自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

菜の花とハナアブたち

2016-01-20 | 昆虫と花

1月上旬。暖冬の影響か,近くの畑では菜の花が咲いています。この菜はチンゲンサイ。


この日はあいにく寒い一日でした。それでも花が開いていれば昆虫がいるかもしれない,そんなことを思って行ってみました。

一向に虫が来ている気配はありません。株ごとによく見て行きました。しばらくして,ハナアブが1匹目にとまりました。どうやらシマハナアブのメスのようです。自然は期待を裏切りませんでした。近寄ると,じっとしている様子。吸蜜に来たというのでなく,ここで一夜を明かしたとでもいった感じです。それは,からだのあちこちに付いた水滴でわかります。


前日飛来して蜜を吸い,そのままここを宿にしたのでしょう。ここからわかるのは,ハナアブは成虫越冬するということ,冬でも気温が上がれば活動し始めるということです。

虫媒花の開花,気温,風の強さ,……,そんな環境条件が合わさって昆虫の活動を決定づけます。「わたしたちの目に付く色の付いた花があれば,いつも注目せよ」というのが観察ポイントです。 

午後畑仕事に行ったついでに,再びハナアブを見ると,翅の水滴がなくなっていました。位置もすこし変わっていました。そうこうするうちに,パッと飛び立って,近くのハクサイの葉にとまりました。気温が上がり,からだが動き始めたのです。やっぱり!

この日に見た昆虫は他に2種。葉にいました。探せば見つかるものです。

一つはタネバエに似た小型のハエ。花粉を餌にしているのでしょう。


もう一つも小さなハエ。交尾中のカップルでした。これは顕微鏡モードで手持ち撮影したため,相当にとんでもない写りです。状況証拠にはなるでしょう。

 


クロヒラタアブ,1月の卵(続)

2016-01-19 | ヒラタアブ

1月5日(火)。うんと大きく写しました。コンデジを手に持ち顕微鏡モードで撮影したため,画質はよくありません。卵の実長は1mm。やがて,この“小宇宙”から小さないのちが生まれ出るでしょう。


1月8日(金)。朝の様子を撮りました。葉を裏返しにしていたので水滴が付いています。画像を調整してみると,卵内部に確かな変化が見られます。頭部は右側で,黒っぽく見えています。

 


午後,太陽が傾いたときにコンデジを使って撮影しました。表面の様子がかなりくわしく見えています。

 

 
どうも「誕生近し!」の予感。それで,植木鉢に株ごと移植して室内に移しました。とはいえ,いつ誕生するかわからないし,じっと観察しておくわけにもいかないので,ときどき確認する程度にします。 

 


ヨモギハムシの恋

2016-01-18 | 昆虫

偶然の出来事を目撃するって,意表をつくようなところがあって,じつにおもしろいものです。「よくもマア,この場に居合わせたよ」という感じです。

アゲハの庭園のキクで見たヨモギハムシの話です。寒い日のこと。庭の手入れをしているとき,葉にハムシが1匹。メスです。「冬,活動しているんかあ」と思い,とりあえず写真に収めておきました。


後日,同じ株でメスを目撃。上写真の個体と同一のものでしょう。偶然,ほんの近くにオスがいるのを目撃。葉で影になっているため,互いに姿を見ることができそうもありません。「この2匹,うまく出合うのかなあ」「もしそうなら,なにを頼りに近づくのかなあ」。呑気に,そんな想像を巡らしていると,……。

するするっと,オスがメスに接近していったのです。もしかすると,もうすこし離れたところで姿を認めて,わたしが見たときは近づいていく途中だったのかもしれません。そうしてオスがメスのところに着くと,オスはパッと背中に乗りました。その早業に,わたしは仰天。ペアが成立して交尾が始まったのです。

このとき,2匹は地面に横たわったかたちになっていました。 


写真ではうまくとらえ切れない位置だったので,葉を横にやってから改めて撮りました。 


こうやっても,ヨモギハムシのペアはお構いなしで,そのままの格好でいました。

一連の観察結果からは,ヨモギハムシが成虫越冬と卵越冬をすることがわかります。偶然の出来事との出合いは,新鮮な生物的事実を教示してくれました。 

 


獲物を探し回るトゲアシオオベッコウ

2016-01-17 | 昆虫

タンポポやホトケノザを観察していると,たまに見かけるのがトゲアシオオベッコウ。狩り蜂です。脚の棘のりっぱなこと,翅の先辺りに帯状の青い斑紋があること,全身が黒っぽいことで同定できます。

なにをハンティングするかといえば,主にクモ類とのこと。わたしは獲物を捕らえたオオベッコウを見たことはありません。 


じつに頼りないばかりのシーンなのですが,わけがあります。このときも含めて,トゲアシオオベッコウは動きが機敏でほとんどじっとしていませんでした。しきりに獲物を探しているといったふうで,頭部にピントを合わせる瞬間がないほどなのです。これが食餌行動時の特徴なのでしょう。


