自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

スダチの一枝にホソヒラタアブの幼虫(続)

2015-10-22 | ヒラタアブ

ホソヒラタアブの幼虫がいるスダチは,ガレージのすぐ前にあります。毎日そこを通るので,思い出しさえすれば,様子を確かめることはなんでもありません。

数日後のこと。「幼虫はどうしているかな」と思い,見てみました。すると,葉柄の部分にからだをくっ付けて,採餌中でした。くっつけ方は,からだをぐにゃっと曲げ,柄を抱き込む格好です。口先のアブラムシをくわえて,頭部を盛んに動かしていました。からだつきからして,大したどう猛さだなと感じ入りました。 


アブラムシはすっかりあきらめているか,もう体液をすっかり吸い取られているか,いずれかのようで,動きは見られませんでした。


と,そのとき。アブラムシは落下していきました。偶然落ちてしまったのか,わざと落としたのか,わかりません。

別の葉の裏にも,幼虫がいました。こんなに餌がになるアブラムシがいれば,複数いてもおかしくありません。成虫がここを産付場所としたのは正解だったわけです。 


その翌々日。その枝に幼虫の姿はありませんでした。次の変態に向けて,移動していったのでしょうか。 

 


サツマイモの花!(1)

2015-10-21 | 

つい先日のこと。マイカーで市内を走っていて,交差点に差しかかり,赤信号で停まったときの話。

ふと脇の畑が目に入りました。瞬間,サツマイモの花が目に飛び込んできたのです。「びっくりしたなあ! もう!」。ピンクがかっていて,アサガオの小さな花を連想させるその花は,まさにサ・ツ・マ・イ・モ! ドキッとしました。なにしろ,40年ぶりの出合いなのですから。


自動車を道路脇に停め,畑のすぐ傍の家に飛び込みました。もちろん,サツマイモのことを聞き取るために。すると,こんな返事が。

「隣りの家の畑ですよ。畑の耕作者は別にいらっしゃって,ほら,あの家の方です。先日,サツマイモの花が咲いたって,話をなさっていました。めずらしいものね」

それで,耕作者の家を訪問。おじいさんが出て来られました。「通りがかりの者ですが,サツマイモの花を見かけてびっくりしました。写真を撮らせてください。なんという品種なのですか」と訪ねると,こんな答えが。

「自分もここ10年は見たことがない。めずらしいね。品種は“鳴門金時”で,農協で苗を買ったんだよ。花なら持って帰っていいよ」

「ありがたい!」。お礼をお伝えして,さっそく写真撮影。こういうときは,携行するコンデジが威力を発揮します。


10mほどの畝が2つ。そこに花がいくつも咲いているのです。 


収獲後,畝に積み上げられていた蔓にも花が付いていました。


開花している花のすぐ傍に蕾もたくさんありました。次から次へと咲き続けていることはまちがいありません。スゴイ,スゴイ。

 


キンエノコロ紙!

2015-10-20 | 野草紙

秋は野草たちにとっても実りの季節。充実した種子が穂先に付くイネ科植物が目に付きます。キンエノコロもそうです。穂が金色に輝いて,それらがかたまってすっくと伸びているのを見ると,秋だなあとほんとうに思います。夕方にでもなって,その先に赤トンボがとまっていたら,もう最高! 

 
細くてスラリと伸びた茎,単子葉植物を特徴づける細長い葉。少々の風にも影響されずからだを支え,効率よく光合成をするくらしぶりを思うと,しなやかな繊維が取り出せるのははっきりしています。

これを煮て,ミキサーにかけて紙料を取り出しました。思ったとおり,繊細な繊維が集まりました。

 
漉いたのはA4判で,コピー用紙として使える薄手の紙。天気のよい日だったので,秋でも一日で乾きました。

 
網から剥がすときは,極上の気分が味わえます。


“セルロース繊維”というキーワードをとおして,キンエノコロと新鮮な出合いができました。畦や道端に生えているキンエノコロを見ると,これまでと比べて, “この草” のくらしが一味も二味も違って見えてくる気がします。 

 


コスモスの花弁から紙が!

