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晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

雨読 「動物ウィルスが人間を襲う」 5/22

2020-05-22 | 雨読

2020.5.22(金)曇り

  図書館が閉鎖される前日4月17日に「当分借りられませんから、今の内に借りてください」と言われて慌てて数冊借りた内の1冊であり、まったくタイムリーな本である。
「動物ウィルスが人間を襲う!」中島捷久 澤井仁著
2006年12月 PHP研究所発行 綾部図書館借本

 2006年の発行なので新型コロナはもちろん新型インフルエンザも登場していなくて、SARS、鳥インフルエンザが最新である。しかしながらウィルスの構造もその作用も基本的には同様なので、実に新鮮な情報として読むことが出来た。それだけウィルに関して無知であったと言うことかもしれない。それはわたしだけの問題でなく、日本全体の問題ではなかろうか。ダイヤモンドプリンセス号の騒ぎの時に今日の様相を誰が予想しただろうか。「感染症には打ち勝っている」というとんだ勘違いを誰もがしていたのではないだろうか。
 ウィルスは殻の中に遺伝子があるだけで、器官を持っていない。だから自分で代謝することも、増殖することもできない。すべて寄生宿主の機能を拝借して遂には寄生した細胞を壊してしまうというなんともやっかいなものである。単純なだけに分裂速度も速く、簡単に変異してしまう。これが厄介の元なんだが、全てのウィルがそうなるわけではない。細胞の中でじっとしているウィルスもあるわけだ。今回の新型コロナウィルスだって、元の宿主のコウモリだかにいる間は何毎も起こさず、潜伏しているわけだ。
 ウィルスというのはなんとも不思議な物体で興味は尽きないが、最も興味深いのはどこから生まれたのか?ということである。わたしは生物が生まれる前の状態、つまり生命の発生した時点の状態と思っているのだが、細胞ができてから、そこから飛び出したという説と、もともと細胞の中に寄生していたものという説が主流らしい。オパーリンの「生命の起源」は大学に入って初めて読んだ本だが、海の中でタンパク質が寄り集まって波に揺れている様子を憶えている。そんな中でできあがったのが遺伝子であって、ウィルスのような形態だったのではないだろうか。細胞から飛び出した説は有望らしいが、ふる里の細胞に帰って傍若無人に振る舞うのは、受け入れがたい行為ではないか。
 もう一つ気になるのがガンウィルスである。ガンウィルス説というのが叫ばれたがウィルスそのものがガンなのではなく、細胞のがん化を促進するものと、一般のウィルス感染と同様に細胞を壊すタイプがあるという。思えばガンとウィルスはよく似ている。ガンは元々自分の細胞であり、ウィルスが寄生するのも細胞である。それ自体は毒素を出すわけではないが、猛烈に分裂を繰り返し正常細胞や宿主細胞を壊してしまうわけだ。だから体内でガン細胞やウィルスの寄生した細胞だけを攻撃するのが難しい。
 新型コロナ後の世界はウィルスとの共生と言われているが、本当の意味での相利共生は考えられない。抗体やワクチンででおとなしくしてもらうぐらいだ。人体の中で役に立っているウィルスなどきいたこともない。ただ、細菌を殺すとか害虫、害獣の駆除などの夢のような利用法もあるようだ。しかし一歩間違えればとんでもないことになりそうだ。おわり

【今日の”のびちゃん”】NO. 32

つぐらのび

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