自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

スベリヒユ紙!

2015-08-15 | 野草紙

スベリヒユはスベリヒユ科の総称として名が使われている,おなじみの野草です。この科には,よく知られた園芸植物としてマツバボタンがあります。

スベリヒユは別名“日照り草”とも呼ばれているとおり,乾燥にはいたって強い性質があります。日照りが続いても,容易には萎れたり枯れたりしません。これはからだのしくみによります。葉も茎も丈夫な表皮に包まれていて,水分が蒸発しにくいようになっています。葉・茎を,折るなり引きちぎるなどしてから断面を見ると,そのことがよく理解できます。そのしくみは,ビニル袋に水を満タンに入れた状態に似ています。

 


植物は水分が適度にないと,暑い最中からだの温度が下げられないばかりか,光合成もできません。水分が継続的に供給されないまま一方的に出ていく事態でも生じれば,当然枯れ始めます。この点,スベリヒユの暑さ対策は強力です。

さて,スベリヒユの茎が折れやすいということは,茎には植物繊維があってもじつに頼りないことを意味します。こういう植物は一見,紙には絶対できないだろうと思ってしまいます。ところが,名案があります。スベリヒユのかたちとくらしをよく調べると,根が相当に丈夫で四方八方に深く広がっています。ここから,地中の水分をしっかりと吸い上げようとしていることが窺えます。


名案とは,この根を紙材料の柱にするという手です。茎には紙にできるような繊維がほとんどないので,根部分をたくさん集めることにします。今回はたくさん集めても,栞の大きさにしかなりませんでした。そうした体験はとりもなおさず,スベリヒユの生活と出合うきっかけになるでしょう。

煮る時間はせいぜい1時間。

煮たあとは,きれいに水洗い。元の量と比べると,ずいぶん目減りしているのがわかります。根はそれなりの強度を保っていますから,ほぐす必要があります。方法としては木槌で叩く,ミキサーにかける,すり鉢を使ってすり潰す,などがあります。わたしは木槌を採用しました。

出てきた繊維を洗います。それを漉いて乾かせば,スベリヒユ紙の完成! 

  

 
手作業で繊維を取り出したため少々荒い繊維にとどまってしまいました。これも紙の一種です。ここから導き出せる原則は“根にも繊維あり。それも紙の材料!” です。