2015-10-19 | 野草紙

秋はコスモスが似合います。見聞きする情報からは,各地のコスモスの話題が伝わってきます。

我が家のすぐ隣りにも,コスモスが咲き誇る畑があります。 畑の持ち主が,いろんなものを栽培してたのしみたいというおもしろい発想の方で,集落でもこの一角だけがコスモスの栽培地になっているほど。近頃では,花壇でわざわざ栽培する人はすくないのかなあ。

 
コスモスと同じキク科のマリーゴールドやヒマワリなどの花弁から紙づくりを試みてきた経緯から,「このコスモスからもできるだろう。それで,どんな色になるのかなあ」と,ちょっと興味が湧いてきました。それで,葉書一枚程度が漉けるだけの花弁をいただくことに。


花弁の繊維はいたって弱いので,沸騰後5分ぐらいで加熱をやめ,水洗いをしました。もちろん,ミキサーは使わず,手揉みだけで繊維を取り出しました。 それでじゅうぶんです。色は大変身。粒状のものが混ざっていますが,それは蕊や未成熟な種子です。

 
いつものとおり,漉きます。ただ,繊維が弱々しいことはわかっていますから,すこし厚めに漉くことにします。次は,網を斜めに立てかけて水切り。圧を加えて水切りをするのはお奨めできません。かたちが崩れそう。このままの状態で自然乾燥をすれば出来上がります。

 
初めは一気に日なたで乾かして,あとは徐々に日陰で乾かします。そのうちにすこしずつ,すこしずつ乾いてきました。日にかざして透かしてみると,ステンレス網が見えます。光源の位置がよくわかります。

 


こうして出来上がり! 透明感のあるツヤ紙といった感じです。色はもとの色と比べると,想像がつかないほどかけ離れています。ふしぎなほどに! 

 


表面を顕微鏡モードで撮影すると,繊維がちゃんと見えます。コスモス紙は植物繊維と非繊維質との混合体だということがよくわかります。改めてコスモスの花弁を見ると,セルロース繊維が骨組みをつくっていることが理解できます。


野草紙づくりは植物の生態との対話でもあります。野草紙料に牛乳パック紙料を混ぜて上質の紙づくりに勤しむ人があります。しかし,そこに対話がなくては植物あれこれを真に友とすることはできません。実用的な紙をひたすら求めるところには,紙漉き技術を鍛えるたのしさがあるだけです。植物を友としようとしない紙づくりスタイルを,わたしはどうも好きになれません。今日はコスモスに感謝。

 


スダチの一枝にホソヒラタアブの幼虫

2015-10-18 | ヒラタアブ

我が家のスダチの木は,古木といってもよさそうです。相当に古く,毎年のようにしっかり実を付けます。今年もどっさり実っています。一個一個の実が大きいなあという感じがします。


そして,ふだんはそこにアゲハが飛来したり,産卵したり,はたまたそれを食するカマキリが棲みついていたり。さらには,アブラムシがいたり。というわけで,なかなかにぎやかです。

一昨日10月16日(金),実を収穫しているとき,今どきとしては珍しく若枝が伸びている箇所を発見。それを見るとアブラムシがどっさり付いていました。ほんとうにびっくりするほど! 「こんなにアブラムシがいるのなら,ヒラタアブの幼虫がいてもおかしくないなあ」と思いながら,それを探してみました。


案の定,ホソヒラタアブの幼虫が一匹目に入りました。予感どおり! 成虫は,この場所をちゃんと感知して卵を産付していたのです。どこに卵を産もうかなとあちこち適所を探し回りながら,ついにここを探し当てたというわけです。嗅覚でわかるのでしょうか,視覚でわかるのでしょうか。ヒラタアブはハエのなかまなので,たぶん臭いをかぎ分けているのでしょう。いずれにしても大した能力です。


これだけアブラムシがいれば,食べ物にはまったく不自由しないでしょう。外敵に襲われない限り,すくすくと育っていくのではないでしょうか。 

もちろん,アブラムシが付いていても消毒をしないまま,自然のまま,です。生きもののため,そしてなにより健康保持のため,です。

 


