晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

死の起源 9/6

2020-09-05 | 健康

2020.9.6(日)晴れ  がん・認知症・老化(6)(5)は2020.8.15
 がん・認知症・老化のカテゴリーで、正常細胞の死(アポトーシス)、老化細胞等について語ってきたが、アポトーシスとヒト個体の死、老化細胞とヒトの老化をパラレルに考えてきた。故に自然淘汰には死が必要という進化論的な結論を導いていたが、これは「ヒトはなぜ死ぬのか」という命題には答えていない。特にアポトーシスについては、個体の死というよりもむしろ生きるための方策ではないかという疑問が残っていた。以前に紹介した湊先生の講演時(2020.8.15参照)には、「正常細胞はがん化しないために死んでいく」とさえ言われていた。これこそ個体が生きていくために細胞が死んでいくということである。そんな時に見つけたのが本書である。
 「死の起源 遺伝子からの問いかけ」田沼靖一著 2001年発行 朝日選書678 古書

減数分裂をする有性生殖が死をもたらしたというのが本書の趣旨である。
 田沼氏は薬学博士だが細胞の生と死の決定機構を、アポトーシスの視点から研究されている。私の疑問にかなり答えてもらえそうな内容なのだが、専門的な文章も多く、正しく理解できたのか解らないが、要点を書いておこう。
 人間の細胞を、常に生まれ変わっている再生系の細胞(皮膚や血液、肝臓など再生するもの)と非再生系の細胞(神経細胞や心筋細胞など置き換わることなく何十年も機能するもの)に分け、前者の死をアポトーシス(自死)、後者の死をアポビオーシス(寿死)と呼び分けておられる。後者のこの言葉が学界で定着しているものか否か知るよしもないが、細胞死と個体の死を理解するには大変わかりやすい。この二つの細胞死は遺伝子に支配されており、火傷や凍傷、打撲や病変で無理やり死滅させられるネクローシス(壊死)は遺伝子には支配されない。
 アポトーシスは先ほどの「がん化しないために死ぬ」などの生体防御、発生の過程において臓器や生殖器、骨格や筋肉など身体の形成を行っており(細胞の塊から不要な部分の細胞が死んで消えて形を作る)、新陳代謝や自己免疫リンパ球の死などの生体制御を行っており、個体の死とは直接関わっていない。むしろ個体が生きていくためのシステムと考えてよい。
 アポビオーシスは非再生系細胞(心筋細胞や神経細胞)の細胞死だからこれは個体の死に直接関係する。
 アポトーシスが直接個体の死に関係しないと言っても、細胞の分裂の回数は決まっており、これはアポトーシスの回数と比例するわけだから、分裂の寿命が来れば、細胞の寿命が終わり、個体の死に繋がることは容易に理解できる。非再生系の細胞についても分裂はしなくても寿命は長く、その寿命は遺伝子にプログラムされているのだから、細胞死が個体の死に大きく関係していることが理解できた。
 本書では老化細胞(分裂はしないが細胞死はしない細胞)については余り述べられておらず、細胞寿命に近づいて行く事が細胞老化であり、個体の寿命に近づいてゆくことが個体の老化だと言うのみである。
                                           つづく

 

 
 

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