どうも悲壮感がいまひとつ、と思ったのはそこだ。
たしかに、胸を突いたほうが悲劇的に見える。
特に、今回のエドガルドさんの場合。
いつものように、駅の近くのカフェで朝食をとって、
いつもの時刻に、目の前の改札を入って地下鉄に乗る。
3つめの駅で降りて、いつもと同じ改札口に回数券を投入。
ぴんぽーん!
平日の朝、普通の人よりは少し遅めとはいえ、通勤時間帯ではある。
自分のうしろには、ぎゅっと距離を詰め気味の人たちが、
ぴくりとも表情を変えずに無言のプレッシャー。
こうゆうの、やだなあ。
やだけど、このシチュエーションに一昨日と昨日、二日続けて直面。
さすがに3回目はゆるしてもらえないだろーと思って、
仕事帰りに、駅員さんのところに自首。
――回数券で通ってるんですけど、朝ここの改札で、二日続けてぴんぽん鳴っちゃったんです、明日もぴんぽん鳴っちゃったら周りの人に迷惑かかるし、このきっぷの磁気が変じゃないかどうか調べてもらったりできますか?
えっと、あのぅ、な感じの上目遣いで、しおらしく供述したところ、
駅員さん、二人がかりで真剣に「うん、うん、」と聞いてくださり、
残りの回数券7枚ぜんぶ、1枚1枚キカイに通して調べてくれた。
回数券はぜんぶ何ともなかったので、今度は二人がかりで質問タイム。
どの改札機でしたか、
改札を出るときだけですか、入るときは大丈夫ですか、
乗車駅の改札では変わったことはありませんでしたか、
乗車駅でいつも通るのはどの改札機ですか、etc、etc、、、
お二人の結論は―
「それじゃあ乗車駅の改札機のパンチ異常かもしれません。
すぐ○○駅に連絡しておきますから、
もしも明日も同じことが起こったら、その場で駅員に知らせてください」
なるほど、そういうこともあるのかー。
同じ駅の同じ改札機で二日続けてぴんぽん♪だったものだから、
きっぷ異常じゃなければ、てっきりこの駅のこの改札機かと思い込んでた目からウロコがぱらり。
翌朝、ちょっぴりどきどきしながら、いつもと同じ改札機を通って、
いつもの時刻の電車に乗って、3つめの駅で降りて、
いざ、いつもと同じ改札口に回数券を投入。
・・・・・・
おお! スルーだ!!
昨夜の駅員さん、ありがとうっっ!!!
素直に感動。
メトロの駅員さんて、プロだね。
オープンスペースでマックランチを食べながら話し込む、
なかなか真面目そうな男子院生ふたり。
何をテーマに語り合っているのかしらと、
そばを通り過ぎながら、ちらっと小耳にはさんでみれば。
「そう考えるとやっぱりさあ――」
(・・・ふむふむ?)
「――サイア人と地球人は違うよね~」
・・・だろうね。