自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

アゲハの庭園にて(3)

2015-10-12 | ルリタテハ

10月7日(水)。ビニル袋作戦が大当たりして,蛹化が随所で見られます。随所といっても,袋の中なので大助かりです。袋を外して写真に収めました。

終齢幼虫,前蛹,蛹が一場面で見られます。あちこちの葉には糞がたくさん残されています。


朝日を浴びて,葉裏の前蛹が輝いています。


10月12日(月)。幼虫たちはどんどん前蛹,あるいは蛹に変化しつつあります。

ビニル袋の外側にわざわざ(?)尾端を付けて前蛹になっている個体を見かけました。よほど気に入っているのでしょうか。

 


蛹が外敵に襲われて無残な姿になっているのと発見。ビニル袋の中での出来事です。その姿からは,明らかに何ものかの犠牲になったことが推測されます。


葉の裏にある,白いものがその主と関係ありそうです。触れると,なんとも硬いのです。なんだか,黒いものが入っているような気がしますが,どうなのでしょうか。

 


もちろん,正体を突き止めたいなあと思っています。 

 


ベニシジミの産卵

2015-10-11 | ベニシジミ

10月9日(金)。観察のタイミングがよくて,偶然印象的な場面が目撃できることを“観察運がよい”と言い表すことができるとすれば,今日の例もその一つに入るでしょう。

勤務中に施設周辺で整理作業をしているとき,敷地の片隅に生えたスイバの傍を通りかかりました。すると,葉にベニシジミがとまっていました。ふつうならそう気にはしないのですが,様子と翅の傷み具合から「ははーん,産卵だな」と直感。すぐに腰に携行しているカメラを取り出して撮影の準備にかかりました。

モードは接写。チョウはすぐに産卵に入りました。産卵孔を葉の表面に付けると,その先に卵の姿が見えかけました。「スゴイ!」。


もとの姿勢に戻ったとき,そこには産付された卵が一粒ポツリ。チョウの姿からは,なんだかヤレヤレといった感じが伝わってきました。


飛び去ったあと,特徴ある表面模様をもつ卵が残されていました。写真を子どもたちに見せると,「ゴルフボールみたい」といっていました。納得です。


近くの葉に卵はないか,探してみました。すると,すぐ隣りの葉に1つありました。


成虫の翅は確かにずいぶん痛んでいました。生きてきた苦労が伝わってくる痛みようです。必死で卵を産み付けて使命を全うするつもりなのでしょう。ベニシジミの越冬態は幼虫。孵った幼虫は,そのまま寒さを乗り越え,そうして春を迎えるのではないでしょうか。

 


庭のレモンの木では今(1)

2015-10-11 | アゲハ(ナミアゲハ)

アゲハの庭園にあるレモンの木。大して背は高くなく,今年やっと実が一つ生った若木です。それに,アゲハの仲間が結構訪れて卵を産付していきます。今秋はスゴイ状況です。アゲハ,クロアゲハ,カラスアゲハが一堂に会しているといったふうなのです。全部で10匹は数えるはず。

木から降りてあちこちで蛹化すると観察・撮影に差し支えるという,たった一つの,わたしの身勝手な都合を考えて,幼虫を葉ごとビニル袋で覆うことにしました。こうすると,袋の位置で蛹になるでしょう。 


そのとおり,まずいちばんに前蛹になったクロアゲハの個体があります。

10月7日(水)。個体を観察していたら,寄生バチのアオムシコバチが1匹。2年前の本ブログでも同じ場面を報告しました。 


どうやら体内に産卵しそう。あるがままの成り行きなので,そのままにしておくほかありません。 

 

 
10月8日(木)。前蛹が蛹に。帯糸が外れて,ぶら下がっていました。そして,昨日見た寄生バチがまだいました。

 

 
いずれ個体に異変が起こりそうな気がします。このまま順調に推移するとすれば羽化は来春になると思われます。 

 


昆虫観察会

2015-10-10 | 日記

10月10日(土)午前10時。科学館から依頼があって,昆虫観察会に出かけました。科学館周辺の草むらで昆虫写真を撮っているという事情から,情報提供者として協力しました。


ふつうなら昆虫がたくさん見られる草むらは,すっかり草が刈り払われていて,虫の姿はほとんどありませんでした。惜しい惜しい。

そんななか,いくつか印象的なものがありました。まずは,サルトリイバラの葉で見かけたルリタテハの卵殻。あちこちで見つかりました。一枚の葉に3個もある例もありました。

キチョウを2頭見かけました。びっくりさせない限り逃げません。


ホソヒラタアブとヒメヒラタアブをたくさん見かけました。在来タンポポが数個咲いていました。花がすくないので,このように2頭がいることも。


アブが獲物を狙っていました。獲物が近くを通りかかると,捕らえようとしてハンティング行動を始めました。


コノシメトンボがいました。見かけたのは2匹。


じっくり観察していくと,それなりに「ふうーん」と思う場面に出くわし,目を釘付けにされることがあるものです。2時間の観察をとおして,結構ゆったりとたのしむことができました。

