親が厳しかったり、子どものころ転校ばかりしていたせいで、
基本的に、緊張してうまくしゃべれないタチだ。
自分では対人恐怖症だと思っている。
いっさい緊張しないで一緒にいられたのは、
後にも先にも今は亡きおじいちゃんだけ。
今は、
1歩家を出たときから再び背中でドアが閉まるまで
ずっと緊張している。
生きてるだけでストレスなわけだ。
珍しく油断してるなぁと自分で気づくのは、
窓の下の線路をすべるように走る新幹線だの、
線路の向こうの窓にびっしり並べてあるトルソーだの、
ぴかぴかの床の上をたった一人で大冒険しているアリンコ君のゆくえだの、
人の顔に見える天井の染みだの、
ランニング姿のおっちゃんがビール飲みながらTV観てるビルの一室だの、
人前でそういうことに思いっきり気をとられてるときくらい。
・・・って、これ全部、『Carmen』の稽古中じゃん。
なぁ~んか安心しちゃうんだよなぁ、マエストロの顔見ると。
悪夢の崩壊からまる2ヶ月。
新しいQuiet Comfortがわが家にやって来た♪
軽量・小型化された新モデルも出てはいるが、
耳のつき方が人とはちがうヒイラギには大きなアラウンドイヤー型が必要なので、
今回購入したのも、先代と同じQC2モデル。
先代を愛用していた3~4年の間に、なかなかの技術進歩があったみたい。
そばにいる人がケイタイで受発信したときとか、
電車が駅に近づいたときとか、
蛍光灯のスタンドを点けたときとか、
強力な電波を感知してバリバリバリッとすごいノイズが耳に痛かったのが、
2代目では一切なくなった。
すごいなー。
シャンパンゴールドだった部分が、シルバーになったのはなんだか無骨だけど、
圧倒的にクリアなノイズキャンセラも健在。
あぁ、ほっとした。
2ヶ月ぶりにBOSEで聴く「Carmen」。
Jose(Carreras)が歌う(Don)Joseはやっぱり素敵だ。
これだと3幕もラクに音取れるんだけどな~・・・
われらが『Carmen』マエストロは顔に似合わぬ低音の持ち主。
ソリストさんがお休みのときは、高い音域のところだって
メロディーの途中で器用に1オクターブ上げ下げしながら
とても正しい発声で代わりに歌ってくれる。イケメン先生
がいつも、
「マエストロみたいな感じで!」
とお手本にさせるくらい、“歌えるマエストロ”だったりする。
オペラ歌手ぐらい歌えるマエストロってだけでもすごいんだとは思うけど、
でも、それ以上に感心するのは、さすがの聴力。
みんながざわざわしてるときでも、
少し離れてほかの誰かと話してることが、
ちゃんと耳に届いてて返事されたりすることはしばしば。
『Carmen』仲間によれば、「指揮者だからね。」
とご本人も自覚してるらしい。
あっち向いてほかの事やってるみたいなのに、
全然関係ないことが聞こえてて分かってて返事までできる、というのは
この職業の人たちには当たり前なんだろーか。
窓の外の動くものとか足元のアリンコとか眺めはじめたら最後、
目の前にいる人の話すらきいてないことがあるヒイラギには、
『Carmen』の稽古時間はオドロキの連続なのである。
最後の砦だった琴の演奏も、ようやく今日からコルセットなし。
“Au revoir”ではなく、“Adieu!”と言いたいところだけど、
なにごとも、いざお別れとなるとちょっぴりさびしい。
きれいにたたんだコルセットを、まだしまえずにいる。
後先考えずにがんばりすぎる自分への、ちょっとした戒めくらいにはなるだろうか。
後先考えずにがんばりすぎざるを得ないのだけど。
『Carmen』の公演も終わらないうちに、
次の舞台への準備が一気に3本走り出した。
週末だけでもこれだもの。
友人Bambooさんの日記に、
「おもしろいもの見つけました。
http://blogreport.labs.goo.ne.jp/tushinbo.rb」
なんて書いてあって、
たしかにおもしろそうだったのでやってみました。
結果は、オール3の「一般生徒」。
なんだ、ふつうじゃん、ぐれやすいはみ出し者のわりに。
拍子抜けして「通信欄」を見たら、やっぱりこわれてた。「会社の知識や経験をいかして、
バレエダンサーを目指しましょう。」
かなりIW。
おまけに、ブログ年齢10歳。
これって精神年齢と関係あるんだろうか・・・
会議と打合せ三昧だった今週の、
ぱんぱんにふくらんだ書類フォルダを整理してみたら、
区民オペラの開講式で配られたプリントが出てきた。
もらった記憶はあるけど、見もしないでしまいこんだらしい。
お休みのときはきちんと連絡しましょうとか、
準備と後片付けをちゃんとやりましょうとか、
毎年の決まり文句が書いてあるだけでしょと開いてみたら、
はじめて見るタイトルがばぁーんと書いてあった。
「キャストのみなさんへ」
・・・ちがうから。
なにをどう間違えたのかなー。
今年の事務局も、だいじょぶかなー・・・
わが家の“ポニョ”がピンチだ。
ずいぶん静かだなと思ってよく見ると、
詰まってるわけでもないのにシャワーが出ていない。
どうやらポンプ機能がいかれてしまっている。
連日の猛暑というのに、“ぶくぶく”が故障したとなると、
水のなかで生きるものにとっては死活問題。
だがしかし、新しい“ぶくぶく”を買いに行ってやれるのは
いちばん早くて日曜の夕方ときた。
ピンチだ!