冬,トゲアシオオベッコウが盛んに動き回っているということは,クモの成体が結構いることを物語っているのでしょう。と考えると,気にしてさえいればいずれ再会のチャンスが巡ってきるように思うのですが……。 

 


棚田の里

2016-01-16 | 日記

今日,棚田保存運動でよく知られたI集落を訪ねました。ひさしぶりのことです。ここは「日本の棚田100選」に選定されているところです。

山間部で棚田があるほどですから,海抜高度はかなりあります。自動車で向かうと勾配がすごく感じられ,帰路はアクセルを踏まなくてもタイヤが回転する,ブレーキを踏むだけでOK。そんな感じなのです。

じつは,ここにお住まいの知人Yさんが大事に保管し,ときには使っておられる石臼をお借りにいったという次第です。それを使って,きな粉・ソバ粉を作る予定です。

リタイアされて間もないYさんは,「のどかな景色に囲まれて日々農業をすることがこんなにたのしいと思ったことはありません」「村おこしで,国から補助金をいただいてがんばっています」「ここで作れるお米はわずか。それを農協に出荷するのでなく,ブランド化して販売していこうと思って取り組んでいます」「限界集落に近づいていますが,……」,そんなことをニコニコして話してくださいました。

村は澄み切った空気に包まれ,まことに清々しい風景が広がっていました。下から見上げると石垣が重なり,見下ろすと棚田面が,目を遠くに向けると谷間のずっと向こうに峰がありました。


日常生活を送るのはなにかと不便のようですが,わたしはわたしなりにひととき,先人が切り開いてきた大地を強く意識しないわけにはいきませんでした。石垣を積むだけでもたいへんな労力を必要としたでしょうに。

お借りした石臼を,ありがたく使わせていただきます。

おしまいに一つ。この村でも,なんと梅がちらほら花を付けていました。暖冬の影響です。スゴイ!

 


冬,ヒラタアブの吸蜜

2016-01-16 | ヒラタアブ

昆虫観察・昆虫撮影に関するわたしの最大の関心事は,昆虫がいかに生きているかを探り,記録することにあります。記録するとはいうまでもなく画像に残すということです。

生きている姿は,生まれる,食べる,排泄する,変態する,……,そんな変化・成長から読み解くことができます。これらの,まさにその瞬間その瞬間を目撃できれば,生きものに共通した生態や,昆虫らしい特殊性が確認でき,おもしろいだろうなといつも思っています。

花粉や花蜜を口にするときの行動もその一つ。漠然と行動をとらえるのでなく,「これぞ,蜜を吸っている」「この瞬間,花粉を舐めている」という生々しさを切り取りたいと思います。そのためには深度の深い,奥行きの感じられる写真が撮れたらサイコー!

さらに,これがコンパクトカメラを使って簡単にできたらスゴイでしょう。気軽にできれば,それだけ観察のチャンスが膨らむのですから。

そんな気持ちで正月過ぎに撮った写真が下のものです。


しかし,すこしでも動いていたらさっぱりダメです。このときのヒラタアブもまた動いていました。深度合成処理を行った写真ですが,二重になった部分もあって出来は今一つ。微妙にでも被写体が動いていたらうまくいきません。 

深度合成写真撮影は,チャンスがいろいろ巡って来る春に期待することにします。

 


クズ粉の精製

2016-01-15 | 随想

クズのデンプンは他のデンプンと同じように色は白。ところが,わたしたちがすりおろした根から取り出したものには,根の皮成分や繊維カス,腐敗物などが入っていて濃い茶を帯びていました。こうなった以上,なんとか精製を続けてできるだけ純白に近いデンプンを取り出さなくては値打ちがありません。それで,なにが何でもという気持ちで工夫を続けました。

その策は上澄み液を捨てる,水を入れてかき混ぜデンプンを沈殿させる,再び上澄み液を捨てる,さらに水を入れて……,この繰り返しに尽きます。実際5,6回は繰り返しました。1回のサイクルだけで半日を費やしました。デンプンの粒が細かいので,沈殿に時間がかかるのです。

作業を繰り返した結果,ようやく下写真の状態になりました。まだ上澄み液が濁っています。


容器にしている鍋を傾けると,純デンプンが現れました。白いものがそれで,その上に茶色い不純物が混ざっています。この不純物をすべて捨て去るのはなんだかもったいないのですが,不純物混じりのデンプンなので止む無く捨てることに。


沈殿物をコップに入れて水を加え,撹拌しました。そうして,数時間置いておくと,下のようにデンプン層ができてきました。


さらに数時間置くと,デンプン層の上に不純物が積もりました。これと上澄み液を捨てます。


もう一度だけ水を入れて撹拌して,今度は純デンプンが沈殿し終わった頃に,上澄み液を捨てます。それでもまだ純白ではありません。これで期待したデンプンがなんとか採り出せたことになります。根気のいる作業ですが,だれにでもできる単純作業です。 