 


ダイコン紙

2015-10-10 | 野草紙

ダイコンが育っています。わたしの場合,播種時,数粒を一カ所にまとめて蒔くので生育が始まるとどうしても間引かなくてはなりません。この間引き菜は,食卓の味覚としてなかなか魅力があります。わたしの場合,ピリッと刺激があるところがなんともいえず食欲をかきたてるのです。


葉にはもちろん植物繊維があります。主脈には太めの繊維があります。これをダイコンの根ごと煮て,紙料にして紙を漉きました。といっても繊細な紙にあるわけでもなく,いたってたくましい野菜紙といった感じです。この紙を構成する繊維がわたしの消化器官を通過しているのかと思うと,愉快になります。大腸の掃除にはぴったりかもしれません。

煮るのは短時間です。煮終わると,手で揉み洗いします。ミキサーにかけなくても適度な長さの繊維が得られます。人によっては,かえってこの方が味わいのある紙だと思えるかもしれません。

紙料を取り出したあとは,漉いて湿紙にします。

そうして水切り,乾燥,と手順を踏みます。このときの基本は太陽任せ,風任せ,自然任せです。アイロンには頼りません。きれいな平面をもつ紙をつくるには,これが最適です。


こうしてダイコン紙が出来上がりました。今回は手揉み法によったため,表面のざらつきが目立ちます。


話はすこし変わります。ダイコンの根,つまり太い根からもダイコン紙をつくることができます。簡単にいえば,おろし金でおろして紙料をつくり,それを漉くのです。これについては,いずれ記事にしましょう。 

 


ミズナ紙

2015-10-09 | 野草紙

ミズナは,葉を食べる野菜です。葉菜は,品種改良が重ねられて,おいしさと消化のよさが評価されている野菜だといえます。

ミズナを見ると,葉柄が束になったように大きな株を形成しています。これを食べると,いかにも植物繊維があるなあという歯応えを感じます。それなら,その繊維から紙がつくれるだろうと考えてもおかしくありません。歯応えから繊維を感じさせる野菜は,すべて紙の候補素材です。


ではさっそく試みましょう。

アルカリ剤を入れて煮ます。時間は長くありません。煮ている際,ときどき葉柄を取り出して指で柔らかさを確かめます。簡単にかたちが崩れるようになれば,煮熟は完了です。

それを手で揉み洗いします。葉菜は柔らかいので,これで十分です。水できれいに洗えば紙料が得られます。


今回,漉いた湿紙をステンレス網の上で乾かしていて,一度失敗しました。乾燥時に,収縮が激しくて網から紙が剥がれようとしたのです。そのときは,室内に置いていたのですが,パリパリというかすかな音が響きました。

やむなく,別の手を打ちました。対策は,もう一度水に解き直して,湿紙の周辺を木枠に密着させる,というもの。いたって簡単な手法です。これによって,ミズナの繊維と木枠の表面繊維が密着して剥がれることなく,願いどおりの紙ができあがりました。失敗から学ぶことは大事です。 


剥がす瞬間は,とくべつなたのしさが味わえるひととき。


できたミズナ紙をみると,「わたしたちの消化器官をこれが通過するんだなあ。人間も,確かに草食動物のなかまにちがいないなあ」と感慨深くなります。

 


ジャコウアゲハ観察記(その349)

2015-10-08 | ジャコウアゲハ

10月6日(火)。夕方のこと。国勢調査員で担当区域を回っているときに,ヨッさんに出会いました。

「あんなあ,ジャコウアゲハの幼虫のことやけど,変な虫にようけたかられて食べられてしもうたんやな。それを写真に写しとるさかい,見てえな」。そういって家の中からカメラを持ち出して来られました。見ると,たしかに寄ってたかって襲われている様子(下写真/ヨッさん提供)。問題の葉をちぎって別の葉の上で撮った写真です。実際は襲った昆虫たちはかたまっていたのです。この写真からでも凄まじさが伝わってきます。


口吻を見ると,からだに突き刺して体液を吸い上げることが如実に理解できます。


問題の場所に行ってみると,もう1個体も被害に遭っていのちを失っていました。2個体が,こうして集団で襲われたようです。幼虫が体内にもつ有毒成分アリストロキア酸などものともしない様子。

襲った昆虫の正体なのですが,今のところ名はわかりません。サシガメのなかまではないでしょうか。それにしても,こんなジャコウアゲハの幼虫にこんな新たな外敵がいたとは! 

 


ススキ紙!

