らんかみち

童話から老話まで

窯焚き一生というのが理解できた

2013年05月22日 | 陶芸


 窯出しの朝、要釉斎先生の作品が良く焼けていて驚いた。あの温度帯にあの還元では、とんでもないことになるんじゃないかと思っていたけど、老師は酸化も還元もほぼ同じ結果の期待できる釉薬を選んでいたようだ。作品を置く場所については、その位置をターゲットに温度管理していたらしい。

 ぼくの作品も入っていたが、全て焼き直しだったので大きな影響は無かった。しかし要釉斎先生の弟子たちの作品は散々だった。下の棚に温度を合わせたため、窯の特性で上の段に行くほど生焼けになっていた。だから還元の影響が無かったとも言えるのだろうが、作品の体をなしていない。
 どうやら、自分の作品さえ上手く焼ければ手下どもの作品など知ったことか、というスタンスらしい。そうか、だから窯詰めの時に老師から強い邪気が放たれていたのか!

 老師の暴走ぶりは、石原さんや橋下さんのそれを凌いで余りある。「土は自由自在に操れるんじゃが、女房だけは思うようにならん」という至言も今や語りぐさとなっているし、直近では「焼き物はロクなものを焼けんが、ピザは上手に焼けるじゃないかね」が受けた。
 老師の作品はエロチシズム満開で、ぼくが女性にプレゼントしようものならセクハラの嫌疑すらかけられるところを、実績と年齢で押し切ってしまう。曰く、「あの先生なら、しょうがないか」と。

 ああしかし、気の毒なのは手下どもだ。日頃は親方を軽んじているが、窯焚きで報復されるというか、軽んじられていることに気がついていないようだ。陶芸窯というのは常に一杯にして焼かねばならないから、老師は自分の作品を焼くためだけに手下どもの作品を窯に入れているのだ。なんだか、カッコウがモズに託卵するのを思わずにはいられない。

 写真は焼き直したぼくの作品。1回目の素焼きで割れてしまったので本焼きでくっつけようとしたけど上手く行かなかった。失敗した理由が分かったので、再チャレンジしてみたら、くっついた。手をかけた作品なのでとても嬉しいが、売ることはできないので自分で使う。
 他にもいくつか判明したことがある。たとえば古窯の方が窯変が出やすいということ、新窯の方が還元になりやすいということ。「窯焚き一生」といわれる所以だね。