![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/39/d248a0597acf25aeae32a946c3106f48.png)
この本の説明として以下のことが書かれている。
「ブラックスワン」とは、先ず有り得ない事象のことで三つの特徴を持つ。
1)予測できないこと 2)非常に強い衝撃を与えること
3)いったん起きると、それらしい説明が作りあげられ、偶然には見えなくなったり、予め判っていたように思えたりすること
しかし、実際に起きるまで、「黒い白鳥」に気が付かないのは何故か?
3)の説明が、やけに長い。しかし、そこと、その次の「気が付かない」ことを合わせて解明することがこの本のポイントとなる。
上記の3)を読んだ時、永井陽之助の“国債情勢と予測”についての言葉を想い起こした。(『序にかえてー国際情勢と予測』「多極世界の構造」P13)。
それは「…事件が生じた後になって、まるで昔からすべてを知っていたかのように、その必然性を説明するのが常であった」というセリフだ。
これはまた、別の機会に説明しよう。話を戻してブラックスワンだ。
その著者であるタレブが「フォーリン・アフェアーズ リポート 2011年7月号」に寄稿した論文を偶々読んだので紹介しよう。
『ブラックスワンの政治・経済学』
ボラティリティを抑え込めば世界はより先の読めない危険な状態に直面する。
人間は本能的に、自分たちの世界を改革し、それが作り出す結末を変化させようと現実に介入するが、特にその介入対象が複雑系である場合、想定外の事態につきまとわれることになる。
誤解が生じるのは、人類が直線系の領域において歴史的に洗練度を高めてきた分析を、複雑系にもそのまま当てはめて考えようとするからだ。最近の中東における革命はその具体例だ。従って、状況を変化させるより、柔軟なシステムで、対応していくべきだ。変動や衝撃を抑えようと政策的に模索するのは、結果的に非常に大きな事態急変のリスク、つまり、テールリスクを高める。
<ブラックスワンの衝撃>
なぜトップエリートは、事態の展開に驚き続けるのか。現実には、危機が回避できないことを示す分析は数多く示されていた。中東革命についても、重要なポイントは、安定を維持するため、現状が頻繁に大きく変化する「ボラティリティ」を人為的に抑えつけようとし、結局は、事態の急変に直面したことだ。
明確でないリスクを「かなりの確率で大きな帰結を伴う統計的リスク」とみなして、確率は低いが高い衝撃と大きなリスクを伴う「テールリスク」を政策決定者の意識から消し去るのは間違いだ。チュニジア、エジプト、リビアの事態は、大きく抑えつけられたシステムが破裂したときに何が起きるかの具体例だ。
人為的に「ボラティリティ」を抑えた複雑なシステムでは、平静を保っている現実がもろくも崩れることがある。水面下でリスクが高まっているときにも、表面は非常に穏やかで、もろさは感じ取れないことが多い。
「ブラックスワン」化したシステムでは、統計的規範からは想像もつかず、専門家が予測できない大規模な変動が起きやすくなる。
通常のシステムに対するミスパーセプションが、アラブ世界における現在の混乱を呼び込んだ。システムを力強いものにするには、すべてのリスクが明白で、しかも開放的でなければならない。制度は揺れ動いても、沈んではいけない。
アメリカ政府は、見せかけの安定のために独裁体制を支援するのを止め、むしろ、体制に対する政治的な雑音が表面化するのを認めるべきだ。
イスラム国が出現して以降の混乱する中東情勢は、フランスでのテロとして跳ね返り、西欧諸国は国内に<暴力>を抱え込むようになった。おそらく、タブレの方法もここで試されるだろう。