自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

モンキアゲハ,孵化に向かって(2)

2015-08-22 | モンキアゲハ

前回からの続き。8月21日(金)。午後6時20分。曇り空で,あたりが薄暗くなりかけています。産卵後,およそ4日と8時間が経過。

ひとつの卵を見ると,中の幼虫が殻を開け始めていました。卵の位置はわたしの背よりすこし高いところなので,くわしい観察は無理と判断。枝を切りとって,家の中に持ち込みました。そこでカメラをセットして撮影を開始。

午後6時25分。わずかに穴が開いています。その奥に,頭が覗いています。

 


午後6時30分。 見る見るうちに,穴が大きくなってきました。一刻も早く出たいという感じで,ボリボリ食べている様子です。


午後6時31分。からだが出せる程度に穴が開くと,休むこともなくスルスルッと出始めました。 

 
午後6時31分。どんどん出てきました。立派な突起が際立って見えます。

 
午後6時33分。すっかり出終わりました。


午後6時47分。出終わってやれやれといった様子。しばらく休んで,そうして殻の方に向き直り,殻に取り付きました。もちろん,それを食べるために。 


午後6時55分。ときには休みながら,とにかく懸命に食べ続けました。大した食欲です。


午後7時28分。すべてを食べ終わると,もう未練はないという感じで,すっぱりとその場を去っていきました。


1時間にわたる,じつに見事な誕生物語でした。 

 


モンキアゲハ,孵化に向かって(1)

2015-08-21 | モンキアゲハ

8月18日(火)。新たに卵を1個確認。合計4個になりました。

8月19日(水)。午後4時。産卵後ちょうど2日と6時間が経過。卵の変化を見てみましょう。

黒い斑点,底面あたりのうっすらとした黒いもの,中ほどの赤味,それらは明らかな変化といえるでしょう。孵化に向かって順調に進んでいます。

 

 
やはり下部がやや黒っぽくなっているように見えます。

 
8月20日(木)。午前10時。産付後,ちょうど3日経過。前日と比べて,大きな変化が現れたようには見えません。

 


8月21日(金)。午後6時。産卵後,4日と8時間が経過。間もなく生まれてくる幼虫の姿がぼんやりと見えます。

 

 
別の卵を見て,びっくり。ちょうど殻を開けている最中でした。この続きは次回に。

 


ジャコウアゲハ観察記(その347)

2015-08-20 | ジャコウアゲハ

8月20日(木)。曇り時々雨。あれほど暑かった夏が過ぎていくようで,朝夕は秋の気配が漂ってきました。今日は仕事が休み。相変わらず畑仕事やアゲハの庭園の手入れに精を出しました。

アゲハの庭園でジャコウアゲハを観察していると,今は生活環が入り乱れているなあという感じがします。卵あり,幼虫あり,前蛹あり,産卵に訪れる成虫あり,といったふうなのです。

産卵場所を探しているジャコウアゲハが葉にとまって産卵を始めました。「これは記録にとどめておこう」。そう思ってコンデジを出して撮影しました。


どうやら時間をかけて卵を複数産み付けているようです。それで,産卵孔側から撮ることに。


ちょうど3個目を産付する瞬間をとらえました。少しも警戒せず,ちっとも慌てず,合計4粒の卵を産み終えました。

別の食草には卵がたくさん。二度にわたって,産み付けられた模様です。その脇に終齢幼虫がいて,じっとしていました。「これは写さなくちゃ」。そう思って撮ったのが下の写真です。

 
これでは周りの環境が見えないなと思い,虫の目レンズで撮りました。曇っていたのでフラッシュを使用しました。ふつうの接写撮影より断然おもしろい画像が得られたように思うのですが,いかがでしょうか。


以上が,今日見るアゲハの庭園の一コマです。

 


サルビアの花紙!

2015-08-19 | 野草紙

花をかたちづくっている繊維は,一般的にはじつに弱々しいものです。それは,試しに花弁を揉んでみたらわかることです。一口でその花から紙をつくるといっても,説明を受ける人にはなかなかわかりづらいかもしれません。

弱い繊維を相手にするときは,極端に弱いアルカリを使うほかありません。多量に花弁があれば,純粋繊維を取り出すためにそれなりにアルカリの量を増やす手があります。しかし,一般的には限られた量しかないものです。すると,やはりアルカリの力を弱めるほかありません。力を弱めるというのは,水酸化ナトリウムのような強アルカリを使わない,弱アルカリを使っても短時間煮るだけにする,という配慮がいります。