わが家の“ポニョ”、朱文金のMACHは、
こうゆう肝心なときにおとなしい。
普段は用もないのにハデに月面宙返りをやらかしてそこらじゅう水浸しにしておくくせに、
命の綱の“ぶくぶく”がらみのときに限って、
ひたすら隅っこで固まって目を合わせないようにしている。
いちびって暴れて“ぶくぶく”ひっくり返したときには、そりゃー叱ったけど。
なんにもしてないときまで、そんなにイジケなくてもよいと思うが。
ぐれっぷりがどうも近頃ヒイラギに似てきて困る。
このところ立て続けに、区民オペラや歌舞伎座公演の事務局からあれやこれやと連絡があったり荷物が届いたりして、
昨夜は、そうだ、明日から区民オペラがスタートするなぁ、と思いながら眠った。
そのせいか、久しぶりにみた夢は、大好きなマエストロとのツーショット
譜面を片手に質問するヒイラギに、にこにこしながら教えてくれるマエストロの図だった。
あとね、ここも~♪と自分の手元を見下ろすと、
赤鉛筆でいろいろ書き込んだ、どこかで見たよな譜面。(あれれ、これは『Carmen』の譜面だ・・・)
そう気がついたところで、夢から覚めた。
そうだった。
区民オペラは、今年『Carmen』のマエストロに交代するんだった。
なんてリアル。
まぁ、それはべつにいいんだけど。
優しくて、おっきくて、温かくて、とびきり楽しいマエストロ。
「またいつか一緒にやりましょう」と笑ってくれたマエストロ。
会いたいなぁ。
よそでこんな楽しそうなことやってないで、
遊びにきてくれないかなぁ。。。
「白浪五人男」から2ヶ月余り。
何やかやと切符をムダにし続けた歌舞伎座通いの再開第1弾は、
玉ちゃんの泉鏡花2連発。
さすがの鏡花ワールド、というか、玉ちゃんワールド。
AB蔵クンの“必殺一本調子”をモノともせず、
独特の世界観を見事に舞台化してくれた。
あっぱれだったのは、右近くん。
(首のない猿ちゃん一家のほうじゃなくて。)
お涙頂戴にもならず、観る者に嫌悪感をあたえることもなく、
難役をしっかりと演じきっていた。
感心しながら観入っていたら、
『高野聖』のクライマックスあたりでぐらりと視界がゆらいだ。
すわ、腰椎捻挫の再発か? はたまた脳貧血か?
周りを見回せば、同じ反応の人がちらほら。
どうやら地震だったらしい。
やれやれ。 焦った。
4時間の『Carmen』通し稽古で疲れてるわりにはアドレナリンが出すぎて
大して眠れない一夜が明けたら、今度はまる一日、琴と三絃づくし。
ゆかたざらいへの出演を師匠から打診されたのは3ヶ月前、
大舞台を終えて間もない4月の初め。
まだ、博士課程も仕事も『Carmen』も、
どんな具合になってるころなのかまるで見当がつかない時期だった。
師匠の一番弟子先生からは、
なかなか教えてもらう機会のない珍しい曲だから
こういうときにぜひ習っておくといいと、アドバイスされていた。
迷った。
正直に、師匠に相談した。「それじゃ、出演予定者リストの一番下に入れておくわね。
無理だったら、プログラムに名前を載せる直前にキャンセルすればいいから」
師匠からそこまで言っていただいておきながら、
曲の稽古を始めようかというころに、過労から風邪をこじらせ、続けて腰椎捻挫。
ヒイラギ、あえなく無念の出演不能とあいなった。
こうゆう場合、出演しなくとも師匠の演奏曲は全部聴いておくべく、
一日ホール客席に缶詰になる。
10:30の開演から18:00過ぎの終演まで、全35曲のうち社中の出演曲は6曲。
どっぷり一日、邦楽漬けになってみると、あらためて深く響く音楽であるなと思ふ。
マエストロの作品も和楽器を使った心に染み入るような美しい音楽ではあった。
けれど、なんだろう、体温が肌になじんでいるような、このDNAが共鳴するような、
そういう感覚とは違った。
使う音に限りがあるかないかの違いだろうか。
(この感覚こそヒイラギが「Havanaise」のような半音階の曲をニガテとする所以でもあったりするのだが)
今日一日の唯一の気分転換は、数曲おきの合間を縫っての楽屋訪問。
師匠と大先輩がたにご挨拶を済ませ、
名取仲間をつかまえては、『Carmen』の広報宣伝にも微々たる貢献をしておいた。