自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

フジバカマと訪花昆虫(4)

2015-10-06 | 昆虫と花

写真を撮っているとき,偶然,たいへん珍しい風景に出くわしました。横に倒れかけた細い茎に,ガが一匹。その後方に卵らしいものが点々と一直線に続いていました。その“卵らしいもの” には丸みがまったくなく,一個一個が毛のようなもので包まれているのです。


様子からみると,どうも産卵中のようです。見たこともない,色鮮やかなガ。 


帰宅して調べてみたのですが,名ははっきりしません。

2日後,改めてそこに行ってみました。卵のようなものが増えていました。全部で30個を数えました。やはり卵なのでしょう。 

 
結局持ち帰って,孵化を見届けることにしました。さっそく拡大写真を撮りました。下がその姿です。

 
いったいどんな正体なのでしょう。ふしぎが深まります。孵化が観察できたら最高なのですが。

 


ヒガンバナ紙と子どもたち

2015-10-06 | 随想

9月27日の記事の続き話です。

10月3日(土)。快晴。

ヒガンバナ紙を漉いて1週間が経ちました。この日は,乾燥した紙を網から剥がして,それを使って作品を作る日です。しかし,1週間前にある子が「これはこのまま宝にして持っていたい」といったのが気になっていました。それで,とくべつにわたしが漉いたヒガンバナをみんな(おとな2人を含め15人)にプレゼントして自由に使ってもらうことにしました。プレゼントする紙といっても,折り紙程度の大きさです。

剥がすのはカッターナイフで。慎重にしないことはよく理解できているので,とてもゆっくり作業をしていました。小さな子は,上学年の子に見守られながら。うまく剥がれるたびに喜びの笑みがこぼれ,拍手が起きました。


こうして,全員の紙がうまくできあがったのです。


次は,折り紙に絵を描いたり,紙を折ったり,切ったりして作品をつくりました。


ふしぎに,絵はヒガンバナに一致。ヒガンバナ紙にヒガンバナの花がずっと咲き続けます。折り紙作品は折るときに慎重にしなくてはいけないので,わたしがポイントを伝えて折鶴をつくりました。その他,折りたたんで雪の結晶をつくる例も。


1時間が終わってみれば,子どももおとなも上機嫌。ちょこっと探検活動としては大成功でした。自然からの贈り物をたいせるにするこころに触れた参加者,紙1枚を大事にしようとするこころを育んだにちがいない活動。わたしも喜びを感じました。

 


枝豆の莢(さや)から紙!

2015-10-05 | 野草紙

「枝豆の莢(さや)から紙はできないだろうか。できるなら,見たい」。そんな疑問と要望がある方から寄せられました。これまで作ってみたことがないので,自身は「さあ,どうだろうか。豆の皮が残ってできないかも」と思ったのですが,「試してみなくちゃ,わかならい」の気持ちでいつかはやってみようと思っていたのです。

秋の今,ようやくチャンスがやって来ました。畑では,大豆が実,つまり緑色をした莢を付けてどんどん生育を続けているところです。大豆とはいっても,わたしの栽培しているのは,正確にいうとそのなかまの倉掛豆です。

先日,枝豆を収穫。それを煮て味覚を味わいました。お酒の友としても,初物の味としても,極上の食卓となりました。


さて,食べ終わって捨てるだけの莢から紙ができるか,試す段階です。ここからが本番。莢の量は両手に山盛り。それをアルカリ(重曹)で煮ること2時間。ここまでは夜の作業。

翌朝,作業再開。まずは,篩のなかで揉み洗いをしました。とても柔らかくなっているものの,莢のかたちがはげしく崩れるというわけではありません。ただ,莢の両縁を固定している長くて太めの繊維がたくさん混ざっています。「こんなもので紙が作れるだろうか。繊維だけを集めればなんとかなるかもしれないが……」。そんな不安を感じさせるものでした。

叩解作業は,臼では無理だと判断。ミキサーを使うことにしました。ミキサーを使って細かく潰し,篩で洗ってびっくり。皮らしいものはなに一つ残っていないのです。あとは短くて,そのわりには硬めの繊維だけ。「これなら紙が作れるかも」と予感させはしましたが,それにしてはゴワゴワ,ゴツゴツ,パサパサし過ぎています。


このままでは,繊維同士が絡み合ってもパラパラと分離してしまいそうな気がしてきました。やむなく,もっと叩解して繊維を細かくしてみようと思い,徹底的にミキサーで砕いてみました。そうすると,意外に繊細な繊維に近づいてきたのです。とはいっても,良質な他の繊維とはちがって,太短くて,パサッとした感じの繊維の集合体です。

これで「まあ,なんとか紙が作れるのでは?」と不安が和らいできました。それで,紙漉きの準備を整えて,漉き枠に紙料を流し込みました。木枠を外すと,湿紙の出来上がり。これを水切りしながら,乾燥させます。


秋晴れの好天日だったので,どんどん乾いていきました。繊維が繊維だけに,薄くて丈夫な紙といったものとはちがって,「厚めのシートかな」と思うような紙です。このままでは実用性に乏しくなるので,表面処理を施すことに。ほぼ乾いた頃,薄めた膠液を塗布するのです。こうしたサイジング工程は,用剤こそちがいますが,洋紙製造ではふつうに行われていることです。

こうして,夕方にはついに枝豆紙が完成!


