らんかみち

童話から老話まで

最後に見る夢を予約したい

2010年01月16日 | 男と女
 良い子はこの日記を読んでいないと思うけど、もしまちがってこのページを開けてしまった良い子がいたら、すぐに閉じてね。
 
 うぉ~、ウンコもれそー! 慌ててコンビニに走りこみトイレのドアを開けると、そこは寒風吹き荒ぶ断崖絶壁。見下ろせば荒波が真白にぞ砕け散っている。なんじゃここは! まるで自殺の名所じゃないか、こんな過酷な条件でウンコできるワケがなかろうと、別のコンビニに転がり込んでトイレのドアを開けたら、設置されていたのは赤ちゃんのお○る。
 さっきよりマシとはいえ、こんなものにウンコをひり出した日にゃ……しかしもう我慢は限界、お○るだろうが痰壷だろうが垂れ流すしかない。意を決してお○るに座るや、後ろでスゥ~とドアが開き、陽の光がトイレ内をくまなく照らしたところで目が覚めた。
 しまった、寝ウンコやってもた! 大慌てて自宅のトイレに駆け込んだものの、何事も無かっただけでなくウンコさえ出ない、なぜだ? 溺れる夢を見たときは間違いなくオシッコしたいとき、そしてエッチな夢を見たときは大抵の場合は男性が充実、ていうか勃っておるというのに。
 
 エッチな夢、それで夢精をしたのは今を去ること40年前、小学5年生のときだったでしょうか。そのころ東洋の魔女がスポーツ界を席巻し「アタックナンバーワン」とか「サインはV」といったアニメやドラマが放送され、女子の体操服はブルーマでなければ、もはや恥ずかしいといった時代でした。
 我が田舎小学校にもついに短パンが駆逐され、ブルーマの導入される日はやってきました。これで世界と同列に並んだのだと感涙に咽んだ記憶はあいまいですが、同級生の女の子にブルーマの感想を聞きました。すると彼女は、教室に二人っきりであることを確認してから答えました。
「わたし、ブルーマきらい。ブルーマはいたら、あそこがビチョビチョに濡れてしまうもん」
 さあその夜ですがな、彼女がぼくの夢に登場して、あられもない姿を披露してくれるじゃないですか。そして神々しくもベチョベチョに濡れたあそこは光り輝き……ががやき……輝きすぎて実態が分からん! しかし初めてのぼくにはそれでも十分だったのでしょう、あえなく昇天してしまいました。(後年、この輝きは光を失うのだが)
 あぁしかしなぜ、こんないにしえの恥部をワールドワイドで告白せにゃならん! だけど今しゃべってしまわねば、この後の人生も夢精の十字架を背負いながらぼくは生きにゃならんです。これというのも、5日前のホッケが悪いんやぞ。
 
 とりあえずビールを注文したら、とりあえずホッケも注文したいホッケマニアのぼくですから「ホッケの開き大178円」のチラシを見のがすはずもありません。♪ホォ~ッケホッケ、熱燗しょうじょ※ ホッケ音頭を口ずさみつつ目指すはスーパーのホッケ売場です。
「HALくん、HALくんでしょ?」
 店内で見知らぬおばちゃんに声をかけられたのですが、呼びかけ方からすると同級生のようです。しばらく立ち話してようやく顔と名前が一致した瞬間、ハッ、オ、オレ、このおばちゃんで夢精したんだ!
 40年という時のバリアーを軽々と突破した負の記憶はフラッシュバックし、寝小便の布団を干しているのを見とがめられた小僧のような気分になり、古井戸があったら飛び込みたいぞ。顔を真赤にして早々に退散してみると初心はすっかり放逐され、ホッケを買い忘れておりました。
 
 ぼくの父は1年間病院で寝たっきりの闘病した末に、治る見込みの無いことを悟って酒を欲しがり、許されました。最後の一月は吸飲みに満たされた酒を旨そうに飲み、一升瓶を2本空けてからは目を覚まさなくなりました。
 モルヒネ入の点滴で眠り続けた最後の一週間、父はどんな夢を見たのでしょう。両親か、それとも女房か、子どもらの夢も見てくれたろうか。酒飲みなら、最後に見たのが酒を飲む夢だったら至上に違いない。
 叶うことなら、最後に見る夢を予約しておきたいと思う。せやかて最後に見るんなら、ウンコのんより、エッチな夢を見たいやん?
 
※正しくは「懺悔、懺悔、六根清浄=さ~んげさんげ、ろっこんしょうじょう」