自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

コスモスの花弁から紙が!

2015-10-19 | 野草紙

秋はコスモスが似合います。見聞きする情報からは,各地のコスモスの話題が伝わってきます。

我が家のすぐ隣りにも,コスモスが咲き誇る畑があります。 畑の持ち主が,いろんなものを栽培してたのしみたいというおもしろい発想の方で,集落でもこの一角だけがコスモスの栽培地になっているほど。近頃では,花壇でわざわざ栽培する人はすくないのかなあ。

 
コスモスと同じキク科のマリーゴールドやヒマワリなどの花弁から紙づくりを試みてきた経緯から,「このコスモスからもできるだろう。それで,どんな色になるのかなあ」と,ちょっと興味が湧いてきました。それで,葉書一枚程度が漉けるだけの花弁をいただくことに。


花弁の繊維はいたって弱いので,沸騰後5分ぐらいで加熱をやめ,水洗いをしました。もちろん,ミキサーは使わず,手揉みだけで繊維を取り出しました。 それでじゅうぶんです。色は大変身。粒状のものが混ざっていますが,それは蕊や未成熟な種子です。

 
いつものとおり,漉きます。ただ,繊維が弱々しいことはわかっていますから,すこし厚めに漉くことにします。次は,網を斜めに立てかけて水切り。圧を加えて水切りをするのはお奨めできません。かたちが崩れそう。このままの状態で自然乾燥をすれば出来上がります。

 
初めは一気に日なたで乾かして,あとは徐々に日陰で乾かします。そのうちにすこしずつ,すこしずつ乾いてきました。日にかざして透かしてみると,ステンレス網が見えます。光源の位置がよくわかります。

 


こうして出来上がり! 透明感のあるツヤ紙といった感じです。色はもとの色と比べると,想像がつかないほどかけ離れています。ふしぎなほどに! 

 


表面を顕微鏡モードで撮影すると,繊維がちゃんと見えます。コスモス紙は植物繊維と非繊維質との混合体だということがよくわかります。改めてコスモスの花弁を見ると,セルロース繊維が骨組みをつくっていることが理解できます。


野草紙づくりは植物の生態との対話でもあります。野草紙料に牛乳パック紙料を混ぜて上質の紙づくりに勤しむ人があります。しかし,そこに対話がなくては植物あれこれを真に友とすることはできません。実用的な紙をひたすら求めるところには,紙漉き技術を鍛えるたのしさがあるだけです。植物を友としようとしない紙づくりスタイルを,わたしはどうも好きになれません。今日はコスモスに感謝。