らんかみち

童話から老話まで

ボンゴレ・ロッソは陶芸のために食う

2013年05月18日 | 陶芸


 久々に陶芸の窯焚きで、要釉斎先生の一味と合同で素焼きを行う。派閥の領袖である要釉斎先生は齢90を迎え、もうどうにもこうにもいけない。元教育者ということもあり口は達者なんだけど、目も耳も衰えて窯焚きなどできる状況にないのだ。手下たちも窯焚きはボスに任せっきりだったので、どうにも心許ない。

 新窯に火を入れながら、一味はどうするんだろうと様子を見ていたところ、「旧窯は任せておきなさい」と要釉斎先生がまかり出たものの、ライターが無くて火がつけられない? 旧式の窯なので電気着火じゃないんだね。仕方ないから新窯の火種を分けてあげる。
 がしかしだ、途中で火が消えるわ煙はもくもく出始めるわでパニックになってしまった。「もういかん、バカになってしもうた」と、要釉斎先生がぼくに助けを求めてくるので、新旧両方の窯を焚いた。

 明日は一味を率いて釉薬かけに臨む。何事にも一家言ある要釉斎先生のことは適当にスルースしながら作業を進めるつもりだが、一味のために今夜はボンゴレ・ロッソ。丸ごと釉薬を掛ける作品がいくつかあって、釉薬が流れて作品と棚板がくっつくのを防ぐのに貝殻を下敷きに使うのだ。

 派閥ってのは面倒なもんだね。窯焚きくらいは引き受けるが、派閥を率いるのはお断りする。人間性は悪くないんだけど、アクの強い連中が派閥を牛耳って有りもしない軋轢を作り出すような不作法に荷担するつもりはない。
 いや、軋轢というより老害に傾いているのかも知れないな。有無をいわせないほと圧倒的な技術と知識を持ったメンバーがいないせいで群雄割拠の戦国時代を迎えているといっていい。抗争を終わらせてくれるターミネーターの登場を待ちたい。