虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

ナロードニキと二葉亭四迷

2005-04-24 | 読書
渡辺雅司「明治日本とロシアの影」には、ロシア語の先生コレンコと、生徒22人がいっしょにうつした写真がある。

頭はつるつるで、あごにはりっぱな髭をはやしたコレンコ先生もナロードニキです。1920年代にソ連で編纂された「革命家辞典」にも出ているらしい。ペテルブルグ農業大学時代に政治活動で逮捕され、ペテロ・パウロ要塞監獄に拘留後、流刑、その後、アメリカに逃亡し、日本にきたようだ。髭をはやしているから年とって見えるけど、まだ30代の先生なんだ。

生徒の中に二葉亭もうつってるけど、顔は四角張っていて、口は大きく、硬派の顔ですね。けんか強そう。他にも眉目秀麗なやつ、ぼんやりした顔、しっかりした顔、おとなしそうな顔の少年がいるが、たぶん、みんな今の高校生くらいだと思うけど、なんだか中学生くらいの顔に見える。
なつかしい顔をしている。二葉亭の他の少年たちは、どんな人生を送っただろう?と思わざるをえない。

コレンコのあとの、グレー先生もナロードニキで、それもかなり大物だそうだが、まだ謎の人らしい。グレーさんは、ロシア文学を生徒の前で名調子で朗読して聞かせてくれたそうで、生徒に忘れられない印象を残したとか。コレンコ先生もグレー先生も、メーチニコフの紹介で赴任したようです。

二葉亭四迷に興味を持ちました。今度、読んでみよう。


入手「明治日本とロシアの影」

2005-04-24 | 読書
注文していた渡辺雅司「明治日本とロシアの影」(ユーラシアブックレット)を入手しました〈600円+税)。出版は2003年となっているので、在庫はまだあったのですね。

ブックレットですから、約60ページくらいの小冊子。内容は、岩波文庫「回想の明治維新」の解説を少しふくらませた程度です。新資料として、メーチニコフがいたころの東京外国学校の外国人教師たちの記念写真(メーチニコフも写っている)が表紙になっていました。また、メーチニコフの生徒であった、村松愛蔵(愛知では郷土の偉人になっている。自由民権過激派の指導者)と星野義文(ペテルブルク大学の日本語教師)についてすこし詳しく紹介されています。

岩波文庫の解説にもあったけど、メーチニコフは大物の革命家ですね。「三銃士」を書いたアレクサンドル・デュマがメーチニコフを主人公にして物語を作ろうとして接触したこともあるらしい。

著者の渡辺雅司さんには、メーチニコフと日本についてこんな小冊子ではなく、まとまった長い本をぜひ出してほしいと思う。しかし、あんまり需要はないのかもしれない。

著者は、あとがきで、「このところのロシアばなれは眼を覆いたくなるほどだ」と書いてある。多くの大学でロシア語は第二語学からはずされ、ロシア文学も敬遠される傾向にあるという。たしかに、面接で、ロシア文学が好きです、なんて答えたら、敬遠されそう。そんな雰囲気さえかもしてはいけないような、バリバリした会社がふえている。

著者は小学校から英語をおしえて何になるか、といってるけど、まったく同感だ。
みんながわれもわれもと役に立つことばかりの習得にいそがしい。英語とパソコンはその代表かもしれない。役にたたないことは見捨てられていく。

これは、明治日本のころからそうで、当初、東京外国語学校のロシア語科の学生は少なく、薩長藩の子弟は一人もなく、立身出世とは無縁の道だったそうな。

しかし、実益にならない世界こそが、人の世に深みを与えるのにな。