自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ミズナ紙

2015-10-09 | 野草紙

ミズナは,葉を食べる野菜です。葉菜は,品種改良が重ねられて,おいしさと消化のよさが評価されている野菜だといえます。

ミズナを見ると,葉柄が束になったように大きな株を形成しています。これを食べると,いかにも植物繊維があるなあという歯応えを感じます。それなら,その繊維から紙がつくれるだろうと考えてもおかしくありません。歯応えから繊維を感じさせる野菜は,すべて紙の候補素材です。


ではさっそく試みましょう。

アルカリ剤を入れて煮ます。時間は長くありません。煮ている際,ときどき葉柄を取り出して指で柔らかさを確かめます。簡単にかたちが崩れるようになれば,煮熟は完了です。

それを手で揉み洗いします。葉菜は柔らかいので,これで十分です。水できれいに洗えば紙料が得られます。


今回,漉いた湿紙をステンレス網の上で乾かしていて,一度失敗しました。乾燥時に,収縮が激しくて網から紙が剥がれようとしたのです。そのときは,室内に置いていたのですが,パリパリというかすかな音が響きました。

やむなく,別の手を打ちました。対策は,もう一度水に解き直して,湿紙の周辺を木枠に密着させる,というもの。いたって簡単な手法です。これによって,ミズナの繊維と木枠の表面繊維が密着して剥がれることなく,願いどおりの紙ができあがりました。失敗から学ぶことは大事です。 


剥がす瞬間は,とくべつなたのしさが味わえるひととき。


できたミズナ紙をみると,「わたしたちの消化器官をこれが通過するんだなあ。人間も,確かに草食動物のなかまにちがいないなあ」と感慨深くなります。