2015-10-08 | 野草紙

ススキは秋の七草の一つ。この草ほど,日本人に馴染みのある野草はないといっていいほどよく知られた野草です。

このススキを素材にして紙をつくるのはとても魅力あることです。というのは,イネ科植物なので良質の紙がつくれる期待が持てますし,実際扱いがとてもやさしいからです。ただ,茎の硬い部分は木質化しているので,それを除いて使うことが必要です。それ以外なら,葉も茎も使えます。それらの素材はススキが生えているところでならいくらでも採集できます。

扱いが容易だといっても,全体としてはかなり硬いからだつきなので,十分煮なくてはいけません。今回煮るのに要した時間は5時間でした。アルカリ剤は重曹です。わたしは水酸化ナトリウムはまったく使いません。理由は簡単です。誰にでも安全に,しかも比較的簡単に紙づくりができることが大事だと考えており,どの例についてもそれを実証したいからなのです。

重曹は弱アルカリ性の物質なので,強靭な繊維は手強い相手になります。ススキやタケはその代表例です。したがって,辛抱強く煮なくては紙料が得られません。これはやむをえないことなのです。

煮たススキから,下写真のような繊細な繊維が取り出せました。使った道具はミキサーです。繊維の長さ,細さ,強度からみると,明らかに良質な紙が漉けることがわかります。

 


今回漉いたのは葉書サイズとA4サイズ。いつものように,ステンレス網に直に湿紙をのせ,そのまま水切りをしながら乾燥させます。ただ,今回は,剥がしやすさを考慮してとくべつにソフトチュールを挟みました。そうすることで,とても薄い紙も漉けるようになります。


薄いので,一日で乾きました。

 


こうして秋が匂う,すてきな紙が誕生しました。コピー紙としても使えそうです。

 


ルリタテハの蛹化場面

2015-10-07 | ルリタテハ

アゲハの庭園で地面付近の前蛹を採集。ほんとうはそのままの場所で観察したかったのですが,位置や蛹化時間帯やらがあって,室内に持ち込んだのです。そうである限り,きちんと見届けなくちゃ。そんな思いで観察を続けました。

観察をしているうちに,蛹化が間近な兆候が見え始めました。昼間のことで,大助かり。その様子を記事にしておきます。

10月5日(月)午前8時05分。釣り針型の姿勢で,まだ動きはまったくありません。

 


10月5日(月)午後8時09分。 一日が経って動きが出てきました。下写真からは,からだ全体が垂れ下がり,細長くなってきたことがわかります。併せて,筋肉の収縮・弛緩運動が現れてきました。


10月6日(火)午後0時46分。表皮が上に向かって送られ始めました。そして,頭部の皮が裂けました。  


 午後0時48分。頭部がはっきり見えかけました。  


午後0時50分。 触角・口吻・翅にあたる部分がよくわかります。皮はどんどん上方に送られていきます。  

 
午後0時53分。皮が完全に送られ,その皮をなんとか落とそうともがきます。  

 
午後0時55分。皮が落ちないと,動きがもっと大きくなりました。しかし,それでも落ちません。皮が落ちたかどうか,どうやって感知できているのかと考えると,まことにふしぎな感じがします。


午後3時41分。結局皮は落ちませんでした。こういう例はときには見受けられます。   


前蛹から蛹への大変化は,観察する者の目を釘付けします。大きなドラマです。

 


チカラシバ紙!

2015-10-07 | 野草紙

秋,道端や畦にはイネ科植物チカラシバがたくさん生えてきます。チカラシバを漢字で書くと“力芝”。名の通り,この株を力を込めて抜こうとしてもけっして抜くことはできません。それだけ根が土を抱いて,地中に張り巡らされているのです。


地上部の茎も相当に強く,簡単に折れるようなことはありません。とにかく,強靭なからだの持ち主なのです。

これを素材にして紙を漉くと,やはり丈夫な紙ができます。薄い紙でも丈夫で,コピー紙も作れます。かつて,知人の教師から「学校で野草紙を漉きたい。子どもたちに教えてほしい」という依頼を受けたことがあります。せっかくなので,子どもの好奇心をくすぐろうと思い,あらかじめわたしは,薄手のチカラシバ紙を漉いて,それに知人の小さな頃の写真を拡大コピーしておいたことを思い出します。

それを見た子どもたちの反応は上々でした。あとに続く活動が活気に満ちたものになったことはいうまでもありません。ミキサーを使わず,臼と杵を使いコツコツと叩いて紙料をつくっていったのでした。

ひさしぶりにこのチカラシバを手にしました。それをじゅうぶん煮ました。

 


そうして,叩解。今回はミキサーを利用。 


溜め漉きで漉きました。写真は水切り,乾燥の様子です。 

 

 
好天気に恵まれ,一日で乾きました。あとは剥がすだけ。この瞬間のワクワク感はなんともいえません。

 
チカラシバ紙は,からだをしっかり支えている繊維の集合体だけあってさすがに強さを感じます。大したものです。チカラシバは,野草紙の素材としては秋の代表例といってよいでしょう。