「弱アルカリ」「短時間煮熟」作戦でいけば純粋繊維紙からは遠くなりますが,非繊維物質をある程度残せますので,少量の花弁で紙がつくれるのです。もちろん,紙質は落ちますが,それは止むを得ません。

短時間煮熟のよい点に,花弁の色がある程度残るということが挙げられます。赤は赤なりに,黄は黄なりに,という具合です。本記事で取り上げるサルビアなら,赤味がちゃんと残ります。

しかし,今回うっかりしていて,「アルカリ量(量で!)」「短時間煮熟(時間で!)」ともコントロールミスを犯してしまいました。結果は満足のゆくものではありませんが,経過を報告しておきましょう。失敗も経験則の一つと思いつつ。

我が家のプランターに植えているサルビアの花を採集。


それを煮熟。重曹の入れ過ぎ,煮過ぎで,色がすっかり褪せてしまいました。そんな中,植物繊維がはっきり確認できます。


取り出した材料を水洗いしたあと,手揉みして潰していきました。叩解工程はこの程度にとどめて,次は紙漉きです。

湿紙が乾けば完成。写真からは元の色合いが想像できません。紙の表面をよく見ると,当たり前ながら繊維が! 花の骨格が繊維であることが納得できます。 

 

 


ササの葉紙!

2015-08-18 | 野草紙

「ササの葉で紙をつくりたい」。そんな依頼を受け,見本紙をつくってみること。

ササやタケの葉を透かしてみると,平行脈がたくさん走っています。この葉脈に沿って縦向きに裂くと,きれいに分割できます。横向きに葉を千切ると,適当にでこぼこを残して断裂します。くしゃくしゃと葉を揉むと,柔らかい感触はするものの,しなやかな感じはしません。「こんなものが紙になるのか」と疑いたくなるはず。

しかし,確かに植物繊維があることがわかります。繊維があればそれを取り出せばいいのです。取り出せば,紙をつくるのは容易です。

さっそく,これを煮ることにします。アルカリ剤は炭酸水素ナトリウムです。弱アルカリなので,煮熟時間がかかります。最低3時間程度は煮る必要があります。煮え具合を見ながら,ときどきアルカリ剤を追加投入します。

煮始めて1時間。パサパサ感のあった葉が,意外にもしなやか感を帯びてきています。煮熟後,指先で確かめると,ずいぶん柔らかくなっているのがわかります。5時間も煮るともうすっかり,採れたてのワカメといった雰囲気です。それを水洗いします。


団子状にして撮ったのが下写真。


手作業で葉から繊維を取り出します。わたしは,石臼と杵を使いました。そのあと,きれいに水洗いをします。濃い緑色の廃液が流れ出ます。取り出せた繊維は褐色。

これで,ササの葉紙を漉く工程を迎えました。そして基本の工程に沿って紙を漉き,乾燥させました。しかし,ここで難題が出てきました。できたと思ったところが,ステンレス網から紙が剥がれないのです。紙繊維と網とが,完全に結合していることがわかりました。結局,やり直しです。

今度は,繊維を全部ミキサーで細かくしてから,同じようにステンレス網で漉くことにしました。これもまったく同じ結果に終わりました。


タケの茎繊維ではまったく生じない事態が,葉の繊維で生じ,他の植物でまったく起こりえない事態がこうして起こるのはふしぎです。初めての経験です。残された方法は,手で圧を加え水切りをしてから乾燥板に貼るという手,ステンレス網に分離用のネット(ソフトチュール)をのせてから漉き水切りは自然任せという手,乾燥は思い切ってアイロンを使用するという手しか思いつきませんでした。わたしは,近頃はステンレス網で紙を漉くことにしているので,ネットを用いることにしました。

なお,繊維を取り出す段階で一点ふしぎな事実に出合いました。そのことについて付記しておきます。

分離用ネットを使用する最終段階のとき,さらに繊維を加えて大きめの紙をつくろうと思いました。それで,一回目に葉を採集したのとは別の場所で葉を採集しました。それに重曹を加えて煮たのです。重曹の種類も異なっていました。前回は薬品(商品名『重ソウ』),今回は台所用として市販されているビニル容器入り粉末。煮終わったあとミキサーにかけると,今度は元のササの葉に近い色を呈していたのです。前は褐色,今度は薄緑。この謎は解けそうにありません。なんらかの相性に原因がありそうです。


