らんかみち

童話から老話まで

造船所って、毒を食らわば皿まで

2013年05月28日 | 暮らしの落とし穴


 ついこの前までプルプル震える日もあったのに、いきなり真夏日だ梅雨入りだといわれてもなぁ。てか、これが日本であり半世紀も住み続けていながら何をか言わんや。
 写真は建設中の造船所で、騒音だのなんだのと不都合なことはある。しかしここは海事都市今治のはずれ、造船所なんて子どもの頃から存在して騒音を出し続けている。今さら何をか言わんや、ではあるんだけど……。

 見たこともない大型機械が次から次へと運び込まれては去っていく。昨日は転がされていた緑色の構造物は、今日見たら立ち上がっている。あれは造船所だからクレーンだと思う。まかり間違っても、船の安全な建造を見守る観音像とかじゃないと思う。
 いや待てよ、船に関わる人々ってのは概ね信心深い。うちの村の漁船のほぼ全てには、海上交通の安全を祈って金比羅神社が祀られているではないか。それに、今度できる造船所の会長も信心深そうに見えたからね。

 新造船所の是非はともかく、潮干狩りはできなくなると思う。船底には、牡蠣が付着するのを防ぐ船底塗料というのを塗るんだけど、いうなれば除草剤みたいなもので、造船所周辺の生物の一部は死滅してしまう。

 ぼくが子どもの頃にカブトガニやアサリなんて普通にいたけど、今やカブトガニは天然記念物だし、アサリは韓国産や北朝鮮産を撒いて潮干狩り。ハマグリも売っているけど、たぶん中国産。海は澄んで綺麗なんだけど、魚は減ってしまった。魚群探知機が安価になって乱獲が祟ったのは間違いないけど、里山が荒廃したのも要因の一つだろう。

 世界中で「窒素を使いすぎて赤潮の原因になっている」という警告があるけど、当地の海ではそれすら無くなっている。過疎化の上に造船所で働いていた中国人研修生もいなくなってしまった。彼らは畑を作って生産的だったけど、代わったフィリピン人の若い男たちは、やらないみたいだね。
 潮干狩りをする人もやがていなくなり、海の水は船底塗料の影響で澄み切り、生物がいなくなる。少子高齢化で人間もいなくなるけど、船は作り続けられる。すごい世界だな、そこまで見届けたいと思ってはいるんだが……。