散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

南シナ海、米国の秩序観と中国の挑戦2~「平和の代償」を改めて読む

2015年11月21日 | 永井陽之助
米国への中国の挑戦を理解するには、毛沢東に戻ることが必要だ。これは彼の共産主義イデオロギーではなく、根っこにある伝統的な中国の戦略思想に戻ることになる。即ち、共産主義による革命イデオロギーではなく、中華思想による膨張イデオロギーというようなものだ。

既に米国の国際秩序観の基底に潜む「正義の戦争」という発想は、オバマ大統領がビンラーディン殺害の際に「正義はなされた」との言葉を放った際に永井陽之助「平和の代償」に書かれていることとして触れている。
 『「米国の戦争観」と「正義の戦争」110507』

第一論文『米国の戦争観と毛沢東の挑戦』の「米国の戦争観」の部分だ。
1965/6の発表であるから、50年前にオバマの発言を予測したとも云える。これに対して「毛沢東の挑戦」を「中国の挑戦」と読み換えれば、現在の南シナ海問題にも当てはめ可能だ。

その論文の中で、毛沢東を「崩壊過程にあった清朝末期の乱世に生まれ、幼い頃から、「岳飛伝」「水滸伝」「三国志」等の異端の伝記小説に親しみ、孫子等の中国伝来の権謀術数の英知を身につけた」大戦略家と位置づける。

「岳飛伝」は知らなかったが、「水滸伝」「三国志」そして「西遊記」「紅楼夢」を筆者は小学生高学年の時期に愛読していた。英雄達が躍動する処にワクワク感を持ったからだろう。ただ、「史記」までは読んだが、流石に「孫子」までは往かずに、「三銃士」「モンテクリスト伯爵」「トムソーヤ」「ハックルベリーフィン」と広がったのだが…。そこで、「平和の代償」を読んだ時に、毛沢東の部分は覚えていた。

閑話休題。「永井の毛沢東論」を続ける。
間接的迂回的アプローチの有効性を実証的方法で明らかにし、永井の戦略論に影響を与えた英国軍事専門家のリデル・ハートは、「古今を通じて最高の戦略家として孫子をあげ、彼の名句を多数引用している」と述べ、「抗日戦争の初め、1930年代に書かれた有名な『持久戦論』『中国革命戦争の諸問題』等は米国を初め、世界の軍事研究家の古典になっている。」と指摘する。

更に、『矛盾論』の「戦争と平和は互いに転化しあい…戦争は転化して平和になる」を引用し、「政治が紛争の普段の克服過程である、という鋭い弁証法的洞察を示している。」と述べる。戦争と政治の関係について、レーニン、クラウゼビッツを引用し、毛沢東は、それらよりも更に徹底した“動乱イメージ”を持つと云う。
「政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治である」(持久戦論) 。

次に、中国特有の「中間地帯論」に進むが、割愛する。現在の習近平路線は伝統的な中国戦略として「毛沢東の戦略思想」を位置づけ、現代版の「米国への挑戦」を試みている様だ。ベトナム、フィリピン、マレーシアを個別に力で抑え、「九段線」を描いて懐を広げ、米国が出てくる前に基地建設に入った。周到だ!
 『キッシンジャーの懸念が的中~南シナ海、米国の秩序観と中国の挑戦151101』
 http://blog.goo.ne.jp/goalhunter_1948/e/ff17e526cdcec5e623b7f7e3c874158a

以下は香田洋二氏「中国の南シナ海環礁埋立と日本の安全保障」(2015/07/28)から中国戦略を引用する。


 
・策源地(後方基地)…海南島・三亜、海軍基地(アジア最大)、空軍基地
・前進拠点…ウッディー島、埋立飛行場(2500m級滑走路)、港湾施設
(南シナ海は現在、拠点無(海軍艦艇の限定的な展開)、以下の建設が進む)
・ファイアリー・クロス礁…埋立飛行場(3000m級滑走路)、港湾施設
・6環礁埋立地(上記礁の半径約200km圏)…出先拠点
・全完成→南シナ海、ウッディー島―ファイアリー礁の南北線が中国下に
・将来、中国実効支配のスカボロー礁の埋立、軍事基地化→三角形が中国下に

      
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