2つの繊維を混合。


こうして仕上がったのが下写真のササの葉紙です。おもしろいことに緑色の雰囲気はまったく感じられません。紙質はソフトで,手触りでひっぱりには極端に弱い印象がします。茎の繊維とずいぶん違っています。


これまで限りなく壁にぶつかって,なんとか乗り越えながら,紙漉き法のノウハウを蓄えてこられた気持ちがしています。今回の壁もまた,わたしにとっては挑戦状を突き付けられた感じがしました。今,ホッとしています。

 


モンキアゲハの産卵

2015-08-17 | モンキアゲハ

8月17日(月)。午前10時。

アゲハの庭園で除草作業をしているときのこと。珍客モンキアゲハが飛来。後翅にある白い大きな斑紋でそれとわかりました。そのモンキアゲハが,なんとレモンとキンカンの木で次々と産卵行動を見せたのです。「めったに見ないアゲハが,我が家の庭で産卵とは!」と,思わずびっくり。大急ぎで腰に携行しているコンデジを出して撮影したのですが,動きが速いので写真としてはさっぱり。

去ったあと,卵を確認。3個ありました。もっと探せば見つかるはずです。産卵のしぐさを何度もしていましたから。

そのときは,風が吹いていたので直後の卵を撮影できませんでした。午後3時頃突然の突風とともに,激しい雨が降りました。雨が止むと,なにもなかったような静けさが訪れました。夕方近く撮ったのが,下の3枚の写真です。

キンカンの若葉です。白色が際立った卵です。


レモンの若葉にしっかりくっ付いています。


これもレモンの葉に産み付けられています。いくぶん黄色味がかった感じです。


わたしはモンキアゲハの卵を見たのは初めてです。もちろん,幼虫も見たことがありません。この機会に孵化から,できれば羽化までを追ってみたいと思っています。

それにしても,今日の目撃は幸運でした。 

 


マリーゴールドの花紙!

2015-08-16 | 野草紙

マリーゴールドの花は夏の花壇や通りを彩る,おなじみの花です。「その花から紙が漉けないか」。そんな話が届きました。花にかたちがあるのは植物繊維があることを意味しますから,なんとか漉けるでしょう。

さて,問題は紙材料にするだけの量が入手できるか,です。じつは花といっても開花中の元気な花を使う必要はなく,枯れて萎み始めたもの,すでに萎んでしまっているものを使いたいのです。それなら,花壇で植えていらっしゃる方に事情を話して分けてもらうか,通りのプランターに植わった花を整理してあげるつもりでいただくか,そんな入手方法が考えれられます。

どうしようかと思っていたちょうどそんな頃,たまたま所用でフラワー園に行く機会がありました。園の花壇にはどっさりマリーゴールドが植栽され,今を盛りとばかりに鮮やかな黄や暗赤の花が咲き誇っていました。そして,次々に開花しては,萎み枯れていく姿がありました。それをいただくことに。といっても,両手を広げて山盛りいっぱいといった量です。

摘んだのは黄色の花。褐色あるいは茶色に変わってゆく花をつまんで引くと,下に付いた種子まで一緒に取れました。マリーゴールドはキク科植物なので,種子に綿毛があるのが特徴です。一度でわかるのですが,この種子をいちいち取り除いていくのは誠に面倒な作業に思えます。種子も花のうち,どうせ紙にするのだから種入りの紙ができるのは意外性があっておもしろいのでは? そんなふうに思い,種子ごといただくことにしました。

そうなると,花摘みの作業はあっという間に終了。


持ち帰って,さっそく煮込みました。あとの手順は基本どおりに行いました。煮込み終わった花を洗っていると,種がたくさんあります。「これはおもしろそうだ」と,ほんとうに思えてきました。


あとは漉くだけ。

湿紙の表面には種子が原型のままどっさり。それもアクセントとしての意味がありそうです。

乾くと,りっぱな紙が! 


種に付いた綿毛も繊維です。花弁にも,頼りないながら繊維があります。紙にできないわけがありません。こうして,ゆかいな風合いのマリーゴールド花紙ができあがったのです。

 

 


スベリヒユ紙!

