絶好のお出かけ日和なるも、
午前中は家じゅうの掃除、洗濯、そしてまずは食糧買い出し。
お昼を適当に済ませてひと息つきながら会報など読んでしまい、
勢いで連休中の歌舞伎チケットを予約。
当然、常連さん向け3階席なんてとっくに完売なので、
別宅から江戸に帰ってくる片道分の新幹線代くらいのお席である。
長い休みの初日にしてこの散財。
どこ行ったって異常に混んでるだけだからあとの日は家にいなさいという神の思し召しかしらん。
年に一度の温習会本番だった先週の日曜日。
少し前からその日付が別のことでマンションの掲示板に貼られていて。
それを見て内心、狂喜乱舞したことは秘密です。
なぜならそこには、真上のお部屋の「引っ越し作業」と書かれていたから。
この十数年ひたすら耐え忍んできた頭上の生活騒音。
その大部分は、小さい子どもたちの容赦ない走り回り・飛び降り・飛び跳ね――
というよりも、じつは、深刻だった重振動音の犯人は大人のほうで。
こればっかりは本人的にはすでに染みついた生活習慣だから改善の見込みがない。
力任せのドアの開け閉めは朝飯前、
ベランダに出入りする網戸の全力ガラガラピシャーンに必殺かかと落とし。
あらかじめご挨拶もあったし「遠慮なく言ってきてください」と言われてもいたけど、
だからといって毎日毎日ピンポンしに行く手間暇かけさせられるのはこっちかよ的な負担感もあり。
ましてや子どもの足音もさることながら大人のほうが凄まじいんですけどとも言えないし。
その一家がまるっとお引越しとな!というわけで、
掲示をみたときには嬉しくて思わず小声でやったぁ♪とつぶやいてしまったのも秘密です。
ところが。
劇的に静かになってる気配ではあるけれど。
子どものバタバタどすーんも網戸の音もぴたりと止んだけれど。
無人になった様子ではない。
だれか一人(たぶん)が暮らしてるっぽい音がちょこちょこしている。
・・・・・・それって。
・・・・・・それって?
何が起こったんだろ。
今日という日はなんだか皇子な日曜日なのらしい。
今季の土曜は夕刻からがお仕事クライマックスなので、
休日を本宅(江戸)で過ごそうと思うと日曜移動。
ふつうに仕事行くみたいな時間にちゃんと起きて家を出て、
駅行きの路面電車に乗る。
腰かけた目の前に、乗り込んできた女性二人組が座る。
彼女らの色違いのTシャツの胸に「Masaharu Fukuyama」の文字。
皇子だ。
新幹線に乗り込んで今日のニュースをチェックする。
本日一番のビッグイベントは仙台でフィギュアスケート羽生選手のパレード。
皇子だ。
東京駅から“ただいま”感満載のメトロに乗り込む。
入り口付近のカップルの片割れの立ち姿が横目に見える。
レースふりふりのボウタイに袖口にもふんだんにレースふりふりの白いブラウス、
ひざの裏ちかくまですっぽり隠れる丈の鮮やかな真っ青のロングジャケット。
皇子だ。
なんだろな。
いつの世も、お伽話キャラを男性に求めているのだろか、この国の女性たちは。
遅い昼休みに大学から徒歩10分の▲オンへ。
建物に入ってすぐに▼タバがあって、
囲いの外にもフードコーナー風のテーブルがいくつか。
しゃれた丸テーブルを囲んで楽しそうにコーヒーを飲んでるのは、
3人の――
おじいちゃんたち。
1人が立って、連れに背中を向けているから何してるのかと思ったら、
残りの2人でその立ってるじいちゃんの腰のあたりを触りながら、
「ここは痛いか~?」
「いや~痛うないわ~」
伝わりますかね、このゆるい感じ。
どのじいちゃんもにこにこしてて発する言葉に“~”が入ってる感じ。
この国はのどかだ。
ダメになりそうだ。
それも胸部レントゲンとマンモグラフィーの2件。
どうせたいしたことじゃあるまいとタカをくくりつつも、
エンディングノート用意しなきゃ、などとかすかにびびってたりして。
どうゆう分類になってんのかよく分からんけど、
内科と外科でそれぞれ再検査と診察を受け。
結果。
胸のカゲは風邪ひいて治った痕。
マンモはホクロのカゲをすわ腫瘍かと過大評価しただけ。
要は、どっちも異常なし。
なんだそりゃ。なんなんだそりゃ。
多少なりとも人のことびびらせといて、
「念のため」っつー言い訳のもと余分な被曝。
そこまでするならと、
そのホクロは皮膚科で検査したほうがいいものか訊いてみれば。
「どうします? ボクには分からんけど」
なんなんなんだそりゃー!