虫の目写真,展示中

2015-10-17 | 随想

今凝っているのが虫の目写真。これは,虫の目になった気分で虫やら虫周辺の環境やらを見るというジャンルで,写真としては比較的新しい世界だといえます。撮影に使うレンズは『虫の目レンズ』と名づけられたとくべつなものです。わたしが愛用しているレンズは,画角が170度ぐらいはあるでしょう。それが接写から広角遠景まである程度カバーするというすぐれもの。イメージとしては,コンビニストアや街路などに設置された防犯カメラで,超近接撮影もでき,かなりの解像度を発揮するレンズと考えてみてください。

わたしなりにいえば“夢世界を開示してくれる強力な助っ人”という感じです。

撮影した作品については,本ブログでも折に触れてご紹介してきました。それを中心に,他作品も加えて20点を今展示中です。題して『虫の目写真 ~2015夏~』。

 


展示期間は10月1日(木)~11月3日(火)。場所は地元の科学館。もしご興味がある方がありましたら,お越しください。ただ,この会場は入館料が必要なので大きな声でお誘いするのは控えています。

科学館のある公園に棲息する昆虫を接写レンズあるいは,虫の目レンズで撮り続けている写真の一部も常設展示されています。「ほほーっ!」と,見る人のこころをくすぐる作品が一点ぐらいはあるかもしれません。ミリ単位の極小世界に生きるいのちなんてふつうは意識しないので,びっくり感が増幅するかも,です。

宣伝臭が強いのはわたしの好みではないので,このへんで。

秋は虫の季節。虫の目レンズを手に,あちこち出かけるたのしさを存分に味わっています。

 


キチョウの群れ

2015-10-16 | 昆虫

ウォーキング中に見かけたのが,キチョウの群れ。ある畑のうえを群れて舞っていました。ざっと見たところでは10頭ぐらいはいたでしょう。盛んに舞っているので,「なにかあるのかも」と思い,畝を見ました。そこには野菜苗が植えられ,化成肥料が置かれて,そうして灌水がなされていました。

もしかすると,吸水行動中の最中,わたしが近づいてきたのを察知して一斉に舞い上がったのでしょうか。そうなら,あまりにも敏感な行動に思えてきます。敏感すぎるかも,です。

その後の動きを追っていると,そのうちの1頭だけが湿った畝に降りました。ただ,すぐに舞い上がっていきました。他のチョウは,辺りを適当に舞っていて,ときには複数が接近することがありました。吸水に執着しているようには見えませんでした。

そのうちに,畦に生えたシロツメクサの葉に降りて休憩する個体がありました。3頭がかたまったのを捉えたのが下写真です。しばらくこのままの状態が続いて,他の1頭が現れました。


おしまいに,その場には1頭だけが残されました。


これらのキチョウを見てから,ウォーキングを続けました。道端にはアメリカセンダングサが生えて,黄色い花をたくさん付けていました。その花にも,複数のキチョウが訪れていました。群れると,キチョウにとっても安心感が抱けるのかもしれません。のどかな昼下がりの風景でした。

 


アカタテハの蛹,ひさしぶりの出合い

2015-10-15 | アカタテハ

ひさしぶりといっても,アカタテハの成虫は時には見かけているものの,蛹は久し振りです。そんなわけで,今日10月15日(木),昼休みのウォーキングで見かけた話題を一つ。

昨年も同じ時期に同じ場所で見ているので,「今年も同じように見るだろうな」という予感がありました。農道を歩きながら,土手の一部を覆うカラムシ群落を見ていくと,目に入ったのが巣繕いをする終齢幼虫でした。からだをすっぽりと葉の表面に出しているのはめずらしいことです。そんなことをすると,外敵の目に触れてしまいます。すっかり油断しているように見えました。


ほんのしばらく観察していると,やがて閉じられつつある葉の中に入っていきました。これが往路に見た光景です。


復路見てみると,またからだを反転させて巣を閉じようとしていました。


近くのヤブマオ(アカソ?)を見ると,葉が一枚閉じられて巣状になっていました。


 

「ははーん,蛹が入っているな」と思って,中を覗きました。やはり,そのとおり! 特徴ある白っぽい体表が目に入ってきました。ひさしぶりにお目にかかりました。


アカタテハの越冬態は成虫です。この蛹から羽化した個体は,そのまま越冬することになります。今の時期アカタテハの蛹を見ると,秋の深まりを感じます。わたしのウォーキングは,こんなふうに観察が適当に入り,じつに気ままそのものです。ひたすら歩くというのは,わたしには似合っていません。

