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大成浩「風の塔 №8」 旭川の野外彫刻(45)

2021年09月26日 12時23分00秒 | 街角と道端のアート
(承前。43はこちら)

 前項で述べたとおり、(44)の「風雪の群像」は、盛り込むべき要素が多すぎる上、現在「美術ペン」誌で吉崎元章さんがこの作品をめぐる論考を連載中ということもあり、後に回すことにして、常盤公園の残りの作品を順番に取り上げていきます。

 さて、2本の平たい板のような形状が支え合っているような、シンプルで重厚な石の作品は、高さ2.4メートルもあります。
 日本の団体公募展の中でも大きな規模と長い歴史がある「国展こくてん」の、1987年の展覧会に出品され、同年の第18回中原悌二郎賞を受賞しました。
 常盤公園に設置されたのは89年です。


 『彫刻家の現場アトリエから』(武田厚著)によると、大成浩おおなりひろしさんは1939年(昭和14年)富山県生まれ。65年、東京藝大大学院修了。
 中原賞のほかにも、第13回現代日本彫刻展毎日新聞社賞、第10回現代日本彫刻展宇部興産(株)賞などを受けています。

 大がかりなプロジェクトを常時抱え、いくつものシンポジウムを主催し手がける、パワフルに制作を続ける作家です(彫刻の世界で「シンポジウム」というのは、パネルディスカッションと同義ではなく、数人の彫刻家が寝食を共にしながら現地で野外彫刻の制作を手がけることを指すことが多いです)。

 かつて道立近代美術館で学芸課長を務め、美術評論家として現在も健筆を振るっている武田厚さんは、大成さんについて次のように書き出しています。

 「風」の作家大成浩の作品は堂々とした存在感とシンプルだがその風格と力強さが魅力となっている。と同時にその仕事振りはまさに多面的であり、やや巨漢タイプの作家自身に相応しく正真正銘エネルギッシュでかつ熱情的なのである。
 例えば数十トンの巨石と取り組む。およその外形に削る。ハンマーを石にあてる。ハツリをくり返す。形を整える。穴があき、またハツル。いつか巨石の体は半分以下に減ってしまう。その何かは原石の中にすでに作者が見ていたものだ。石を彫るとはそういうことである。


 大きな存在感と、周囲の環境にとけ込む自然さとが、両立している大作だと思います。

 大成さんの石彫は、帯広市にもあるそうです。



(この項続く) 


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