時間が経つと,ご覧のとおり。


上澄み液を捨てて,おしまいに新聞紙の上に湿ったデンプン粉を載せて乾燥させます。これでやっと出来上がり! それにしても水というものは,不要物を溶かして流し去るのになんと重宝な液体なのでしょう。 

 


今,タンポポの花と昆虫(またまた)

2016-01-15 | 昆虫と花

わたしが観察している範囲で,今,いちばん目に付くヒラタアブはフタホシヒラタアブ。 ホソヒラタアブはもっともありふれたヒラタアブ類なのですが,タンンポポで吸蜜しているところを見かけたのは久しぶり。

冬のタンポポは背が低いので,花が風で揺れて撮影しにくいということがほとんどありません。 観察にもってこいの条件です。


ごく小さなヒラタアブが来ていると思って見たら,おやおやミナミヒメヒラタアブでした。めずらしい! ほっそりとした小さなからだで花の奥に潜り込んで,口吻をうーんと伸ばして,ゆっくりゆっくり蜜を得ている模様。

 
わたしがレンズを近づけていっても,気づかないような感じ。しばらくして蕊の先に出てきました。そこでも花粉を舐めていました。このからだには,花一つもあれば栄養はたっぷり摂り入れられる気がしますが,どうでしょうか。


この分だと,まだまだ,いやいや,ずーっとタンポポからは目が離せそうにありません。  

 


1月14日。霜の朝。虫の昼。

2016-01-14 | 日記

1月14日(木)。最低気温-4.0℃。午前9時でおいてさえ-0.7℃という厳しい寒さの一日でした。空は朝からパアッと晴れ上がり,その後は北風が吹くものの陽が射す昼間になりました。

早朝,霜が目に付いたので,結晶を接写しておこうと思って外へ。枯れ葉やら木やら土やら,いろんなところにできたのを撮っているうちに,手はもちろん,からだ全体がすっかり冷え込んでしまいました。こんな寒さは,今冬初めての体験です。


昼のウォーキングで見た昆虫2種。ともに何度も記事にしてきているお馴染みの昆虫たちで,ホシノヒトミで吸蜜中でした。気温は8℃ぐらいと推定されますので,大したもの。もっとも,このホシノヒトミ群落は農道の南向き斜面で,北風が直接当たりにくい位置にあります。地温が高めというのも活動するには好条件なのでしょう。

一つはフタホシヒラタアブ。「こんなに冷え込んでいるのに,よくもマア」と感心してしまうほどの行動ぶりです。カメラを近づけると一度は去って行きました。そのうちに,また戻って来て葉に止まって,そうしてホシノヒトミに移ったのです。そこでじっくり吸蜜していたので,安心してシャッターを切ることができました。

よく見ると,メシベもオシベもともにヒラタアブのからだに触れているようです。これで,冬も有性生殖が成立しているといい切れます。うれしい一コマになりました。

 


二つめにはハナバエのなかま。レンズを近づけて行くと,吸蜜を止めて花弁に移動。そして,パッと飛び立ちました。なんと敏感な!


じつのところ,フタホシヒラタアブは3匹,ハナバエは2匹目撃しました。かろうじて撮影できたのは上の2個体だけ。いくらでも観察できるというわけにはいきませんが,そうかといって珍しい出現というほどのことでもなさそうです。貴重な画像です。

今日は寒さが身に堪えましたが,なんだかスカッとしたような,身が引き締まるような気持ちで過ごすことができました。感謝。

 


今,タンポポの花と昆虫(また)

2016-01-14 | 昆虫と花

本シリーズの前回記事中のハチらしい個体に出合いました。それは正月のこと。

今冬の暖かさを反映してか,ウォーキング道の脇にはタンポポがたくさん開花しています。久しぶりにこの道を歩いたので,それなりにタンポポの花を気にかけながらのウォーキングとなりました。この日,天気予報士は「3月の陽気でした」と報じていました。

見かけたハチの正体は定かではありませんが,ほんとうに小さいので,ふつうは誰だって気づかないでしょう。体長は3,4mmぐらいと感じました。それが逆立ちの姿勢で花の奥に頭を突っ込んで,どうやら蜜でも舐めている様子。この姿勢がずっと続きました。やっと出て来たところを見たら,触角のずいぶん長いこと! 

 
光の加減で,からだがシルエット風に見えます。お蔭で,小型のからだにも見事なしくみが整えられているのがわかります。

やっと花弁の上にやって来ました。長い触角が感覚器官の一翼をしっかり担っていることが窺えます。


この日,このハチを2匹見ました。冬暖かければ,結構活動しているようです。