北海道美術ネット別館

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紙媒体はなくならない。ウェブサイトの致命的な欠点とは

2021年03月31日 12時49分55秒 | つれづれ日録
「美術ペン」がクラウドファンディング募集 」の続きです。

 ここでは「美術ペン」の中身自体についての論評はしません。
 実物が手元にないからです。
(札幌の自宅に帰って、胆振東部地震で崩壊した書類の山から探し出す必要がある)

 ここでの主題は、題名のとおり「紙とウェブサイト」ということです。
 1995年にパーソナルコンピュータ用の基礎ソフト「ウィンドウズ95」が発売されて以来、インターネットで文章などが発表される率は、年を追うごとに高くなってきました。
 いまも新聞、雑誌、書籍は紙で大量に出ていますが、それらをネット経由で読む人は確実に増えていることはいうまでもありません。

 しかし、美術批評や美術史の分野で、ウェブサイトの重要度が紙媒体を上回ったとまではいえないでしょう。
 たとえば、最近まとめられた「池田緑展」の図録は大変な労作で、膨大な関連文献の名が挙げられていますが、それはずべて書籍、雑誌、新聞であり、ウェブサイトについては一つも触れられていません。
 帯広コンテンポラリーアートの最終回がサイト上の開催となったことを考えれば、これで良いのかという思いもわいてきます。
 ただ、ウェブサイトは、インターネット環境さえあれば容易に、しかも多くの場合無料でアクセスできるという利点がある半面、決定的な弱点があるのです。

 ウェブサイトの弱点は

いつ突然なくなるかわからない

ということです。

 例を挙げれば、以前、札幌時計台ギャラリーのサイトは、ギャラリーで個展を開いた画家の作品画像など、多くの資料が掲載されていましたが、ギャラリーの閉鎖とともにネット上から失われてしまいました。
 作家本人が亡くなりサイトも消えた事例もあります。
 17年前の北海道美術ネットから貼られているリンクの大半は、クリックしてもつながらなくなっているのが現状です(引っ越して、URLが変わっているだけのことも多いですが)。

 これが印刷物であれば、よほど部数が少ない特殊なもの以外は、リリースから20年でこの世からまったく消え去ってしまうことは考えられません。
 展覧会図録の文献一覧に、マイナーな地方新聞などが挙がっている場合、現地の図書館などを訪れる手間は大変なものですが、その手間がまったくの無駄になるということは考えられません。どんなに少部数の本でも、おそらく国会図書館などを当たれば、見ることが可能でしょう。
 紙の書籍や雑誌であれば、古書店からひょっこり姿を現すこともあります。

 しかし、消えたギャラリーのサイトは、かつてのサイト管理人が自分のところに保管しているか、だれかがダウンロードしていれば、ふたたび閲覧することができるかもしれません。ですが、少部数の本や地方紙などにくらべてもむしろ大変な労力がかかります。

 ウェブサイトの弱点が解消されないかぎり、「美術ペン」に限ってどうこうという話ではなく、紙媒体の意義はなくならないものと考えられるのです。 


 最後に「美術ペン」のクラウドファンディングについて、少しだけ触れておきます。
 実物がどこで手に入って、もともとの価格がいくらか、その2点を明示しないと、寄付はしづらいんじゃないかなと感じました。
 見たことがない上に、これからもどうやって見たら良いのかわからないメディアに、お金を出すのはむずかしいのではないでしょうか。


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