自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

トウモロコシの花(メシベ)紙!

2015-08-28 | 野草紙

トウモロコシのメシベの花柱は絹糸とも呼ばれています。受粉が完了して種子が育ってくると,茶褐色に変化します。

今度は,その頃の花柱を採集して紙をつくってみましょう。“絹糸”といわれるほどのものですから,一見相当な強度を持っているような感じがします。しかし,そのような強さはもちろん持ち合わせていません。程々といったところです。若い花柱を一本だけ持って両手で引っ張ると,もちろん簡単に切れます。これを紙材料にするおもしろさは,意外性に尽きます。「そんなものにも繊維があるのか」という驚きが生まれます。


先に“程々”の強さという表現をしました。つまり,アルカリを使いすぎたり,煮すぎたりするのは禁物だという点が肝心です。一気に分解して,微塵にも繊維が失われるような事態は避けなくてはなりません。

アルカリ剤の量,煮熟する時間に気を遣うことがたいせつになります。アルカリ剤はわずか,煮る時間は最長でも30分程度にとどめ花柱の煮え具合を確かめながら,というふうに。

水洗いをしたメシベ,つまり繊維を一部のそのままの長さで残し,残りをミキサーにかけて細かくしました。元の長さのまま使うのは,できるだけ丈夫な紙にするためです。繊維は全部を混ぜて使います。

 


漉くと,花柱繊維が密集しているのがよくわかります。 


乾くのは周辺からです。乾燥するにつれて,収縮力が生じます。このときに,木枠から剥がれては元の木阿弥です。風通しのよい日陰で,徐々に,ゆっくりゆっくり乾かしていくのがコツです。紙は縁から乾いていきます。

 


こうして,できたのが下写真の紙です。油紙のようなツヤをもっています。つるつるしています。繊維も見えます。ふしぎな,ふしぎな紙です。実物を見ても,材料がなになのか,さっぱりわからないでしょう。

 


陽にかざすと,すぐ向こう側にあるものが影絵のように映ります。下写真では,木枠に張った網とタケの葉が見えます。紙が影絵スクリーンになったのです。まさに意外性をくすぐる紙だといえます。

 


紙を木枠から剥がすと,出来上がりです。


残すは,実を包んで保護している葉,すなわち苞葉を材料にした紙づくりとなりました。