虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

何をニュースにするのか?

2011-03-21 | 新聞・テレビから
朝日の1面トップ記事は「9日ぶり 80歳と孫救出」。
夜のNHKテレビのニュースも同じく、これがトップニュース。

もちろん、助かってほんとによかった、と思うが、これは、9日間、発見されなかった、というニュースだろう。救助が遅かった、といえるのだ。そして、まだ生きていて、発見されていない人もいるかもしれないのだ。救出にまだまだ努力しなければならないのだ。それなのに、テレビ局は病院に入院したばかりの少年の病室にまで入って、詳しく様子をインタビューをしていた。その姿勢が、よくわからん。そこまでインタビューするなら、東電の社長にインタビューせよ。

原発事故のニュースでは、危険な最前線で働く人々に報道の重点を移しているように思える。昨日から、今日も、消防庁の人の会見をくりかえしテレビで放送していた。
むろん、消防庁の人(自衛隊、その他最前線で働く人たち)の働きには感謝するし、拍手を送りたいが、しかし、これも原発事故が収束してからでも遅くはあるまい。中継の会見で3人の人に家族にどう伝えたか、という質問で、一人は、「安全を確認できなかったら、仕事はしないよ」と答えていたが、テレビのニュースでは、この人の答えはカットし、「信じて待っています」「救世主になってください」といわれたという二人の話しか放送していない。この原発事故騒ぎの中、プロジェクトXの英雄談にしたいのだろうか。

原発事故で国民が心配で、注視しているのは、なによりも、原発の事故の真実の状況(作業の進行状況ではなくて)と、放射線の影響だろう。
今日の新聞でいうなら、「農産物に放射能、計5県」がトップにくるべきだろう。本来なら、これがニュースだ。

ところが、新聞もテレビも、「心配はありません」の一点張り。
「心配ありません」といいながら、野菜は出荷停止、水は「飲まない方がいい」という。わけわからん。

古くは田中正造の足尾銅山、戦後なら水俣病、専門家たちは、「心配ない」といってきた歴史があるので、素直に信じられないのだが・・・。


映画「グッドナイト&グッドラック」

2011-03-21 | 映画・テレビ
HKBSで放送していた「グッドナイト&グッドラック」を見た。予備知識はまったくなかったので、得した気分になった。全編、あえて、白黒。ドキュメントドラマといってよく、最後まで緊迫感を持って見た。素晴らしい映画。

1950年代、アメリカにマッカシー旋風が吹き荒れた時代で、全米でいわゆる「赤狩り」がおこなわれ、だれもが自分が「共産主義者」とみなされることを恐れた時代だ。

CBSのエド・マローという実在のニュースキャスターが主人公で、実話だ。、エド・マローとそのスタッフたちは、圧力に屈せず、自分の番組でマッカシー議員を批判する放送をする。
当時のフィルムやマッカーシー議員の映像も多用したドキュメントといってもいい。

「グッドナイト&グッドラック」はエド・マローが番組の最後にいつもいうセリフ。

脚本・監督、ジョージ・クルーニー。クルーニーはプロヂューサーの役。グルーニーって、こんな映画を作る男だったのか、と見直した。何度か挿入されるジャズボーカルもよかった。

エド・マローになる俳優、名前は知らないが、仕事で戦う男を、渋く、見事に演じていてほれぼれする。

かれは言う。「ニュース番組はテレビの顔だ。テレビが娯楽番組ばかりになれば、テレビはただのおもちゃの箱になってしまう」。テレビ関係者、この映画を直視できるのだろうか。

未曾有の原発事故が起きたにもかかわらず、東京電力への批判はもとより、これまでの原子力産業のありかたにさえ、どこのテレビ局も大新聞社もひとことも触れえない日本。国民にとって重要な地震・原発事故情報の記事、放送のしかたを見ていて、あらためて、この国のメデイアの堕落ぶりに驚く日々だ。