2015-08-15 | 野草紙

スベリヒユはスベリヒユ科の総称として名が使われている,おなじみの野草です。この科には,よく知られた園芸植物としてマツバボタンがあります。

スベリヒユは別名“日照り草”とも呼ばれているとおり,乾燥にはいたって強い性質があります。日照りが続いても,容易には萎れたり枯れたりしません。これはからだのしくみによります。葉も茎も丈夫な表皮に包まれていて,水分が蒸発しにくいようになっています。葉・茎を,折るなり引きちぎるなどしてから断面を見ると,そのことがよく理解できます。そのしくみは,ビニル袋に水を満タンに入れた状態に似ています。

 


植物は水分が適度にないと,暑い最中からだの温度が下げられないばかりか,光合成もできません。水分が継続的に供給されないまま一方的に出ていく事態でも生じれば,当然枯れ始めます。この点,スベリヒユの暑さ対策は強力です。

さて,スベリヒユの茎が折れやすいということは,茎には植物繊維があってもじつに頼りないことを意味します。こういう植物は一見,紙には絶対できないだろうと思ってしまいます。ところが,名案があります。スベリヒユのかたちとくらしをよく調べると,根が相当に丈夫で四方八方に深く広がっています。ここから,地中の水分をしっかりと吸い上げようとしていることが窺えます。


名案とは,この根を紙材料の柱にするという手です。茎には紙にできるような繊維がほとんどないので,根部分をたくさん集めることにします。今回はたくさん集めても,栞の大きさにしかなりませんでした。そうした体験はとりもなおさず,スベリヒユの生活と出合うきっかけになるでしょう。

煮る時間はせいぜい1時間。

煮たあとは,きれいに水洗い。元の量と比べると,ずいぶん目減りしているのがわかります。根はそれなりの強度を保っていますから,ほぐす必要があります。方法としては木槌で叩く,ミキサーにかける,すり鉢を使ってすり潰す,などがあります。わたしは木槌を採用しました。

出てきた繊維を洗います。それを漉いて乾かせば,スベリヒユ紙の完成! 

  

 
手作業で繊維を取り出したため少々荒い繊維にとどまってしまいました。これも紙の一種です。ここから導き出せる原則は“根にも繊維あり。それも紙の材料!” です。

 


カンナの花紙!

2015-08-14 | 野草紙

カンナの花は夏にふさわしいなあと強く感じます。赤い花はとくに,花言葉“情熱”にぴったりじゃないでしょうか。


大きな花弁は,じつは花弁でなく6本のオシベのうち5本が変化したものだそうです。本来の花弁は小さくて,たった1枚。まったく目立ちません。オシベとして役目を果たしているのは1本ということになります。それだけ,オシベを進化させてでも花を目立たせて昆虫の気を惹こうという作戦のようです。

さて,このカンナの花を使って紙をつくってみます。集める対象は,枯れていたり,枯れかけていたりする花。それに花を包んでいる萼(がく)も一緒にすることにします。

まずは水洗いから。


煮熟時間は1時間程度。液が黒く濁ってきます。現れた純粋繊維はもちろん白色なのですが,他の成分も入れると全体は黒褐色を基調とした色合いです。これほど黒っぽい紙料は数多くありません。萎びた花を使ったためか,アルカリと花の成分とがなんらかの化学反応を起こしたためか,いずれかと思われます。この工程作業をだれが行っても,同じ結果が得られるでしょう。

出来上がったのが下写真の紙です。

 

 
長い繊維がたくさん見えます。繊維が長いと丈夫な紙になります。色合いは確かに意外性を感じさせます。

 


オニユリの花紙!

2015-08-13 | 野草紙

オニユリの花から紙をつくるのは,そうむずかしいことではありません。大きな花には弱くても長い繊維があるので,紙がつくれるという見通しが立ちます。問題はそれを集めることができるかどうかです。夏の野にはごくふつうに咲いている花なのですが,開花時期を逃すともう手に入りません。7月中には紙作りを済ませておくつもりでチャレンジします。


花が萎むと落下します。水分を失ってカサカサしています。それも大事な材料になります。指先で揉んでみると,意外に強い感触がします。それは繊維がからだをつくっているからなのです。開花中の花,落下した花,織り交ぜて採集します。花弁だけでなく,蕊も使います。花の数にして30ぐらいあれば,葉書サイズの薄手の紙が漉けます。

炭酸水素ナトリウムを入れて30分程煮ます。煮終わった花を水洗いして,手で揉んでバラバラにします。花の姿がある程度残っていてもへっちゃらです。むしろその方が,できあがったときにオニユリらしさが醸し出されていてたのしいと思います。

繊維を団子状にしてみましょう。


さっそく漉きました。


漉いた日の夕方には,もうかなり乾いています。


翌日には,完全に乾燥しました。元の花が想像できる,おもしろい紙が完成! 厚みがあれば葉書にも使えます。


「まさか,ユリの花から紙なんて!?」。そう驚かれる人は多いはず。