手にした紙は,紙のイメージからひどくかけ離れたものに見えます。表面はざらざらしています。折り曲げると,原型が崩れそうです。したがって,実用性には乏しい紙です。しかし,絵なら描けるでしょう。枝豆の絵を描くとどうでしょうか。字もなんとか書けるでしょう。マットにも使えるでしょう。ですから,ちょっぴり,紙といっても差し支えないでしょう。だって,水のなかで繊維同士を絡み合わせて,それを乾かしたものなのですから。

この枝豆紙を目にした人はどうおっしゃるでしょうか。依頼者がご覧になるとどうおっしゃるでしょうか。今回の紙づくりは,わたしにはとても新鮮なチャレンジだったのですが。

 


生まれたばかりのクロヒラタアブ

2015-10-04 | ヒラタアブ

早朝の,アゲハの庭園でのこと。庭の片隅に設置した堆肥ポストに残飯を入れに行ったついでに,レモンの木を見ていると目にとまったのがクロヒラタアブ。一晩をここで明かしたのかなと思い,じっくり観察すると,そうでもなさそう。ちっとも飛ぶ気配がありません。

おかしいなと感じながら,さらに観察すると,どうやら誕生して間もない成虫らしいのです。もっと見ていると,囲蛹の殻がすぐ傍にありました。これで,今朝生まれた個体だとはっきりわかりました。さっそく撮ったのが下写真。 


そういえば,ずっと以前レモンにはアブラムシが付いていました。それでそこに卵が産み付けられ,孵化した幼虫がこうして成長して無事に成虫になったというわけです。そう思って,他に囲蛹はないか探しました。すると,葉の表面で2個見つかったのです。合点です。

さて,撮影しているときに,尾端から体液が排泄されました。生まれて初めての排泄です。色はミルクといった感じです。 

 
このあと,指にのせてみました。飛び去ることもなく,静かにのっていました。

ヒラタアブの幼虫がレモンにいることを知ったのは,今回が初めてです。わたしにとっては,大切な生物的事実です。 

 


アゲハの庭園にて(1)

2015-10-03 | ルリタテハ

10月2日(金)。

アゲハの庭園に植えているホトトギスが大きな株に育っています。その葉を,ルリタテハの幼虫たちが貪り食うようにして平らげていきます。しかし,個体数は10を超えるものの,食べ尽くされることはないでしょう。


ここにいる終齢幼虫が次々と変態期迎え,前蛹になって,そうして蛹に変化しています。場所はそれほど移動せず,食草か,あるいは食草の根もと近くの雑草です。

食草ホトトギスに付いた前蛹を見つけて,写真に収めようとしたとき,茎が揺れました。すると,からだを思いっきり丸く曲げて警戒心を露わにしました。


根もとに生えたタデの茎で,蛹化したばかりの個体を見かけました。


幼虫があちこちに散らばると観察しにくくなります。それで,茎ごと透明ビニル袋で覆うことにしました。これで袋内部で蛹化するのが観察できます。

 


フジバカマと訪花昆虫(3)

2015-10-02 | 昆虫と花

日がかげると,そこはまた昼とは別の世界が展開されていきます。ガのなかまが,そのときを待っていたかのようにどこからか現れるのです。

ホタルガは数匹訪れていました。黒・白・赤の目立つ体色,そして大きな触角は一度見たら忘れられません。ホタルに擬態して身を守っているといわれていますが,わたしにはそれほど似ているようにも思えません。幼虫は体内に毒をもっているらしく,触れると危険なのだそうです。 


ガガンボの一種もいました。翅の縁の黒紋が,この虫を特徴づけています。名は未同定。口吻のかたちは,花蜜を吸うのにぴったりです。 

 


シロモンノメイガが一匹。黒い翅と白い紋。印象に残るデザインです。 

 

 

まだまだ現れました。 

 


フジバカマと訪花昆虫(2)

2015-10-01 | 昆虫と花

マルボシヒラタヤドリバエにも出合いました。なんとも愛嬌のあるからだつきです。


農作物の害虫としてよく知られているツマグロオオヨコバイ。さてなにをしているのでしょうか。草の液汁を吸っているのかもしれません。このときは吸汁行動は観察できませんでした。

 


ヒメヒラタアブも一匹来ました。これだけの花が咲いていれば,ヒラタアブぐらいの大きさの昆虫ならいくら訪問してきても有り余る花粉があります。

 


訪問者は,ほんとうはすこしも気を緩めることはできません。というのは,そこにはちゃんと外敵が待ち受けているからです。集合体の花に隠れた昆虫,色を花に装っていると,訪問者には見分けがつきません。ハエのなかまがアズチグモに捕獲されています。花をぐっと開いて撮影したのですが,クモは驚きもせず,もちろん獲物を手放すこともありませんでした。