 


野草紙づくりの取材訪問

2015-10-14 | 日記

10月13日(火)。晴れ。

東京からお客様(雑誌編集者/Kさん)をお迎えしました。野草紙づくりを取材するために,はるばる来られたのです。

取材は紙づくりの工程,漉き道具づくり,作品群についての聞き取り等,時間をかけて行われました。野草紙づくりに込めるわたしの願いがじゅうぶんお伝えできていたらいいのですが……。

本ブログで“野草紙”のカテゴリーを設けて,いくつかの野草・野菜等から紙をつくる報告を重ねてきました。これを始めたのは今春からです。じつは,これまでKさんとメールでやりとりするなかで,「あれは紙にできないか」「これはできないか」という質問をいただきました。それに対して「大丈夫。できます」「さあ,どうでしょうか」「不安だけど,やってみましょうか」というふうにどんどん発展していって,その結果を記事にしてきたというわけなのです。

草のからだを物理的に支えている主役はセルロース繊維です。それが取り出せれば,どんな草からも紙がつくり出せます。もちろん,からだの部分や時期による制約があって,よく吟味してかからないとダメなのですが,総論としてはすべての草が紙になりうるといい切れます。

ここでわたしが脳裏に描いている野草紙は,純粋な単一繊維からつくる紙です。業界用語でいえば生紙((きがみ。生漉き紙)です。けっして他の繊維を混ぜず,表面加工もしないものです。混ぜれば,至極簡単にほどほどの質をもった紙が,どの草からもできます。そうした実用的な紙という視点をとりあえず捨てて考えています。

理由は簡単です。植物そのものの生活形なりくらしぶりなりと関係づけ,草を友だちにできるようなレベルで紙づくりのたのしさを味わいたいからなのです。「チカラシバは根が土をギュッとつかんで,たくましく生きている。茎は細いが,強靭だね」「オヒシバは叢生形で踏まれ強いかたちをしている。太すぎないうえに,しなやかな繊維をもっているから茎が折れないんだね」というように,生態を念頭においた解釈を試みることができます。

さて,今日の取材が実り多いものになっていればわたしとしてはうれしい限りです。これで一連の野草紙づくりの一区切りとします。これからはゆっくり,のんびり,紙を漉いていこうと思っています。その様子については,折に触れて記事にしていくつもりです。なお,まだこれまでの記事のストックがありますので,しばらくは今の調子で記事をアップしていきます。

以下は付記です。取材中にアゲハの庭園でヤマトシジミの交尾を見かけて,写真に収めました。下のものです。格好がスゴイので載せておきます。懸命さが伝わってきます。取材日のメモリー写真になりました。

 

  


トウモロコシの葉紙

2015-10-13 | 野草紙

一本のトウモロコシには大きな葉が何枚か付いています。この葉で太陽の光をたっぷり受けて光合成を行います。光合成によってつくったでんぷんを本体の成長に使うとともに,種子を充実させるために使います。

大きな葉を支えているのは,もちろんそれなりに丈夫な葉脈です。透かして観察すると,平行脈がたくさん見えます。しかし丈夫だといっても,わたしたちの手で千切ると簡単に千切れます。したがって,葉の大きさに見合った強度をしている,と言い表すほうがぴったりかもしれません。風などの影響をすこし受けるだけで葉が破れたり千切れたりしてしまうのでは,トウモロコシ本体の生存にかかわってくるでしょう。

それはともかくとして,この葉脈が紙料として使えそうです。そう思い,葉を持ち帰って煮ることにしました。

3時間ほど煮ると,ずいぶん柔らかくなってきました。それを水洗いして両手でギュッとつかむと,ほんとうに柔らかいなあという感じがします。


これならミキサーにかけても大丈夫だと判断。結果,細かな繊維が取り出せました。これが紙料です。下写真は,右から左に向かって変化の順を追ったものです。


さっそく漉きました。そうして乾かしました。紙としては立派に(?)合格点が与えれられる紙質です。これを,トウモロコシの葉の傍において写真に収めました。


トウモロコシのように長い葉には,長い繊維があります。長いと同時に,しなやかでもあります。したがって,良質の紙ができて当たり前なのです。植物の生活形を考えながら紙を漉くおもしろさが見えてきます。