らんかみち

童話から老話まで

合コン必勝法

2008年10月28日 | 童話
 コンパの会場は、今は亡き映画監督の記念館を借り切っていた。といっても千円の入場券は買わされた。コンパは只と聞いていたので詐欺に遭ったような気持ちになるが、ここまで来て引き返すわけにも行かない。交通費は自腹を切っている。こんな原始的な手口に引っかかるなんて、足元を見られたもんだ。
 
 参加者は、男6人、女6人のグループが2つで、合計2ダースだったが、その中に会社の同僚であるMがいるではないか。部署が違うのでほとんど口を聞いたことはないが、女遊びが派手だと噂は聞いていた。
「よう、松っちゃんやんけ。あんたもナンパしにきたんけ?」
 向こうも俺に気がついて、馴れ馴れしく声をかけてくる。
「ナンパっちゅうか、保険に入ったから元は取りたいしな」
「な~るほど、その様子なら合コンは初めてやな。いやいや、ええかっこしてもみんな同じやって。女の方もそやで、男さがしに来てるんやからな」
 どうやらMのやつは相当慣れていると見え、俺が心臓バクバクに緊張しているのを見透かしていう。
 
「必勝法を教えたるわ。3ついうからよう覚えときや。まず大切なことは、女を値踏みしないこと。女いうのは男を値踏みしても、自分がされるのは極端に嫌うもんや。そういう気持ちで女と対峙したら、絶対に態度に出る。次に、相手の女が自分に好意を持ってくれそうかどうかは、3分で判断すること。脈のない女相手にいくらがんばっても、自分が傷付くだけや。で、もっとも大事なのは、相手を選ばないこと。デブでも、ブスでも、年増でもいただけるときにありがたくいただくこと。あ、それから、いうまでもないけど、合コンを軽んじる発言は無しな。ほな、幸運を祈る」
 そういうと、Mは俺とは別のグループに消えていった。「値踏みしない、3分で判断、相手を選ぶな」と、俺は指を折りながらやつの言葉を何度もつぶやいた。