ヤングキングアワーズ 2016年12月号より
今月の『蒼き鋼のアルペジオ』感想はこちら
今月の『僕らはみんな河合荘』感想はこちら
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)
ヴァグラムの戦い、決着!
包囲殲滅を図るカール大公率いるオーストリア軍。
ウジェーヌは対応すべく、マクドナルドに西へ行くよう指示しています。
この独断で軍を動かした行動は、ナポレオンの耳に入るものの、
それを「でかした」と評価されていたのは面白い。
あのウジェーヌくんが、今ではヒゲも生やして立派になっているのは、
なかなか感慨深いものがありましたけども、実力も評価されていて、喜ばしい所。
ナポレオン、マッセナに指示。
敵の包囲が完成すれば、左翼から崩れると考えたナポレオン。
そこでマッセナを南下させ、それを防ごうというのですが、
これではマッセナが敵前を通過することになり、かなり危険な状況に。
ベルティエたちが驚くも、ナポレオンは「マッセナならできる」と言い切っていて笑!
いや、無理させすぎでしょ、とは思うのですが、たしかにマッセナであればできる
という妙な信頼はありますよね(^^;
そして実際、ぼやきながらも実行してしまうマッセナさん。
敵に集中的に狙われるのの、べシェールやラサールの活躍で乗り切っていたのは、
カッコよかった! イタリア遠征組が心強いというのも納得です。
失った勇気を奪い返す。
昨夜の戦いで、逃走するはめに陥った軍団に、マクドナルドが喝!
ナポレオンに与えられた汚名返上の機会を無駄にせぬようにと、
ハッパをかけています。
そして、兵士たちが未熟ゆえ、間隔を狭めた編成をとっており、
これでは敵のマトになると懸念されていますが、マクドナルドは逃走を防ぐため、
あえてこのようにしていて、覚悟のほどがうかがえます。
ここで、マクドナルドが思い起こすのは、ナポレオンの不興を買った日のこと。
皇帝陛下の妹ポリーヌと、男女の営みを交わしたことがバレたことで、
自分はナポレオンに嫌われたと思っている様子。
その再現場面、当時と現在のマクドナルドが、ナポレオンの怒りの表情をはさんで
描かれているのですが、過去の若さと現在の精悍さの対比が、時を感じさせますね。
これはウジェーヌの姿も同様で、時間の経過を印象付ける効果があります。
マクドナルドの叫び。
やがて、右翼ダヴーの進撃により、ナポレオンは戦いが佳境に入ったと確信。
ウディノとマルモンがヴァグラム高地を急襲する中、マクドナルドのいる中央では、
凄惨な状況が繰り広げられ・・・
8千の兵が4千にまで減ってゆきます。
援軍を要請するも、さらに兵士は削られてゆき、次第に追いつめられるマクドナルド。
まだ援軍は来ないのかと焦る彼が、必死にこらえたような表情を見せた後、
「俺たちを全滅させる気か!!」と叫び声をあげる場面は、命がけの迫力がありましたね。
その頃、ナポレオンは予備軍を動かしてマクドナルドを救援させており、
おかげで勝利をつかむことができたわけですが、マクドナルドは皇帝に見捨てられる所だった
と考えているようで、やはり過去のことを引きずっている様子。
ナポレオンとマクドナルド。
そこへ、ナポレオンがやって来て、マクドナルドにかけた言葉が
「んなわけあるか」だったのは、何とも可笑しかった!
私怨で軍を危険にさらすなどありえないわけで、援軍が送れなかったのは
敵の増援としてヨハン大公が来るかもしれなかったため。
なので、中央でのマクドナルドの奮戦は、ナポレオンも大いに評価しており、
そこからナポレオンがマクドナルドに対して「今では我々は友人だ」と
述べていたのが、何とも爽やか。
その言葉を受けてマクドナルドは、かつてのポリーヌとの情事の際、
彼女から言われたことを思い出していましたけど、これがまた素晴らしかった!
まさか、ポリーヌさんが、こんなことをしていたとは・・・
ただの男好きというだけではなかったのですね~。
彼女のしていたことは、兄ナポレオンの味方を増やすこと。
「人生はいい時だけじゃない。悪い時も助けてくれる人が友人」という言葉には、
思わず感動してしまいましたよ。
そして、差し出されたナポレオンの手を取るマクドナルド。
彼の心の声が、その内面の誠実さを感じさせて、輝いて見えましたね。
ナポレオンも、ランヌというかけがえのない友人を失ったばかり。
ここでマクドナルドを「友人」と呼んだのは、まさにランヌの仇討ち後、
少しでも“取り返したかった”からなのかもしれません。
などなど、ヴァグラムの戦いに決着のついた今回。
いよいよ絶頂期を迎えるナポレオンですが、それすなわち、転落の前触れでもあります。
はたして、どうなってゆくのか・・・と気にしつつ、今後も楽しみです!